【設備管理】と【船体改造】

【設備管理】


 そう俺がスキルを発動させると、俺の目の前に船内MAPのようなものが表示された。


(おお、こんな感じに表示されるのか……えっとなになに?)


『へぇ、結構いろいろありますね……あ、見てくださいよ。大砲ちゃんとあるみたいですよ』


(本当だ)


 ナビの言う通り、MAPの中には砲台があることが書かれていた。


(右舷、左舷合わせて計12門……)


『あ、大砲の情報も確認できるっぽいですよ』


(本当だな……どれどれ?)


 そう言って大砲の情報を一通り確認する。


(ふむふむ、使用可能なのは……)


『ないっぽいですね』


 そう言って俺とナビは二人そろってため息をついた。

 

『うーん、どれもこれも、経年劣化やらフジツボの浸食で砲門が完全に塞がっていたり、とんでもない状態ですね』


(本当、そうだな……一応、一つだけ掃除すればまだ使えそうなのはあるが……)


『どうやって掃除するんです?』


 まあ、そうだよなー。


 今の俺は船だ。

 当たり前だが、船に手足なんて存在しない。

 よって、掃除なんて俺は出来ないことになる。


(……まあ、実質的に使うことはできないわけか)


『そうなりますね』


(うーん、もったいねぇ……)


 そう思わず言ってしまった。

 何故そんなことを言うかというと、設備の中に弾薬庫があり、砲弾……あと火薬があることが分かってるからだ。


 そんなことを思いながら、ふと水平線を見た。


(船に乗ってくれる人、落ちてたりしないだろうか?)


『落ちてるわけないでしょう、何言ってるんですか?』


(だよな~)


 そう言って俺はため息をついた。

 ……船がため息つけるかどうかは不明だが。


(あ、そう言えば……もう一つスキルあったな)


 そう言って俺はステータスを開いた。


『ん? もう一つのスキル……あ、【船体改造】の事ですか』


(そうそう。ワンチャンあれで、施設修理できないかなって)


『うーん、でも【船体"改造”】ですし修理ができるかどうかは……まあ、使うのはタダなわけですし、一回試してもいいんじゃないですか?』


(そうだな)


 そう言って俺は【船体改造】を試してみることにした。


 結果を言うと……修理は出来た。

 ただ、修理するには素材が必要だったそのため、まだ使える素材を使って、修復を施した結果……大砲の数が減ってしまった。。

 

『まあ、考えてみればそうですよね。無から有が生まれるわけないですもん』


(確かに)


 そう言って俺は、12門から4門になった大砲を見てそう言った。


(まあ使えるようになったわけだし、これで攻撃手段は……)


『あの、ところで何ですけど……マスターに質問しても良いですか?』


(え? 何を?)


『大砲は復活しましたけど、人がいないじゃないですか?』


(ああ、そうだな)


『誰が大砲つかうんです?』


(……誰が使うんだろ?)


 二人の間に、シーンとした時間が流れた。


『……やっぱり考えてなかったんですね』


(うっ……)


『全く……図星ですか。まあ【船体改造】がどういうスキルか分かっただけ収穫はありましたし……無駄ではなかったと思いますよ』


 そう言って、ナビは俺のPONのフォローをしてきた。

 ……こいつ、意外と優しいのでは?


『……まあ、とりあえず……ほかにも設備はあるみたいですし、他のも見てみたらどうです?』


(あ、そうだね)


『もしかしたら、解決策があるかもしれませんし』


 そうナビに言われ、俺は設備を見て回る。


(……そう言えば、俺って甲板を含めて、3層構造になってんだな……それで、ここは部屋、船長室だったのか? 豪華な部屋だな。で、2本マスト穂の数は、合計二つか……俺って、小さな船なんだな)


 そう思いながら、施設を回っていく。


(それで、こっちはキッチンと食糧庫……ここはゴミだらけだけど、たぶん船員の寝室だったんだろうな。後大砲を置く場所もあって……これが二層目と)


 そして、俺は三層目に目を向けた。


(三層目は……もしかして積み荷を置く場所だったのか? お酒の瓶やらが転がってるのが見える。食材は……流石に海の生き物に食べられちまったか?)


 そんなことを思いながら、見ていくと、端っこの方に何やら不穏な設備が見えた。


(……これは、檻か?)


 そこにあったのは鉄で作られた檻だった。

 正確には檻の残骸だが、それ以上に俺はその中にあった物に、目を惹きつけられていた。


 壁に括りつけられるようにつけられた鎖。

 その鎖を辿っていくと見えるのは、白骨化した腕。


 檻の中には手かせに拘束されていた一体の人骨があった。


『人の骸骨ですか……おそらくこの船は誰かを護送する用の船だったんでしょう……それでその対象が、その骸骨……他の骸骨は海流によって流されても、その骸骨だけは手枷を付けられて流されなかったんでしょうね』


 ナビはそう言って分析をし……


『……ところで、マスターは人骨を見るのは初めてですよね? どうです? 正直私は恐ろしいです』


(……俺は別にそんなんじゃないけど)


『そうなんですね……あの、叫んでもいいですか?』


(お好きにどうぞ)


『では―――ぎゃああああ⁉ 骸骨だああああああああ!』


 このナビ、感情が豊かすぎないか?

 まあ、誰もいなくて一人ぼっちよりはましか……


 なんて思いつつ、俺は一人でその不穏な設備の名前ををもう一度見て……そして心の中で呟いた。




(それにしても…………骸骨って設備なのか?)


 と。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る