エリカの変化

魚人達の王、ポセイドン8世ことロゼの話は続いた


 『魔人フォカロル

 こやつがクラーケンを従えて

 我々の街を襲った黒幕

 そしてこのフォカロルと手を組んで

 人間達の船を襲い

 荷を奪い私服を肥した人物が

 商人のイルワーという男だ

 そしてこの男のの館に

 我らの姫が捕われている

 済まぬが人間の子らよ

 クラーケンを退けたその力で

 フォカロルの手から姫を

 助け出してくれぬか』


そう言って頭を下げたロゼ

種族が違うとはいえ一国の王であるロゼが

子供と認識している2人に頭を下げた

種族、立場、関係なく真剣な思いだった

勇はすっと立ち上がってにっこり笑い

  

 『任せて、私こう見えて勇者なんだよ

 必ずお姫様を助け出して見せます

 なので頭を上げてください』


勇が安易に引き受けた事に

エリカは渋い顔をしている

敵対こそしていないが

ロゼは人間から見れば魔物

エリカの住むこの世界では

魔物と人間は相容れぬ物として

認識されいる

しかし隣で無邪気な笑顔で

ロゼと話をしている勇を見ると

自分の常識は狭い世界の中での事なのかも

しれないと思い始めていた


 『はぁ〜〜わかったわよ〜

 どっちにしてもイルワーは許せないしね

 とっちめて魔人と手を組んだ事を

 後悔させてやらないとだ』


エリカも立ち上がった

お尻と足元の埃を手でパンパンと

払ってヤレヤレという顔をする

そんなエリカを見て勇はクスクスと笑う

その笑顔をチラッと見て

フンっとソッポを向くエリカ

ただの照れ隠しである

2人の様子を見守っていたロゼが口を開く


 『それではよろしく頼む

 まずはここから出なくてはな』


そう言ってロゼは2人を出口へと案内する

ジメジメとした洞窟のその道中


 『そう言えば君らの持っていた剣だが

 おそらくもうフォカロルの手に渡っている

 奴の狙いはその剣だった

 クラーケンの襲撃に合わせて

 私の部下に奪わせて奴に届けさせられた』


エリカは驚きロゼに食ってかかる


 『え?ちょっとそれやばいじゃない!

 さらっと重要な事言わないでよ!!

 最悪な剣が最悪が奴に渡ってしまったって事でしょ

 魔人になんでも切ってしまう剣を持たれてしまうと 

 さすがにやばいわよね・・・』


勇達の持っていた聖剣は

なんでも切ってしまう

ちょっと危ない聖剣だった

そんな聖剣を魔人が持ってしまうと

単体でも危険な存在の魔人が

さらに脅威な存在になってしまった

ロゼの責任ではないとはいえ

エリカの焦った様子を見て

申し訳なく思ったようだった


 『す・・・すまないな・・・』


ロゼが申し訳なさそうに謝る

エリカはそんなロゼに


 『あなたが謝る事じゃないわよ

 というか責任はこちらにあるくらいだし

 ちょっと取り乱してしまって

 こちらこそごめんなさい』


人類にとって魔人とは恐怖の対象である為

そんな魔人に武器を与えてしまった事で

エリカは少し取り乱してしまい

ロゼにきつく当たってしまった事を素直に謝罪した

勇はそんな2人のやりとりを黙って見て

エリカの変化に少し嬉しそうだった


そうこうしているうちに出口が見えてきた

ロゼが出口を指差し


 『あそこから出て丘を登れば

 イルワーの屋敷に行ける

 人間の子らよ

 姫を頼んだぞ!』


勇とエリカは無言で頷いて

強い光が差す方向に歩いていく

洞窟を出て丘を登る


 『エリカ、魔人が怖くないの?』


勇がエリカに尋ねた

エリカは少し悩んで


 『まぁ1人だったら怖いし

 まず戦わないわね』


とエリカは勇をじっと見ている

勇はにっこり笑顔で微笑む

エリカも少し微笑み


 『頼りにしてるわよ、勇』


エリカが勇の肩をぽんっと叩く

勇はちょっと意外そうな顔をして


 『ふふ、うん頑張るね』


勇はエリカが素直に勇を頼る事が

意外でもあり嬉しくもあった

2人は丘を超えてイルワーの館についた

そして扉を開けると

大きな広間の奥に

聖剣を持ったフォカロルが待っていた


続く

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