048:苦戦

 キンタロウたちボドゲ部は、ジャングルを燃やしながら宙を舞う火ノ神との死闘を繰り広げている。


 ボドゲ部の中で唯一の戦闘員の召喚兎のディオスダードですら火ノ神に近付けずに苦戦している。1撃でもディオスダードの強力なパンチを当てることができれば形勢逆転できる可能性はある。

 だが火ノ神の全身から溢れ出る炎のせいで、たったの1撃すら攻撃を当てることができない。


「その炎、厄介ですゾ」


 接近戦を得意とするディオスダードにとって火ノ神は相性最悪だ。落ちている石や木の枝、丸太などを投げているが致命的なダメージへとは繋がらない。

 さらにディオスダードはボドゲ部の4人を守りながら戦っている。本領が全く発揮できていないのだ。


 キンタロウも隙を見ては石や木の枝を投げたりしている。そして頭脳派のモリゾウは脱出ゲームの脱出先の答えを必死に考えながら走っている。

 ノリとイチゴは2人一緒に肩を貸しながら走っている。ただし肩を貸しているのはイチゴだ。緑ヘビとの戦いで重傷を負ったノリをか弱いイチゴが肩を貸して火ノ神から逃げている。

 ボドゲ部たちはウサギの顔の地形で右耳から右目そして鼻、左目の場所までたどり着いていた。


「クワァアアアアアア!!!」

 ディオスダードに向けて咆哮をあげる火ノ神。ディオスダードも苦戦しているがディオスダードの素早さに翻弄されている火ノ神も苦戦しているのだ。


「おいおいおいおいおいッ!」

 突然騒ぎ出したキンタロウ。今までも騒いでいたが今までとは違う騒ぎ方だ。


「そうかそうかそうか。はぁはぁ、わかったぞ……謎の答えがッ!」

 キンタロウは全員に聞こえるように大声で叫んだ。頭脳派のモリゾウすら頭を悩ましている謎をキンタロウが解いたと言っているのだ。


「はぁはぁ……キンちゃん、こ、答えを教えてくださーい!」

「『白い場所』だろ、もしかしたら、ゼェゼェ、スタート地点にいたあの白いウサ爺さんが答えなんじゃないか? ほら、よくアニメとかその人物が答えだった的な展開あるだろ。はぁはぁ……それと同じような感覚でそうなんじゃねーか! ウグェ……ふぅはぁ……」

 2人は呼吸を荒くしながら大声を出し会話をする。走りながらの会話で余計に肺に負担がかかっている。

 そして惜しい回答をするキンタロウ。答えは白いウサギのゴロウではないが、そのウサギの居場所こそがこの謎の答え。脱出する場所なのだ。


「そ、その可能性は十分にあり、ますね……。案内兎が、はぁふぅ……こ、答えじゃなくてもヒントとか得られるかもしれません。ただ、まだスタート地点にダイチさんたちがいるかもしれません。僕たちが戻って火の鳥まで付いて来たら危険ですよ、ゼェフェ……はぁはぁ」

 的確に現状を整理するモリゾウ。今ここでスタート地点に戻ってしまうと三兄妹たちも火ノ神の炎の餌食になってしまう可能性がある。なのでギリギリまで火ノ神を引きつけなければならないのだ。


「森も……ウグェ……ぅ、森もかなり燃えてっぞ。このまま……だと、はぁ、俺たちの逃げ場もなくなっちまう。倒す方法も考えっぞ!」

 この状況がいつまでも続かないのは誰もがわかる。だからこそ自分たちが丸焦げになる前にキンタロウは火ノ神の倒し方について思考を始める。


 すると集中しているキンタロウの耳に火ノ神とは別の翼の羽ばたきが聞こえた。バサバサと翼の羽ばたきがキンタロウの元へと近付いてくる。


「おいおい、嘘だろ……2体目もいるとか聞いてねぇーぞ、くそがぁ!」

 キンタロウは翼の羽ばたく音を聞いて絶望した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る