第58話

茂みから関所を確認する。

なるほど。

確かに配置されている、というより置かれているというところだな。


大型のゲートが一つ、それから中型が二つ、小さいのが関所の屋上に3つ見える。

関所の向こうにもゲートがあるかもしれないな。


「勇者様、どうされます?」

「……もう少し待ってください」


頭がすっきりしてくる。

関所は左右にバランスよく魔物がいる。

中心の大型ゲートを破壊すれば、一気に楽にはなるだろう。

しかし、それは無謀だな。

両サイドから戦力を削ぐべきだ。


「とりあえず、中央のゲートに炎魔法をぶち込みます。

 そのあとトヨワさんは、関所左の建物を進んでください。

 剣兵、槍兵、一般兵を10体連れていってください。

 俺は魔法兵と一般兵で右の建物を制圧します」

「はい……」


「行きます!!」

ダッダッダ!!

「炎魔法いけ!!」

「ホホー!!」


ゴオォォォ!!

ドガアァァアン!!

ドガアァァアン!!


魔法兵2体から炎魔法が魔物の群れに撃ち込まれる。


そして、中央はスルーだ。

「そっちは任せました!!」

「はい!!」


俺は右の建物に進んでいく。

「スラッシュ!!」

ズシャッ!!


「進め!!」

「ホホー!!」

ズシャッ!!

階段を一気に駆け上がり、魔物を斬り伏せていく。


中央は炎魔法を撃ち込んだあとで、そこから追加の魔物はこちらにきていない。

その間に左右の建物の制圧、屋上のゲートを破壊する。


3、2、1……

「スラッシュッ!!」

ズバッ!!

スラッシュのクールタイムも完全に理解した。


無駄のないように、確実にスラッシュを使っていく。


3、2、1……

「スラッシュッ!!」

ズバッ!!


「どんどん進め!!」

「ホホー!!」


3、2、1……

「スラッシュッ!!」

ズバッ!!


ほどなくして、屋上に到着する。

トヨワさんのほうも到着したようだ。


そして、そろそろ……

3、2、1……

「魔法兵!!」

「ホホー!!」

炎魔法のクールタイムも学習済みだ。


ゴオォォォ!!

ドガアァァアン!!

ドガアァァアン!!


ゲート周辺の魔物を殲滅する。


「よし!! 俺はゲート破壊に専念する!! 周りは任せた!!」

「ホホー!!」

ズシャシャシャシャ!!


俺はゲートに連撃し続ける。

トヨワさんもこちらに合流し、屋上周辺の魔物は殲滅される。


3、2、1……

「スラッシュッ!!」


屋上のゲートを全て破壊する。


中央のゲートから魔物が上に上がってくる。

しかし問題ない。


「おい、上から狙え!!」

「ホホー!!」

俺は魔法兵に炎魔法を屋上から撃ち込むように指示する。


ゴオォォォ!!

ドガアァァアン!!

ドガアァァアン!!


再び中央のゲート周辺が爆発する。


そして、左右の建物から魔物が屋上へと迫ってくる。

しかし、それは無視だ。


「よし、飛び降ります!!」

俺は屋上から、中央のゲートへ向かって飛び降りる。

「ゆ、勇者様!?」

「ホホホー!!」

俺が飛び降りたことにトヨワさんが驚いているが、これが一番効率がいいはずだ。


「スラッシュ!!」

ガキンッ!!

中央の大型ゲートの前には、デカイ鎧の魔物がいる。


「ホホー!!」

屋上にいた魂兵たちも俺に続き飛び降りてくる。

「よし、一気にたたみかけるぞ!!」

ズシャシャシャシャ!!

俺はゲートを攻撃続ける。


でかい魔物も無視だ。

そして、ゲートから新たに湧いた魔物は、今左右の建物にいる。

俺たちを追ってきたことで、中央が手薄になっているのだ。

「こいつはお任せください!!」

トヨワさんだ。

「お願いします!!」


ズシャシャシャシャ!!


俺は全力で大型ゲートを攻撃し続ける。

あたりは混戦だ。


ズシャシャシャシャ!!


しかし、恐怖はない。

なぜか確実に勝てると確信できていたのだ……

事実、ゲートも順調に破壊できている。


ズシャシャシャシャ!!


ゲート破壊後はデカイ鎧を倒せばいいだけだ。


ズシャシャシャシャ!!


つまらない……


ズシャシャシャシャ!!


ブワン……


大型ゲートが霧散する。

「さすが勇者様!!」

「ホホホー!!」

トヨワさん、魂兵が讃えてくれる。


しかし……しかしつまらないのだ……


頭が冴えてくる。


3、2、1……

「魔法兵!!」

「ホホー!!」

ダメ押しの炎魔法だ。


ゴオォォォ!!

ドガアァァアン!!

ドガアァァアン!!


ズシャシャシャシャ!!


ブワン……


中型ゲートの破壊も完了する。


ダメだ。

完全に上手くいっているにもかかわらず、心が躍らない。

何も楽しくない。


ズシャシャシャシャ!!


魔物は倒せば霧散する。


人を斬った感触が無いのだ……


ズシャシャシャシャ!!


つまらない……


魔物ではだめだ……


ズシャシャシャシャ!!


人……


ズシャシャシャシャ!!


人間……


ズシャシャシャシャ!!


人間でなければ……


ズシャシャシャシャ!!


つまらないな……


ズシャシャシャシャ!!

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