第16-2話 アイスブレイク秋田オンラインの謎を追え!【推理編】
昼下がりの国道285号線。
私の従姉ドームの車で、眠たくなるような温かい春の日差しの中を進む。
目的地は、
秋田県の真ん中に位置する林業の村ってイメージだ。あれほどあった雪が、今年の高温気味な天気であっという間に溶け切った。
私は若干緊張を顔に浮かべて、
その産業である林業は、
その
山野草のコアニチドリや、食用ほおずきでも、近年有名になってきた。
道の駅かみこあにの駐車場は広く、休憩所や物産館、食事スペースがある。私たちは下車した。
お日柄は良い。
春の薄い青い空、たなびく雲がある。
空は
かなり両肩に力が入っている。
私の両手両足がロボット歩行になっているのを見て、ドームは笑った。
「大丈夫だって。シドニーは、いつも通りで良いってさ。今まで頑張ってきたなら、それを見せればよくないか?」
「わわわ、私は大丈夫だ。元気、元気!」
私の緊張は些細なことだ。そう。今日、私よりも元気がないエルフさんが1人。
レナがいつになく無表情で、小型のビデオカメラで彼女の姉シドニーと通信を始めている。
画面の向こうの旅行参加者さん。
色素が薄い金髪は長くシルクのように輝いている、白い肌も透明感ある宝石のよう、その瞳は青く吸い込まれそうな色をしている。
長い両耳、シドニーがエルフ種であることを示していた。
利発そうな低く丁寧な活舌の声だ。おそらく人生経験が高いエルフに一筋縄ではいかない。
「うふふ、皆さん、ごきげんよう」
「こんにちは、シドニーさん」
「こんにちは。私も
「よ、よくご存知ですね」
先手の駒の読みが早い。
シドニーはチェスも将棋も、戦略上手なんじゃないかと思った。
それくらいに、こちらの調査を読んでいる。私たちは何も出来ない。
すると、エルフ姉はクスクスと笑った。
読むだけでなく、場を動かす。
旅のオンライン参加者はアクティブだ。
「でも、現地の空気は分からないわ。そちらでは、イベント最中なのかしら?」
「まとびイベントとして、ボール掬いや的当て、それにキッチンカーや出店がたくさんですね」
「おー、ナイス。では、ソナタさん、ご案内いただけますか? レッツゴーレッツゴー!」
「私の食べっぷり見せでやる!」
何だか、心に火をつける煽りを受けて、私の
レナにも私はされたこと、感情ごと誘導された出会いがあった。
エルフの手口が同じなら、向こうの土俵で張り倒すまでだ!
そわそわしているレナと、呆れて小さく笑うドームを後目に、私はキッチンカーの方へ歩いて行った。
緊張よりも、まず腹が減ってきた。
子供たちが遊ぶボール掬いや的当て、輪投げが見える。
そのお隣の店前に私は立って買い食い開始だ。もう私は、焼き団子を頬張っていた。
表面がパリッと焼かれ、でも中のみょーんと伸びる柔らかさ。
そして、しょっぱめのタレがたまらなく美味い。
食べきった後の唇が甘っじょっぱい。これは食欲が湧く。もっと食おう。
「すごく美味しそうに食べるのねぇ。私も団子が食べたくなってきたわ」
「んめぇ~!」
レナは麺を啜る。白神ねぎラーメンがお気に召したようだ。
ドームは、みそたんぽと焼き鳥を無言で食べている。
この2人が一緒なのは、去年の秋以来だろうか。
「んあ~。ビールほしいな」
「ドーム、帰りも運転だぞ」
「今は飲まないって。それと夜道は気をつけるさ」
「いつも以上に安全運転しろ。お前はスピード出し過ぎだ」
「レナが遅えんだよー。法定速度は守っていますー」
あんまり仲が良い2人ではないけれど、それなりに会話できるまで2人の仲は戻って来ていた。
一方で、私は2本目の焼き団子を貪るように食べる。
同じ釜の飯を食うと、仲良くなり、みんなに幸せを呼ぶ。本当に良いことだな。
すると、シドニーは企んでいる笑みを見せた。
エルフの姉がまた口火を切る。面倒くさがりのドームが一応、確認していた。
「ごはんを食べたら、食後の運動ですよ~。レッツウォーキング!」
「ちょっと待て。
「うーん、
「えー。山の中、歩くの?」
「うふふ。歩いて~!」
ドームが困惑して、たじたじになっているのを私は初めて見た。
シドニーの強引さは、それほど気にならない。
ノリとテンション。ただし、場の空気を読んでいる気がする。だから、ドームも強く否定しなかった。
水道が流れる側の細道を抜けて、赤い鳥居が見えてくる。そこからは山の中、石段を少しだけ歩く。
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