第3話 青年の想い
何年、何年これを続けたのだろうか。
毎晩、満月の日も、雨の日も、月の無い夜だって貴女に向けて
そろそろ限界だ。
会いたい、会いたい、会いたい。
いつまで僕を待たせるんだい?
ずっと、ずっと待っているのに。貴女のことを待っているのに。
貴女への想いを毎晩、文に綴って手紙にしてきた。もう数十年書き続けているのに、まだ貴女は返事をくれない。
あぁ、そうか。僕が手紙の宛先を間違っているのか。
貴女はどこにいる?
どこにいるんだい?
あの美しい月が照らすどこかにはいるのか?
探しに行くよ。どこへでも。この地が続く限り。
◑
探しても見つからない。貴女はいったいどこにいるんだい?
貴女がどこかに行ってしまったのか?
それとも、僕が別の場所へ来てしまったのだろうか。
分からない、分からない、分からない。
ここはどこだ。この美しい世界はどこなんだ。あの、毎日のようにどこかで炎が燃え上がる戦場は、毎晩のように鳴り響く空襲警報は? どこへ行ってしまったんだ。
数十年間、たった1人の時を過ごしてきた。
寂しい、悲しい、苦しい。この感情が〖あの頃〗よりも大きくなって胸にぽっかり穴が空いたようだ。
この穴を埋めてくれるのは、貴女しかいないのに。貴女は、まだ来てくれない。
「早く、早く来て。待っているから」
そっと呟き、今晩もまた手紙を書くために金縁の万年筆を手に取る。
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