Patchy Party

維櫻京奈

ナニコレ……? と思ったら負けです。

 今日はなんかよくわからないパーティーにお呼ばれされている。一週間前、みんなで予定を決めていたときにはあんなに楽しみだったのに、めんどくさいなぁ。と朝起きて一番に思ってしまう。とりあえず顔を洗って、歯を磨いて、髪を適当に整えて、鞄にティッシュとハンカチと財布を放り込んで家の鍵を握りしめる。お気に入りの靴の紐を結んで外へと出る。あたたかい一日になりそうだと思う。

 いざパーティーについたら、これがなんともつまらない。

「パジャマで来たの?」

 みんなが私を好奇な目で見る。これってそんなに変なこと? 話が耳に入ってこない。

「あー。そうみたい」

 料理が届くと私の恰好になど毛ほども興味がなくなったのか、みんなはピザやケーキ、ローストビーフを食べながら談笑に華を咲かせている。くどそうだなぁ。なんて思っていたら、それだけで胃液が口元までのぼってきた。

「ごめん。帰るね」

 そう言って、私は蛙の文様が刻まれたコインを何枚か財布から取り出して、机の上にジャラっと転がすと、コインはゲコゲロゲコと合唱を始める。それをききながら店を出た。 私を呼び止める人は、誰もいなかった。

 店を出て向かいを見ると小さな喫茶店がやっていた。お茶の甘みとも渋みともとれないふしぎなかおりが鼻をくすぐる。

 突然お腹が空いてきた。胃もたれしていたはずなのに。

 ふらっと喫茶店へと入ると、柔和な笑みを浮かべたおばあさんが迎えてくれた。

「いらっしゃい」

 ちいさな座敷に通されたので靴を脱ぐ。ふかふかのざぶとんの上であぐらをかくとざぶとんが今日もおつかれさんと声をかけてくれた。

「ありがとう」

 私はメニューを見て、しばいぬぜんざいが目に留まったのでそれをひとつ注文することにした。

「しばいぬぜんざいください」

「はいよ」

 おばあちゃんはそういって、割烹着のポケットからしるこ缶詰を取り出した。スーパーでよくみかけるやつだ。

「はいな」

 おわんに缶詰の中身を入れて、硬そうな正方形のおもちを放り込む。おばあちゃんが二回胸の前で手を叩くと、ボンッという爆発音とともに、ぜんざいがふつふつと煮立った。

「おまちどうさま」

 まったく待っていないけど、ひとまず立派なぜんざいが目の前にできあがった。

 ぜんざいをすすりながら、どのあたりがしばいぬなんだろうと考えるがどこをどう考えてもふつうのぜんざいだ。それでも、おいしいなぁと思えた。おもちをみょいーんとのばしては食べる。しるこをすすって、またおもちをみょいーんと伸ばして頬張る。繰り返しているといつの間にかぜんざいはなくなっていた。

 こういうとき少しだけさみしいと感じる。

「ごちそうさま」

 財布を出して、満面の笑みでピースしている蜂津が印刷された紙幣をコイントレーの上に置くと「わたし、あ~なたにあ~えて」と紙幣の中にいる蜂津は唄い出して、その声につられたのか、おばあちゃんがやってきて紙幣に向かって顔をしかめた。

「そこはさらば掲げろピースサインじゃないのかい?」

 おばあちゃんの言い分はよくわからない。紙幣に向かって話しても意味ないよ。

「ごちそうさまでした。おいしかったです」

 紙幣に向かって文句をこぼしていたおばあちゃんは私の方をしっかりと見た。

「ありがとよ。それはそうとあんた、良いパジャマね」

 おばあちゃんはにっこりわらった。私はそれがうれしくて、あったかいきもちのまま家に帰ってお風呂に入ってふかふかのお布団に潜り込んだ。

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