転生したら幽霊船だったので、この世のお宝すべて手に入れてやろうと思います。
青薔薇の魔女
第一章
ぷろろーぐ!
プロローグ
とある、小さな島の小さな港。
この港では最近おかしな噂が立っていた。
「……おい、聞いたか? 幽霊船の噂」
「ああ聞いたよ……また商船が襲われたって話だろ?」
「そうそう、まったく……恐ろしいよな」
幽霊船。
それは最近この港……いや、この国中で噂になっている海の怪異である。
「生き残った奴の話によると、幽霊船に襲われちまった船は朽ち果て、乗組員が、ゾンビやスケルトンといった恐ろしいアンデットに変わり果てちまうらしい」
「恐ろしい話だ……なあ、聖皇国の勇者様たちに討伐してもらったりできないもんか?」
「ああ、異世界から呼んだっている勇者様の事か? いやぁ……無理だろう、こんな小さな国の噂話に聖皇国が大事なおかかえの勇者様たちを派遣するわけないだろうしな」
「そうだなぁ……」
そう言った船乗りたちの顔はげっそりと痩せこけていた。
目の下には隈ができ、生気があまり感じられない。
それほどまでに、船乗りたちは幽霊船という物を恐れていたのだ。
「……だが、あくまで噂だろ? そもそも、幽霊船なんているわけないだろうが」
「……だが、最近ここを出港した船が軒並み姿を消しているのは事実だろ?」
「そりゃそうだが……でも、幽霊船なんてな。どうせどっかの海賊に襲われちまったんだろうよ」
「……そうか、そうだよな」
そんな幽霊船の噂話をする船乗りたちのいる酒場に、ふと一人の少女が入ってきた。
赤い髪のかわいらしい少女だ。
歳は16歳ごろ。
胸はないが肌に張りのある、食べごろの女だ。
「……可愛い」
ふと誰かがそうつぶやき、その場にいる全員が心の中で頷いた。
確かに……その通りだと。
「……ビール、あとチーズ」
少女は男たちの視線を気に求めずカウンターに腰掛けると、ただそれだけ言うと、まるで誘うように「ふぅ……」とため息をついた。
そんな愛らしくも可愛い美少女を見て、女に飢えた船乗りたちが冷静でいられるわけがなかった。
船乗りたちは、少女に近づくと、各々ナンパを始めた。
しかし、少女はそんな男たちに目をくれずに頼んだ酒に口を付ける。
「なあ、俺達と一緒に飲まねえか?」
「おい、抜けがけはずりいぞ……俺達と一緒に飲もうぜ?」
しかし少女は一向に男たちは興味を示さず、出されたビールをチビチビ飲み始めた。
「おいおい、無視はねえだろ。なあ……せめて名前くらいは教えてくれよ?」
そう、船乗りが訪ねると、少女は突き放すようにこう答えた。
「スカル……スカル・ハート」
「へえ、スカルちゃんっていうんだな~」
少女がそう答えると男たちは沸く。
そんな男たちの方を、スカルは一瞥すると少しだけ思案した後………船乗りたちにこう尋ねた。
「……ねえ、貴方たちは幽霊船について知ってる?」
そうスカルが尋ねると、船乗りたちの間に少しの緊張が走った。
「……もしかして、スカルちゃん幽霊船の調査に来た冒険者か?」
そう船乗りが訪ねると、スカルは首を横に振った。
「ただ、興味があっただけ……この港で広まってる噂について」
「そうかい……」
そう言って落胆する船乗りたち。
「……勝手に期待されて、勝手に落胆されても困るんだけど?」
「あ……ああ、すまないな」
「……まあ、別いいけどさ。それで……誰か、幽霊船についての噂聞かせてくれる人いない?」
そう、スカルが訪ねると、船乗りたちは我先にと声を上げた。
「おう! 噂聞きたいなら俺達と一緒に飲もうぜ!」
「はあ⁉ お前らと一緒に飲んだって、そんな他で聞くような噂しか聞けねえだろ⁉ なあ、スカルちゃん。俺の方に来てくれたら、もっと詳しい話を聞かせてやるぜ!」
そう言って、沸き立つ船乗りたちの噂話を聞いて、夜が更けていく。
深夜二時。
夜も更け、気が付けば外は不穏な濃霧で覆われている。
しかし、酒場の船乗りたちは酒が回り、そのことには全く気が付いていなかった。
「……ってなわけで、幽霊船いないってこった!」
「……そう」
一通り噂話が回り、最終的に幽霊船はいないという話に落ち着いた酒場は、最初とは打って変わって賑わいを見せていた。
「そうそう、どうせただの酔っ払いが見た幻覚だろうなって……な!」
「そうだ、そうだ!」
「そうにちげえねえ!」
そう言って、盛り上がる船乗りたち。
そんな船乗りたちに水を差すように、スカルはポツリと口を開いた。
「でもその話ってさ……案外嘘じゃないと私は思うな……」
「は? なんで……?」
スカルがそう言った途端、酒場の中を濃霧が包み込み、明かりを書き消した。
「な、何だ⁉」
「何が起こって……スカルちゃん……あれ? スカルちゃんは何処に……」
戸惑う船乗りたちを背に、スカルは酒場を後にする。
「なんで、幽霊船の噂が嘘じゃないかって? それはな……」
スカルがそう言った途端、港にそれは現れた。
ボロボロの旗に、ボロボロの帆。
汚れ、フジツボだらけの船体を操るのは人骨たち。
「だってここに……そいつがいるんだからよ」
そんな恐ろしい船を見て笑ったスカルは……骸骨の顔をしていたのだった。
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