共闘、魚になった勇

 サハギンが喋った事に驚いた勇

 

 『オマエハ、クラーケンノトコロニ

 イキタイノカ?』


サハギンは勇が何度もクラーケンに向かって行き

その度に足でなぎ払われているのを見て

不便に思ったのか、数回とはいえ別のサハギンを

守った事により敵ではないと思っての事なのか

本来ならば勇達とサハギン達は敵同士だが

敵意はないように見えた

話かけられた勇は一瞬戸惑って声が出なかったが

2度話かけられてハッとして


 『あっ!うん、そう!イカのとこに行きたいの!』


サハギンはこくりと頷いた

そして独自の言語で数体のサハギンを呼び

何やら話をしている


人の泳ぐスピードでは水中の魔物に対して

対応力が低い

勇は何度も泳いでクラーケンに向かうも

すぐ足による攻撃を受けてしまって弾かれていた

本来ならクラーケンの一撃を受けた人間は

まず無事ではすまない


サハギン達は勇の尋常じゃないタフさを見て

人間以上の何かを感じ取っていたようだ

2体のサハギンが勇の腕を取った

さらにもう一体が勇達の前に陣取る


 『イマカラ、クラーケンノトコロニ

 オマエヲ、ハコンデヤル』


先頭のサハギンが勇をチラッと見て

そう言った

勇はニコッと笑い


 『ありがとう!

 あっ、私がイカに張り付いたら

 みんな出来るだけ遠くに逃げて』


勇を取り囲むサハギン達は親指を立てた

おそらく分かったと言う意味だろう


遠くから勇を見てたエリカは

気が気でなかった

クラーケンだけではなくサハギン達とまで

戦闘になるようなら

一旦離脱するしかないと思っていた

だが遠目から見る感じでは

サハギン達は勇への攻撃の意思が見られず

何やら話をしているように見えた


 『勇、サハギンと話をしてる?

 そんな事・・・無理、だと思うんだけど・・・』


魔物と意思の疎通などありえないと

思っていたエリカは勇の姿に驚きを隠せない

そんなエリカの様子を感じ取ったのかは

分からないが勇はエリカの方を見て

両手で丸をした

それでいろいろと察したエリカは

一安心したが

目の前で起きている人と魔物が

協力しようとしている事は

受け入れがたい事実だった

だがエリカの思いとは裏腹に

勇はサハギンの助力の元

高速でクラーケンに向かっていく


 『うわっ!はっっやっ!!!

 すごー魚ってこんな感じなのかな〜〜

 あははは〜〜』


勇はサハギンの泳ぎの速さに

テンションが上がる

クラーケンの足による攻撃が

勇達を襲うもサハギン達は間一髪に交わしていく

他のサハギンの群れが

クラーケンの意識を自分たちに向くように

槍で攻撃をし勇達を援護する


足の攻撃をかいくぐって

クラーケンとの距離がどんどんと近くなってくる

先頭を泳いでいたサハギンが

両手をクロスして防御態勢をとった

その時クラーケンが水竜、水の竜巻を起こし

勇達を襲った

先頭のサハギンが自らを犠牲にして

竜巻をくらい弾き飛ばされた

先頭のサハギンの犠牲により

水竜の軌道が分かった

勇を引っ張っていたサハギン達は

水竜を大きくかわしクラーケンの懐に

入り込んだ

もう少しという所でクラーケンの足が

後方に迫ってきた

勇を運んでいたサハギン2体は

このまま勇をクラーケンに送り届けたとしても

勇がまた足に弾かれてしまうと判断した

高速で泳いでいる速度をそのままに

勇をクラーケン向けて投げた

そして2体のサハギンは反転し

クラーケンの足に向かって2体同時に

体当たりをして足を止めた

勇はクラーケンに向けて一直線に

勢いよく飛んでいく

その最中自らの為に足の攻撃を被弾してくれた

2体のサハギンの勇姿を見た


 『ありがとう

 このイカは必ず私が焼きイカにするからね!』


そして勇はクラーケンに張り付いた


 『みんな離れて〜〜〜〜!!!!』


勇が叫ぶ


続く

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