【完結】ブランチブラッド

青柳ジュウゴ

プロローグ

 最初にその色に染まったのは、一体誰であったのか。

 そんな疑問すら思わせぬほどの速さで人々は染まっていった。赤く――自分のとも他人のものともつかぬその朱に。


(どうして……)


 見知った村の人たちが、まるで紙のごとくその身を裂かれ、命を失ってゆく。


(どうして……何で、何で……!)


 両手には誰かの血がべっとりとついていた。

 それだけではない。足にも、顔にも、まるで全身に浴びたかのように付着しているそれは闇の中で銀の光に照らされて艶かしく輝く。


「ぎんいろ……の……ひか……っ!」


 がくがくと膝が震えている。

 全身が氷のように冷たくなっている。

 ただ、己の両の腕に付着している血液だけがひどく温かく、質量を持っていて――

 その視界に、映るのは。

 ごろりと転がる、かつての友達だったモノ。


「何で……どうして……私は……私が……!」


 座り込んでいる自分を、闇が、銀色が、血の臭いが包み込んでゆく。

 覆い尽くしてゆく。


 ――惨劇の後に残された、自分。


 ぐらりと視界が揺らぐ。

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