044:炎の脱出ゲーム

 ボドゲ部の4人は近過ぎず離れ過ぎずの距離で走り『火ノ神』から逃げる。炎の脱出ゲームが開始したのだ。

 火ノ神はキンタロウのみを集中狙いしておりその間モリゾウは謎の解読に全力を注いでいた。


「ノリちゃんは『白く輝くところ』をどこだと思いますか?」

 モリゾウの質問にノリは走りながらマッチョポーズをとって答えた。もちろんそのポーズはモリゾウの質問への答えにはなっていない。つまりノリはわからないと答えているのだ。


「それじゃイチゴちゃんはー?」

 ノリに投げた質問をイチゴにパスするモリゾウ。


「白ぉ……白ぉ……。う~ん『雲』とかはどうかなぁ? 鳥さんだしぃ」

 もっともな解答をするイチゴ。なるほどとモリゾウは再び1人の世界に入り考え始めた。


 そんな時、モリゾウの集中を妨げる火ノ神の咆哮がジャングル全体に響き渡った。


「クォォオオオオオ!!」


「ありゃ、はぁはぁ……石じゃなきゃダメだよなっ……はぁはぁ……」

 火ノ神が咆哮したのはキンタロウが投げた木の枝のせいだ。木の枝は火ノ神の体に触れた瞬間すぐに焼けたので火ノ神にとってはハエの攻撃同等無傷だった。それでも火ノ神はキンタロウに対して怒っている。

 自分の攻撃が当たらない上に相手の攻撃は簡単に当たるのだから怒って当然だろう。そもそも的の大きさが違いすぎる。


「ダメだぁ、走るの限界でっ、はぁはぁ……ってこっちばっかり来すぎなんだよ、おい」

 キンタロウの呼吸は荒くなっていく。運動不足のキンタロウの体力はそろそろは限界を迎えそうだ。

 ここまで火ノ神はキンタロウに執着している。狙った獲物は逃さない主義なのだろうか。


「もーう無理ぃい、ゼェゼェ……ウヴェェ、『ディ、ディオスダードォォ!!!』アッツィイイ」


 キンタロウは火ノ神の熱風をモロに受けながら召喚兎のディオスダードを召喚した。

 追撃の熱風と召喚の際に出現する白い煙が衝突し1本の煙となって天に登っていった。


 そして煙でキンタロウの姿を見失った火ノ神は、辺りを見渡し金髪の少年を探した。

 火ノ神はすぐに金髪の少年の姿を発見し飛行スピードを上げた。なぜならキンタロウは一足先に進んでいたからだ。

 ディオスダードがキンタロウをお姫様抱っこして飛び跳ねて進んでいる。おかげで熱風からの攻撃を回避することができたのだ。


「助かったよぉおウサギちゃぁああああん。ありがとぉおおお。命の恩人。いや、命の恩兎!」

 お姫様抱っこされながらディオスダードに感謝を告げるキンタロウ。だが感謝の言葉とは裏腹に、涙と鼻水を命の恩兎の胸の毛で思いっきり拭き取っている。


「キンタロウ殿、無駄な体力は使わない事ですぞ!」

 喋りが止まらないキンタロウに対してディオスダードが言った。お姫様抱っこのままキンタロウとディオスダードは川を発見した。


「川だ!」

 青ワニと戦った川だが、青ワニと戦っていた場所よりも下流の方に到着した。


「ではキンタロウ殿」

「ああ、反撃開始だな」

 ディオスダードの腕からゆっくりと降りたキンタロウは、反撃を始めようと上空に飛ぶ火ノ神を睨んだ。


「よくも俺ばかりを狙いやがったな焼き鳥野郎ォオ! 水辺なら俺たちの方が有利だろ!」

「行きますゾ」

 キンタロウとディオスダードはそれぞれ走り出した。キンタロウは流れが遅い川の中へ。ディオスダードは火ノ神の背後を取るように周った。


「川の水を利用しましょう!」

 遅れてモリゾウも川に到着し叫んだ。そしてキンタロウがいる川の方へと走っていく。


「運が良ければ倒せるかもしれません!」

 そんなことをキンタロウに向けて言いながら川へと入った。


「おっしゃー! やってやる! 水の石の餌食にしてやる」

 キンタロウは川の中に落ちている石を両手で鷲掴みにし落とさないように腹を使いながら持った。そして右手で1個の石を掴み投げる準備を整える。


 ボドゲ部たちの反撃が始まろうとしている。

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