053:ソラの作戦
ソラとモリゾウの作戦会議で決まった作戦はこうだ。
全員で協力してスタート地点に戻る。そして全員がスタート地点に到着したらサイコロを振りこのジャングル『第5層17マス』から脱出する作戦だ。
もちろん言葉にすれば簡単な作戦だが、そこには障害物である火ノ神いる。しかしソラは火ノ神が追ってくることも計算に入れている。
スタート地点に着いてからはソラが火ノ神をスタート地点の上空で相手する。相手をすると言っても戦うわけではない。火ノ神と鬼ごっこをするのだ。
これは火ノ神がソラを標的に定めていなければ意味のないことなのでソラの挑発のセンスに委ねなければならなくなる。全ては運。神頼みだ。
頭の中にあるルール上、スタート地点にチーム全員がいなければサイコロを振って次のマスに進むことができない仕組みになっている。スタート地点にチームの誰かが一人でも欠けている場合はダイスが出現しない。そこには
スタート地点の上空でも対象内になっているので火ノ神と鬼ごっこをする予定のソラもダイチかウミ、もしくは本人がサイコロを振りさえすれば次のマスに進むことができる。
なのでボドゲ部と三兄妹が無事にこのジャングルから脱出するためには、全員でがスタート地点『ウサギの歯』にいなければならないのだ。
チームが違うボドゲ部と三兄妹だがどちらかが先に次のマスに進んでしまうと残ってしまったチームが火ノ神の餌食になってしまう可能性が高い。なのでタイミングも重要となる。
ソラの作戦を聞いたモリゾウが付け足したり訂正を入れたりしたのだが、これがソラが考えた作戦だ。
「というのがソラさんの作戦です。なので火の鳥ごと全員でスタート地点に戻りましょう。ダイチさんたちは残り時間はあと8分、いいえ7分くらいです。ノリちゃんとイチゴちゃんがスタート地点に到着してから僕たちもスタート地点に向かいましょう!」
ソラの作戦を簡単に伝えるモリゾウ。
「それじゃ、ディオスダードに伝えるぞ……う、ぅ、っと……ぇ、あれ?」
キンタロウは1歩踏み出そうとした瞬間、視界がぐらついた。地震でも起きたのかと思うくらいしっかりと足が地面につかなくなったのだ。
それは地震ではなくキンタロウの体力の限界を表していた。
「キンちゃん。大丈夫ですか? フラフラじゃないですか」
そのモリゾウの言葉にキンタロウは自分がフラついて木に寄りかかっていたことに気がついた。視界は一瞬だけ暗闇の中に入ったがモリゾウの声で燃えるジャングルに戻される。
「ぁ、危なかった……一瞬気絶しかけた」
「なんとか根性で耐えてください。この後ソラさんがキンちゃんをスタート地点まで連れて行ってくれます。それまでは絶対に倒れないでくださいよ」
「ぁぁ、大丈夫だ、俺は倒れな……ってこれもフラグなんじゃ!?」
死亡フラグではなく倒れるフラグが立ってしまったキンタロウだったが根性で寄りかかっている木から離れ自分の足だけで立った。
一瞬きを失いかけたがなんとか持ち堪えるほどの体力はまだ残っている。限界の先にキンタロウは今立たされているのだ。
「でもディオスダードに」
「僕に任せてください。これも作戦ですの一つです」
「わかった。考えてる時間もないもんな」
キンタロウはモリゾウに右拳を向けた。左手は先ほどまで寄りかかっていた木に触れて支えにしている。モリゾウはキンタロウが向けた拳に向かって自分の拳を軽く当てた。
そしてそのまま火ノ神と戦うディオスダードの元へ駆けて行った。
「全員でスタート地点に行きましょう!」
「それ死亡フラグだぞー!」
「それだけは言わないでくださいよー」
軽口を叩くキンタロウにツッコミを入れるモリゾウ。その言葉を最後にお互い背を向けてそれぞれの道を進んだ。モリゾウはディオスダードの元へ。キンタロウはスタート地点へ。そしてソラはノリとイチゴをスタート地点へと連れていくためにそれぞれが動き出した。
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