第6話 「 ヨイノクチ 」
友人に連れられ、初めての店で飲んだ。席につき、程なくしてカラオケのマイクがまわってきた。めずらしく演歌を唄った。意外と他の客にもウケた。
席を立ってトイレに行った。店の女の人が携帯で遠い誰かと話をしていた。目が合ったので僕は思わずニコッと笑った。彼女は少し微笑んでフロアに戻っていった。
僕がトイレから出ると、その彼女が客に体を寄せて歌を唄っている。僕はモニターの画面をながめながら、急にせつない気持ちになった。
酔いがまわってきたらしい。
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