有能な骸骨と、ポンコツスキル

 骸骨……それは、白骨化した脊椎動物の死骸である。


 そんなものが、設備……確かにRPGとかでは、稀にアイテムが置いてあったりすることがあるけど、骸骨は所詮骸骨。

 

 設備とは程遠いと思うのだが……


(……あれ? これ、使用可能って書いてあるな)


 そう思って眺めていた時、骸骨の部分が使用可能と青く光っているのが見えた。


(……使ってみるか。骸骨……使用)


 俺がそう念じた瞬間、自分の意識がどこかに吸い取られるような感覚に襲われた。


「っ……なにがおこ……は?」


 いきなりの事に戸惑い、思わずつぶやいた俺は、思わず口を押えた。


「声が出てる? それにこの身体……骸骨だ」


 俺はそう言って、驚愕に目を見開いた。


『はっ!? 骸骨が動いてるっ……って、マスター? え、マスターまさかその骸骨に入っちゃってます?』


「ああ……入ってるっぽい」


 そう言うとナビは『え、どゆこと?』と言った。

 いや、どゆこと? って言われても俺にもさっぱりわからん。


「っていうか、ナビは俺の異世界での生活をナビゲーションしてくれるんじゃないの? なんで君がこの状況について分かってないのさ?」


『いや、そんなこと言われても……しらんもんはしらないですからね』


 俺はナビの答えに呆れつつも、自分の体を見る。


 白骨化した死体みたいだが……五感はある。 


 壁に触れた感覚、潮の匂いを感じる嗅覚。波の音を聞き取る聴覚……そしてもちろん視覚も……味覚は……何も口にしてないからわからないが。


 とりあえず……これが、骸骨なのか?

 そう思いつつ、俺は船……もとい自分の体を歩く。


 うん、しっかりとバランスを取って歩くことができる。


「なるほど、これって自分の体の拡張パーツみたいなものなのかな?」

 

 そう言って目を瞑る(骸骨に瞼はないが)と、船の時の視線に戻り、目を開けると骸骨の視線になった。


「まだ慣れないけど、これもしかしたら同時に視界を見ることもできそうだな、それに……」


 さっきから声に出して喋れているところを見ると、もしこの世界の人間に会った時に交流できるかもしれない。


 ……この骸骨、結構有能だな。


「……まあ、今のところ人間と交流したりする予定はないけど」


『マスターって人間と交流する気があるんですね』


「ん、まあ……女の子とお話もしたいし」


『ウワー下心丸出しじゃないですかー、キモーイw』


「うっさい」

 

 こほん……まあ、声が出ると言っても言葉が分かるかは分からないし、そもそも俺骸骨だし、今のまま人間と出会っても恐れられるのが落ちな気がする。


「そう言えば【船体改造】で骸骨を改造して肉を付けることできるみたいだし、人間っぽい体にしてから交流するときは交流するか……」


『そうですねー。あ、でもこの【船体改造】だと、たんぱく質を使って生前の体を再現するわけですから……凄い不細工なおっさんになってしまうかもしれませんよ?』


「……不細工なおっさんでも骸骨よりはましでしょ」


『まあ、そりゃそうですね』


 そう思いつつ階段へ向かった俺は、ふと壁に積まれたスクラップの山を見つけた。


「ん? これもしかして大砲の部品なのか?」


『そうっぽいですね。もしかしたら修復したりして余った部品はここに貯蔵されるのかもしれません』


「なるほど……今はまだ使い道ないけど、いつかあるのかな?」


『そうですね、鉄とかは溶かして再利用することができるかもしれませんし……あ、そう言えば【船体改造】で増築できる設備の中に【溶鉱炉】とかありましたね』


「確かに」


『まあ、木造船で火使ったら火事になっちゃうかもしれませんけどね』


「怖いこと言うね……君は」


『あくまでも可能性の話ですよ』


 なんてナビと話をしながら、俺は軋む階段をゆっくりと登っていく。


「それで、ここが二階」 


 ……そう言えば、ここに大砲が置かれてあるんだったよね。

 二階に上がった俺は、先ほど修理した大砲を見に行く。


「これが大砲か……なんか【設備管理】の画面では使えるって書かれてたけど、これ本当に使えるのかな?」


 そう思ってしまうほどに、大砲はボロボロで今にも壊れてしまいそうだ。


『まあ、そこはスキルで使用可能となっていますからね。使えますよ』


「そうかなぁ……」


『そうですよ! まさか、スキルを信じれないとでも?』


 そうナビに尋ねられ、俺はうーんと首をひねった。

 まあ、ライトノベルとかではスキルの力について信頼されてる世界がほとんどだったけど、でもな―。


「スキルを信じろか」


『なんです? いいですか? スキルとは、絶対の力です。スキルが表示した効果は絶対に間違って……何です?』


「……じー」


『な、なんです? もしかして私に何か言いたいことあります?』


 言いたいことはあるよね。


 だってさ、ナビってさ一応ナビゲートスキルって言ってるくせして、未だに俺の現状を説明した以外で何か役に立ったっけ?


 そう思って、首をひねった……が、スキルの仕様を提案した以外に殆ど叫んだり、「しらねえ」っていったりしてるだけだったような気がする。


「……まあ、スキルの中にもポンコツはあるってことなのかな?」


 俺がそう言うと、ナビがすかさず反応した。


『へ? ポンコツって……まさか、それ私のこと言ってます?』


「うん」


 俺がそう頷くと、ナビは『なんですとーー!』と吠えたのだった。

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