第14話

「今日の分の小麦とイモです」

「あぁ、ご苦労」

俺は小麦とイモをエイハンに渡す。


「これは今日の分の食事だ」

エイハンは今日も自分の干し肉を俺に分けてくれる。

「ありがとうございます。干し肉まで」


「気にするな」

今近くの見張りはエイハン一人だ。

他の兵士は少し離れたところで酒を飲み始めている。


「あの、なぜ良くしてくれるんです?」

「なぜって……お前もメージスのために働いてくれているのだろう?」

いや、お国のためってわけじゃないし。

強制的に労働させられているだけだ。

この国にも来たばかりで、メージスって名前だってさっき知ったんだぞ。

こんなクソみたいな国のために働きたくもない。


そんな考えを読み取られてしまったのだろうか。

「まぁお前の意思は別にしても、俺は国のために働いている者を大事にしたいのだ」

「愛国者なですね」


「まぁな……」

エイハンの待遇は悪そうだ。

よく愛国心が芽生えるよな。

まったく理解できない。


「理解できんか?」

また考えてることを読み取られてしまった。

俺は表情に出やすいのだろうか。

「はい……まぁ」


「ボーダー様、エフラン様は、下民である俺を取り立ててくれた。

 その恩に酬いなければならない」

「下民ですか?」


「そうか。お前は知らないのだな」

これを気にエイハンからメージスのことをいろいろ聞いておくべきだろう。

「はい。教えてもらえませんか?」


「あぁ。この国の身分は、王族、貴族の他は平民と奴隷だ。

 ただ、平民には上民と下民がいてな」

「それってどうやって決まるんです?」


「決まる?

 それはもちろん出生だろう」

「そうなんですね」

生まれってことか。

つまり、生まれた瞬間に身分の高い、低いが決まってしまうってことだろう。

クソだな。


「ボーダー様が兵士長になられてから、下民の兵士が少しずつ増えている。

 素晴らしいことだ」

マジかよ。

あんなクソ兵士長を尊敬しているようだ。


□□□


「渡してきました。それから、今日も干し肉をもらっています」

「ありがとうございます」

俺はフェリスさんに干し肉を渡す。

それから、米はフェリスさんに炊いてもらっている。


「いただきます」

せっかくエイハンからもらったパンだが、食う気になれない。

硬すぎるのだ。

米が食べられるなら、断然こっちだろう。


「さっき、身分について聞いてきましたよ」

「まぁ、さすが勇者様!!」

いや、聞いてきただけだぞ。

なんだかこそばゆいな。


「メージスは、王族、貴族のほかに平民と奴隷がいるみたいですね。

 それで、平民には上民と下民がいるようです」

俺は米を食いながら話す。


「それで、エイハンはあれほど強いのに、下民ってことで扱いが悪いみたいですね」

「なるほど」


「意外なのは、エイハンが自分の扱いに納得してるんですよね。

 下民の自分が取り立ててもらったって感謝してるくらいです」

「それほど身分制度が徹底しているのでしょう」

クソみたいな身分制度だ。


「ごちそうさま」

俺は米を食った後、中央の台座へと行く。


魂 3705 / 毎時魂 180 / ゲート破壊数 18


さっき食糧をとりだして、現状残りの魂は3705だ。

俺は魂を1000消費し、訓練室を作成する。

昨日の魂兵の性能を確かめるためだ。


ガコッ!

ガガガ……


いつものように壁の一部がずれ、部屋が出てくる。

中に入ると、6畳くらいの何もない細長い部屋がある。


「これが訓練室? 狭くないか?」


ガコッ!

ガガガ……


なんと、新しくできた部屋の壁がさらに動き出す。


ん?

てことは、さっきできたここの部屋は廊下ってことか。

部屋数が増えてきたからな。

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