第1話
2060年9月某日。
「カフカちゃんいい加減学校に行くよ」
ノアはカフカを学校に連れて行こうと説得する。ノアは高校二年生、カフカは高校三年生になった。高校レベルの学習は小学生になる前から完全に理解していた二人だが、今は人とのコミュニケーションを学ぶために東京の高校に通っている。
閉鎖的な環境と特殊な人たちに囲まれた育ったため常識が欠け気味な二人。これも実験の一環としてカフカたちが社会に溶け込めるかを見ている。
だが、そこには二人に友達を作ってほしいという研究所の人達の思いもある。加えて、これからの研究者生活やシンセリティが行動してきたときのために様々なコネを作る必要もあり、総合的に判断して上流階級が通う日本の学校に行くことになった。
「もうサボろうよ?高校で学ぶことなんて何もないんだし。ノアもほら、私と二人で
いる時間がたくさんとれるよ。二人で遊んだり勉強したりする方が楽しくない?」
ノアとカフカは、博士がいなくなった後も研究所で育ち、高校にも研究所から通っている。過保護なカフカが姉として大切に育てた結果、ノアは真面目で周囲に気遣いも出来る優しい子に育った。対照的にカフカは、ノアに弱い所を見せないように、ノアを不安にさせないように明るく振舞ううちにお調子者で楽観的なキャラクターになってしまった。
「サボるなんてダメだよ。だって昨日も一昨日もそうやって休んだじゃん。今日こそ高校に行かなきゃ、何のために高校に通っているのか分からなくなるよ。人との関りが希薄なのが私たちの良くない所って言われているんだし。」
「まぁそれはそうなんだけど。」
「いい加減にしないと葵ちゃんにまた怒られるよ。せっかく学校に通わせてくれてるのに」
ノアはともかくカフカの方は本心で高校なんて面倒くさいものにしか感じていなかった。
博士がいなくなった日からカフカは勉強に、研究に没頭した。他を寄せ付けないほどの学問への没頭は、勉強を苦痛と思わない環境だけでなくノアへの思いが為すもの。
しかし、自分さえも壊しかねないほど研究に没頭し始めたカフカを見兼ねた葵により、カフカにセーブをかける意味でも学校に通わせている。実態は睡眠時間を削りながら研究をしているのだが。
「たしかに。えー。でも嫌だな。うーん。そうだ!今日は、私の研究をどうしても進めたくて・・」
「そんなこと言って研究ばっかりしているから体を壊しちゃうんだよ。この前だって気を失うまで研究して。私すごく心配したんだよ。ね?学校に行っていったん研究のことは忘れて?」
「むむ、手ごわい。分かった。じゃあノアが私と手を繋いで登校してくれるっていうなら、行ってあげてもいいよ。」
「なんでちょっと上から目線なのー!」
カフカは本質的にノアには勝てない。どんなことがあってもノアにお願いされてしまったら折れてしまう。
ノアを守るためにノアを心配させることになってしまっては本末転倒。部屋から出てきた時点で、自分を心配するノアからの説得を断れるはずもない。
しかし、ノアが自分のことを考えてくれる姿見たさに今日もまたカフカはいたずらをしてしまう。
「それでー、どうするの?私と手つなぐ?」
「え、えーと。…と、途中までだったらいいよ。」
ノアは少し恥ずかしそうに許可を出す。
「やったー!やっぱりノアは優しいね」
ノアもカフカが大好きであり、出来るだけカフカのことを尊重しようとする。博士がいなくなった後にカフカがノアの分まで辛いことを背負ってくれた。だから、『少しでも自分がカフカの支えになりたい』とノアは常日頃から思っている。
まぁ今は甘やかしているだけのようになっているが。
結論二人ともに、お互いが弱点なのだ。
「あれ?今日は来たんだね、二人とも。手まで繋いじゃって仲良しだねー。」
「でしょ。ノアったら私と手を繋がないと学校に行かないってきかなくて。かわいいでしょ」
「カフカちゃんが繋ぎたいって言ったんでしょ!」
二人に話しかけてきたのはカフカの初めての
「なんだかんだ言って二人ともお互いのこと大好きだよね。涼子さん姉妹とかいないからわからないけどいい関係だね」
「でしょ?ノアちゃんはあげないからね。ノアちゃんは私だけのものです!」
「ちょ、ちょっとここ人たくさんいるから。あんまりそういう恥ずかしいことは言わないで」
カフカがノアのことをこれでもかと褒めたたえる様子に恥ずかしくなるノア。涼子は笑いながらそんな二人を眺めている。
「やっぱり二人ともおもしろいね。あと涼子さん一人が好きだから別にノアちゃんはいらないかなー。」
「涼子、今私のノアちゃんを侮辱した?ノアちゃんがいらない人なんているわけないじゃん」
「カフカちゃんそんなに私のこと持ち上げなくていいから」
「そんなに熱くなるなよー!あ、もう授業始まっちゃうな。ほら急いでいこう。」
「ちょっとまだ話は終わってないよ。今からノアちゃんの可愛い所1000個くらい理解させてあげるから」
「はいはい。涼子さんはそんなの求めてないんで。」
涼子はそのままカフカと話ながら教室に行ってしまった。涼子のマイペースさに驚きながらも、『あの位がカフカちゃんには合っているのかな。でもなんかもやもやする』とノアは考えながら、教室へと向かう。
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