第59話

「スラッシュ!!」

「ハ!!」

俺とトヨワさんが両サイドからでかい鎧の魔物を斬りつける。


堅いな。

しかし、周囲のゲートは破壊した。

魔物はどんどん減っていくのみだ。


「ホ!!」

「いけ!!」


ゴオォォォ!!


そして十分に時間を稼いだ。

魔法兵の炎魔法が発動できる。


ドゴオォォン!!


鎧の魔物が倒れ込み、プスプスと黒い煙をあげる。


「いくぞ!! 袋叩きだ!!」

「はい!!」

「「「ホホー!!」」」


バキッ!!

ドコ!!

ドカ!!


雑魚と戦っている以外の魂兵が集まり、鎧の魔物をタコ殴りにする。

勝ったな。


□□□


程なくして鎧の魔物、周辺の魔物は霧散する。


「完璧な采配、お見事でした」

「ありがとうございます」


「勇者様は、指揮官でいらしたのですか?」

「いえ、そういうわけでは……」

しかし、なぜか頭が冴えたな。

それと同時にたいくつでもあった。


「この関所と周辺の建物は、状態がそこまで悪くないようです。

 ここを一旦拠点にしましょう」

「承知しました」


魂兵が合計8体もやられた。

さらに、装備、特に武器の破損が激しい。

「一度引き返して、遺跡に戻った方がいいですね」


□□□


二日後。


俺とトヨワさんは、スクシン村まで帰還する。

魂兵5体とホッセイ出身の人は関所に留まってもらった。

彼らがいると移動が遅くなる。

そして、どうせ関所を拠点化した場合、再び彼らは関所にくる必要がある。

だから護衛として魂兵5体だけを残し、俺とトヨワさん、残りの魂兵で帰還したのだ。


「人間が増えていますね」

「ですね。家族を連れてきたのでしょうが、それ以上に増えていますね」

「勇者様!!」

「ニッコマ!! 無事だったか!!」

フェリスさんとエイハンだ。


「はい。そちらも無事だったようですね」

「あぁ、なんとかみんな連れてくることができたよ」


「すごい人数ですね……これ、全員寝る場所あるんですか?」

めちゃくちゃ増えたな100人近くいるんじゃないだろうか。

「まぁな……今のところなんとかなっている。

 ただ、食料が急激に減っている」


「でしょうね……」

この人数だもんな。

「まだギリギリ残っているが、空腹はある。

 それに、元奴隷と同じ量の食料に不満がある人間もいる」

うわ……

それは面倒くさいな。


「もしかして……あの棒を回すのは元奴隷の方中心になっていますか?」


俺は村の中心にある奴隷が回す謎の棒を指差す。

ガコガコガコ……

あれを人間が回すと、魂を獲得できる。

魂が獲得できるから食料を渡してやるわけだ。

なら、あれを回さない人間は必要ない。


「まぁ……ばらつきはあったのだが……」

「それは私が説明をしました」

「フェリスさんが?」


「はい。あの棒を回さなければ、この村にいる資格はありません。

 食料の分配も、あの棒を回した者優先という話もしてあります」

今支柱の周りに、棒が8本ある。

つまり8人しか同時に回すことはできない。

「もしかして、周りにいる人は順番待ちの人ですか?」


「はい。家族がいる人はできるだけ回したい意志があるようです」

なるほど。

元奴隷と同じ扱いで、不満はあるが従っているといったところか。


「大体状況はわかりました。

 フェリスさん、ありがとうございます。

 フェリスさんに村に残ってもらったのは正解のようですね」

「い、いえ!! 私は戦うことができませんので」


「よし、それじゃ追加で食料を持ってきますね。

 フェリスさん、トヨワさん、一度遺跡に戻りましょう」


□□□


遺跡に戻ってきた。


魂 102558 / 毎時魂 820 / ゲート破壊数 52


!!

すげぇ増えてる。


「魂がかなり増えていますね。

 まずはやるべきことをやってしまいましょう」

「え!? は、はい……」

フェリスさんがいつものようにモジモジし始める。


「あ、いや……まずは魂兵の修復と、食料を村に運びますね」

「は、はひ!?」

フェリスさんの返事がおかしい。

絶対魂兵作成だと思ってたよな。

そんなフェリスさんをトヨワさんは、微笑んで見ている。


魂兵の修復は真っ先にやっておく必要がある。

エイハンに同行させた魂兵は破損していない。


それから、食料だな。

施設のレベルアップをすれば、新しい食料が増えるかもしれないが、もう少し考えたい。

とりあえず、今ある項目の食料を適当に運び出そう。


拠点化したスクシン村は俺だけなら魂の消費なしに行き来できる。

食料の他に鍋などの調理器具もいくつか持ってってやるか。


□□□


俺は水や食料、鍋や包丁などの物資を次々に運び出す。

「おぉ!! 食料だ!!」

「エイハンさん、分配は任せます。

 不満が出ないようにお願いします」

最初に俺に文句を言っていた兵士たちもいたが、いちいち構っていられないな。

邪魔なら殺せばいいし、村のことはエイハンに任せよう。


「ちょっと待ってくれ……いや、待ってください」

「はい?」


「ニッコマ殿……あなたは我々の救世主です。

 これからも我々を導いていただきたい……」

「な、なんですか……急に……」


「急ではありません。

 俺は前々から考えていました」

なんか面倒くさそうだな……

「いや、導くと言っても……」


まぁ面倒くさいが移動はしてもらいたいんだよな。

「そうですね。とりあえず、新しい拠点に移動して欲しいのと、食料はちゃんと置いていきますよ」

「ありがとうございます」

エイハンが跪く。


すると、他の人間も跪く。

「「「ありがとうございます」」」

マジかよ……

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