第4話 繁栄は試練と共に
男が眠りに着き早9か月。世界に変化が訪れようとしていた。
隕石落下事件で発見された鉱石、その存在が数日前に消えたのだ。
「どうなっているのだ?」
「解りません、防犯カメラを確認しましたが。写っていた内容が俄に信じられず」
「私も確認した。たが有り得るのか?鉱石が突然液体になり、気体となって消えるなど…」
「ですが所長、実際に鉱石は跡形も無く消えております」
構成する成分を調査するため運び込まれた研究機関。だが現段階での人類では到底手におえる物では無かった。
その為、研究機関に置いて厳重に保管されていたのだ。
「我々が何をしても欠片すら採取できなかったのだぞ?一体どうなっている!!」
「例の水晶と同じでしょうか?」
「解らん!問題は他にも有る。盗まれたなら言い訳もできるが、消えた何て誰が信じる!」
「素直に映像を見せるしか有りませんね」
頭を抱える所長に対し、冷静に受け答える研究員。とはいえ他にやりようが無いのだ。
「この件は何大臣だったか?」
「直接総理に伝えてもいいでしょうね…」
「頭の痛い案件だな」
そう呟き溜息を付く所長に、同情する研究員もまた溜息を付いていた。
そして3か月後、全世界を揺るがす事件が発生する。
その放送はすべての通信機関を通じ放映された。
突然ジャックされた、テレビ、インターネット、そこには顔をベールで隠し表情が見えない女性らしき人物が映し出されていた。
『私は人々に繁栄をもたらす者、この星に住まう者達に告げる』
人々は突然の放送に困惑しながら、耳を傾ける。
『この星の資源はそう遠くない未来尽きるでしょう、ですが安心して下さい。私がこの星を繁栄へと導きましょう』
随分尊大な言い分に人々は首を傾げる。当然だ、今人類は反映している。未だ紛争地域も存在するが、数年前に比べれば減少しているのだ。
ただし、資源に関しては不安を口にする者も多い。国等は宇宙に目を向け、月や火星から資源を回収する手段を模索している最中だ。
そんな中、まるで自分がこの星を救うと言わんばかりの存在が、突然全世界に向け言葉を投げかける。
『ただし、私は繁栄だけを与えるつもりはありません。この星の人々に試練を与えます。
これから7日後、この星にダンジョンを生み出します。そこであなた達は新たな力と新たな資源を手に入れる事となるでしょう。
ですが先ほども申しました通り、その為には試練を突破していただきます。ダンジョンには、この世界で言うモンスター達が現れます。それらを倒してください。倒すことで新たな力が、進むことで新たな資源が手に入ります。
まず、心に留めてください。
私の言葉を。
これからダンジョン発生までの期間、私はこの時間に毎日現れ、そして人々に告げるでしょう。これから起こる変革を』
そう言い残し、放送は終了した。気が付けば放送は元通り、何かの冗談か?そんな考えが人々に過ぎるが、全世界同時での放送であると確認出来た瞬間どよめきとなる。
そうなるといち早く騒ぎ出すのはネット民たちである。
:おい、あの放送って本当か?
:わからん、試練がとか繁栄がとかまったくイミフ
:ダンジョンってあのダンジョンかな?
:あのダンジョンであってほしいわw
:お前ら、ダンジョン出来たらどうする?w
:もちろん凸乳するw
:↑お前の趣味がまるわかりw
:オレ:オマエマルカジリ
:変換下品すぎ、ワロタwww
:とりま明日に期待(/・ω・)/
人々の話題をさらい、全世界でニュースに取り上げられた。同然中には新手のテロ等と言う専門家もでてくるが。現状どうやって世界中の通信をジャックしたのか判明していない。
そして翌日、同時刻、予告通り彼女は現れた。
『人々よ聞くが良い』
ダンジョンが発生する予告日、その前日まで彼女は現れこれからの在り方を説明していく。
【ダンジョン】これからの人類だってさ【どうする?】
:ん~誰ぞ簡潔にまとめてw
:おう
1,明日ダンジョンが生える、場所と数は不明。
2,モンスターが居る、倒すと強くなる。LVが上がる。
3,モンスターを倒すと倒した相手に応じてG(ゴールド)なる電子マネーが自動で手に入る。
4,電子マネーは世界共通、すでに彼女?が流通準備を済ませている。1人1口座作成済み。要アプリダウンロード。
4補足、ダウンロードすると自動で個人とリンクするらしい(どうなってんの?)
5,1G=1$のもよう
6,ダンジョンの奥にはお宝がある。金銀宝石、希少金属等。
7,ダンジョンにはランクが在り、1~10まで数字が大きいほどモンス強
8,魔法が使えるようになる←これ大事
こんなとこ?
:一番肝心なこと抜けとる
:メリットだけ書くな
:あ~あのデメリットか~
:アレってホントならかなりやばくね?w
:本当なら草も生えない…
:個人特定できる時点で怖すぎだわ
:それができるならあの話も事実じゃない?
:うう…書きたくない、誰か書いて
:代書
9,5年以内にランク1ダンジョンをクリアすること、クリアできない場合ランク1ダンジョンからモンスターが地上へ侵攻する氾濫が起きる。
10,5年ごとに次ランクのダンジョンをクリアすること、クリアできない場合未クリアランク未満のダンジョンからモンスターの氾濫がある。
※なお、氾濫はこの星の月に1度、期間は3日間、4日目にモンスターは消滅する。
11,すべてのダンジョンをクリアすれば氾濫は消滅、ダンジョンはこの世界に残り人々に繁栄をもたらす。
以上
:こわ
:こわ
:コワ
:どゆこと?
:単純に5年ごとダンジョンのクリアランク上げろって事では?
:一概にそれが良いとは限らん
:んだね、5年後までにランク1クリアはできるかもしれない
:だけどその先を考えると怖いな
:クリアランクを上げれば上げるほど安全期間は長くなるが…
:上げれば上げるほどクリアできない時の氾濫が怖い
:ランク5までクリアしたとして氾濫はランク1~4ダンジョンか…
:低ランククリアのままはどうなのさ?
:永遠に氾濫に苦しむことになるぞ
:んだ、それに罠も仕込まれとる
:へ?
:罠?
:うむ、月1=同じ日では無い
:あ
:あ
:あ
:え?何なに?
:30日に氾濫、翌1日氾濫が有り得る…
:おおう
:地獄やね
:こわすぎ
:笑えない
:ランク1でもモンスターが一般人より弱いとは思えない
:とはいえサイは投げられた
:明日全てがわかる
人類すべてが期待と不安を抱える中、ダンジョンは現れた。
日付変更線が0時を越え、自国が0時を迎えるころダンジョンゲートが現れる。
ダンジョンゲートは正しく門であった。
在るのは門だけ。裏には何も存在は無く、だた門だけが佇んでいた。
門の頂点にはローマ数字でランクが刻まれている。I~Xそれがダンジョン内部のランクであることは明白である。
巨大な門、高さはおよそ5m。だが横幅は重いの他狭く1m程度であった。人一人が通れる程度の幅は、車両の進入を良しとしないようだ。
「いいか!これよりダンジョンへと突入を開始する!何がおこるか解らん!十分注意するように!」
日本にダンジョンゲートが現れた。
基地で待機していた自衛官達、一方を受け現地に向かったのだが、ゲートを見て判断を下した上司が部隊へ告げる。
「なお、発見された入口は狭いため車両での突入が難しい。バイクでは両手が塞がる、即対応が出来ない事が予想される、危険度が増す、よって徒歩での突入となる」
もろもろ注意事項を述べ、突入準備を開始。
突入。
そんな彼らが見た物は。
「草原?」
一面に広がる草原。見渡す限りの草原であった。広がる草原はどこまでも続き、丘もみえる。
果てはないのだろうか、そんな考えが浮かぶも違和感を覚える。
「地平線、という感じではないな。丘はあっても山がない…」
「隊長、別ダンジョンへ突入した別部隊からの連絡です。あちらは砂丘だったそうです」
「ダンジョンによって環境が違うのか…」
「見たいですね、それにイメージしていたダンジョンとも違います」
国会より、ダンジョン調査の命令が下ったのが3日前。そこで想定できるダンジョンについて話し合った。
何も解らない状態より、多少マシ。そんな理由からである。
「他には?」
「ランク2やランク3ダンジョンは入れないみたいです」
「ん?どういうことだ」
「解りません」
しばらく考え込んだ上官は、顔を上げダンジョン内を見廻す。
「我々は、本当に未知の存在と接触したんだな…」
「あの女性、神なんでしょうか?」
「さてな、ともかく我々は命令に従いダンジョン内を調査するだけだ」
「了解です」
部隊は細心の注意を払い、ダンジョン内部へと進んでいく。
:ダンジョンきたーw
:すっげー盛り上がり
:1週間長かった…
:1週間前信じてなかった奴が何を言うw
:情報くれw情報w
:ゲートを抜けると、そこは森林だった
:入ったん?
:うむ
:おお~
:すげ
:で、モンスターは倒したん?
:チラ見して怖くて即撤収w
:つっかえなw
:なお、突入得点は無い模様
:オレつえー?w
:出来そうに無いw
:まあ、これからいくらでも情報は入ってくるさ
:んだ、焦って死んだら元も子もない
:果報は寝て待て
:魔法使いたいんじゃw
:ダンジョン逝ってこいw
:死ぬ前提やめてw
ダンジョン試練は始まったばかりである。
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