第14話
まずは先輩の周りがどのように伝えているのかを聞いていこうかなと。
僕の集めた情報が絶対に正しいとは言えないけど、受け手によってどんどん曲がっていく事実に比べればまだ正確性はあるだろう。
いや、正確性も何も、先輩だって当事者なのだからネットに出回っているものがデマだと分かっているか。
なら先輩に何かしてもらう必要はあまりなかったかな。
今起こっていることの説明だけで事足りたわけだ。
一応、トークの内容を見せてもらうことにしよう。
「んー……?」
「何か変だったかい?」
「いえ、結構あっさり先輩の言うことに納得していて凄いなと」
初めは皆、ネットの情報を鵜呑みにしてあんな男と別れるよう先輩に伝えているが。
あの時の状況を説明し、キチンと付き合っていると先輩が返せば手のひらクルックルで大人しくなっている。
あまりというか、全然先輩の交友関係なんて知らないが、ある意味宗教のような感じになっているのではと思ってしまう。
教祖(先輩)の言うことは絶対である、みたいな。
先輩のファンクラブがあるって話を聞いた気がするから、あながち間違いでもない気がする。
「特に何もないので今起こっている事の説明していこうと思ってますけど、どの程度把握しています?」
「私がナンパしてきた男に──つまりは君だが、ほいほいついて行った事。君が女の子に罵詈雑言を浴びせた事。あの時に撮られただろう写真が出回っている、ぐらいか?」
「大体そんな認識で間違いないです。いま言った情報がネットで拡散されてまして、ちょっと面倒な事になってます」
時間はかかるだろうけど、このままじゃバイト先や家まで特定されるだろう。
先輩はまだ大丈夫だろうが、僕は少なくとも夏休みの間は引きこもり生活をしなければ。
「なら、君の家がデート場所だね」
一人でのんびり出来ると思っていたのだが、先輩は通い詰める気満々に見える。
まあ、僕が外に出るわけじゃないから楽でいいし、一人になりたいときは連絡入れれば済む事かと。
「先輩に害はないと思いますけど、一応気をつけておいてください」
「私のことを心配してくれるのかい?」
「そりゃ、一応は恋人なので」
一応とかつけないでくれ、と拗ねたように言う先輩だが、それでも心配している言葉をかけられて嬉しいのか、口元が緩んでいる。
「今日は帰ることにするよ。来たい日の前日までには連絡入れるから、良いか悪いかだけ返してくれ」
「分かりました」
玄関まで先輩を見送りにいけば別れ際にキスをされ、今日はスるつもりで家に行きたいと言ったことを伝えられた。
だからどうしたと思ったが、口に出してなくても表情に出ていたのか、先輩は苦笑いを浮かる。
「次に来たときは覚悟しておいてくれ」
そう言って先輩は帰っていったが、どうしたかったのだろうか。
乙女心は複雑以前の問題な気もするが、考えるだけ無駄だろう。
家の鍵を閉め、先ほど撮っていったスクショを三枚ずつ印刷していく。
一つは提出用、二つは予備。
前回似たような時は二つあれば足りたが、予備はあって困ることないだろう。
スマホを見ればメールを送った相手から着信が来ていたので折り返し電話をかけながら、今度はパソコンのメールにスクショしたものを添付して送りつける。
一週間ぐらいで片がついてくれれば良いなと思いながら、電話の相手といくら絞れるか話し合うのであった。
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