第18話 王国への道 後篇
朝になって、野営地で“交代時間になっても起こしてこない”ことが原因で怒ってるマリアンヌと、正座しているジャックがいた。
「あなたは護衛です、女性に優しいのは嬉しいですが。王都に到着するまでずっと寝ないつもり?このままでは護衛の仕事に支障を来す。わかった?」
「は、はい、申し訳ありません。」
マリアンヌの前で正座したジャック、実は一晩ずっとマリアンヌの寝顔を見続けているまま、知らないうちに朝になっただけです、これだけは絶対墓まで持っていく秘密です。
「はぁ、では次はないように気を締めで行きましょう。」
「かしこまりました。マリアンヌお嬢様。」
「からかわないでくださいませ、ジャックお坊ちゃま。」
「お坊ちゃまはないだろ、ちょ…待って!」
マリアンヌはすでに馬に乗り、先に走り出した。ジャックは慌てて馬に乗ってマリアンヌに追いつく。
国境まであと3日半
昼は小さな街に到達、食料の補給とフード付きのマントを購入した。流石に貴族に見られる可能性もあるし、顔を隠した方がいい、王女専属メイドでは面識がある貴族も多い、油断がダメです。そこでジャックはマリアンヌの機嫌を取るため、食べ物や重いものは全部自分が持つと進言しました。
「ジャックさん、わたしはもう怒っておりませんよ。」
「あ…いや…重いものは俺が持つよ、俺は力はある…た、頼れてくれると嬉しいなぁ…なんで。」
「!……そう、そうですか、ではすみませんが、こちらをお願い致します。」
(わたし、やっぱり仕事以外の人を頼るのは苦手ですね。ジャックさんも悪い人でもないし、昨日も大人しくわたしの話を聞いてくれたし。すぐには無理ですが、彼に頼ってもいい…と思う。)
「おう!どんどん俺を頼ってくれ。」
「そうでね、では代わりに今晩の夕飯はわたしが何が作りますね。」
「え?!いいいいいいいの?」
「簡単なものですが、お嫌いでしたら、干し肉をどうぞ。」
「いいいいいえ!嬉しいです。」
そのまま再出発した。馬で走ったままマリアンヌは先の会話を思い出し、思わずジャックに話した。
「ホントにジャックさんはお坊ちゃまみたいですね。」
「マリアンヌ嬢、こんな感じで俺をそう呼ぶのはあんただけだよ。」
「あら、光栄でございますわ。」
「…なんかホントに不思議だぁ。」
「え?これはとう言う意味かしら?」
「いや、俺は子供の頃からずっとこんな怖い顔とこんな目つきだからね、親しい隣人以外は基本この顔を見て逃げる人が多いから、こんな楽しい会話は久しぶりだ。受付嬢はそれが彼女たちの仕事だから除外で。」
「そう?わたしはジャックさんの顔を別に怖くないわよ。」
「俺もこんな普通の感じで綺麗な女性と話すのもはじめてで、実は今夢でも見てるのかっと。」
「あら、お世辞ありがとうございます。」
「いや、ホントだぜ、マリアンヌ嬢はお綺麗だ、美人と思う!」
「………」
マリアンヌは急に自分もプライベートで男性とこんな楽しく話したのもはじめてと考えると、黙ったまま返事できなくなった。
王女直属メイドの地位、休みなしの7年間のメイド生活、仕事中のマリアンヌは無表情だから、気安く話す人もそんなに多くないでしょう。それに王宮で嫌な噂を避けるためにも、仕事以外ではほぼ男性と話はしない。だから男性にこんなストレートで褒められるのはそんなに経験がない…簡単で言うと彼女はウブです。
その夜、野営地に到着、荷物を持つ代わりに、簡単な夕飯を作るマリアンヌ。ジャックはうまいうまいと大絶賛した。
「家庭料理を食べるのは何年ぶりだろ、美味かったぜ。」
「お粗末様でした、これは家庭料理すらないでしょう、ジャックさん大袈裟過ぎますわよ。」
「いや、ホントに美味かったぜ、毎日食べたいくらい。」
「え?…ジャックさん、あなた女性には苦手とお聞きしましたですが。」
「え?そうですよ、君以外の女性は大体俺の顔を見たら逃げるから、それに女性の前で何を言っていいのかよくわからん。だから昔いつも受付嬢たちに無理なクエストを渡されたぜ。だからこんなに話せるのはマリアンヌ嬢がはじめてだぜ。」
「そうですか…。」
そう話したジャックは急に剣を抜き、マリアンヌの前に立て。ある方向に話した。
「そこの人たちは出て来い!」
ちょっと遠い草むらから人が出てきました。
(え?そんな、囲まれているの?)
「おいおいおい、いい匂いじぁねぇか、俺らも混ぜろよ。」
「おやおや、いい女もいるぜ?」
「男は殺せ、女を怪我するなよ。」
チンピラ5人に囲まれていた。
(油断したわ、2人だから気を抜きました。)
「ジャックさん、わたしは後ろの相手にし…」
「マリアンヌ嬢、このくらい俺に任せろ。」
「え?何をい…」
「おまえら、彼女に髪一本も触れさせない!…盗賊に慈悲なし!フン!」
「貴様!騎士様真似す…」
リーダー格のチンピラの話しはまだ終わってないまま、後ろの左右チンピラはすでに倒れ、電光石火のように続いて前の左右チンピラの頭もすでに身体と離れた。
「る…」
「お前もすでに死んだ…。」
リーダー格のチンピラの頭は身体と離れた。マリアンヌはまだ何があったのかわからないまま、ただ驚いた顔で剣に付いた血を拭くジャックさんを見る。
「終わりました、マリアンヌ嬢。でもね、あいつらの血でここはもう使えない、場所変えろ。」
「え?は、はい、守ってくれてありがとうございます。」
「俺はあんたの護衛だから、このくらい当然の事だ、もっと頼ってもいいぜ。」
「ジャックさん、お強いですね、銅ランクなのに、下手に王宮の騎士たちよりお強いでは?」
「え?…あ~、いや〜、俺はまだまだよ。銅ランクだからね、上には上がある、はははっ。今日は遅いだから、こいつら片付けるから別の場所に移動しろ、今日もマリアンヌ嬢は先に寝ろ。」
「いや、今日はあなたが先に寝なさい。昨日は徹夜したでしょう。」
「俺は平気だぜ…。」
「寝なさい。」
「お、お言葉を甘えで、先に寝ます。」
「宜しい。」
ジャックは盗賊の死骸を森に捨て、二人は馬を連れ、もうちょっと先に移動し、そこで再び野営した。ジャックはマリアンヌの言う通り先に仮眠した。マリアンヌは焚き火を見ながらこう考えてる。
(今日は追手もなし、街で指名手配されたもなく、こっちは大丈夫そう。アイリスちゃん、大丈夫かしら。)
その夜チンピラ以外に他に何もなかったまま朝になった。
国境まであと2日半、今日は丸一日馬で走り続けた、
「あの…マリアンヌ嬢、おかしいと思わないか?」
「はい?何のことでしょうか。」
「帝国王都西の街からおかしいと思ったが、今まで途中魔獣1匹もなかった、おかしいと思わんか?普通はゴブリンやコボルト、この当たりの森ではアラクネも出たと思うが。」
「そう言われると、確かにおかしいですわね、何故でしょう。」
「ドラゴンはもう帝国から離れたみたいだし、魔獣の生態は変わってないと思う。強い魔獣が俺達のあとで付けてるのもありえないし…」
「良いことではありませんか?予定より早くなったし。早く寝ましょう。」
「…まあ別国の話だし、考えっても意味もないが…今日はマリアンヌ先に寝な、いや、今後もです。」
「いいえ…」
「反論は受けない!俺は朝の料理のいい匂いで起こされたいんだ、なぁ!」
「はぁ、では先に休みますね、ありがとうございます。」
今晩も何もなかったまま朝になった。
国境まであと1日、今日も全く何もなかったまま野営地に到着した。
「やっぱりおかしい、魔獣1匹もない、ここ数日俺はスライムすら見てない!俺何回この道走ったが、平均一日3~4回魔獣を見たぜ。」
「そうですね、西の街からここまで1匹もないのは…」
ここでマリアンヌは急にアイリスと離れた時の事を思い出した、アイリスはマリアンヌの両手をつかんで祈ったことを。
『あなたに幸運に恵まれように』
(そうだ、あの時僅かですが、アイリスちゃんの体が光ったような気がする。あの時は気のせいだと思うのですが、まさかホントに?では運良く偶然こんな強いな
「もう、ホントに…アイリスちゃん、ありがとうございます。」
マリアンヌも思わず祈りで感謝の気持ちを語った。
結局今夜も何もなかったまま朝になった、何故かジャックがものすごい元気で“果たして今日は魔獣は出るのか”と楽しみしています。マリアンヌは今日
「今日もし魔獣が出ったら王都に到着したあと、俺のために一週間本気なメシを作ってもらおか!」
「そうですね、では今日魔獣が出なかったら、王都でわたしの仕事探しに手伝ってもらいますわ。」
「おう!わかった約束だぜ!」
「はい、約束します。」
「絶対俺が勝つぜ、国境近くなのに魔獣がない訳がないんだ。はははは!」
「これはどうかしら。」
午後4時、ようやくジキタリス帝国国境のカウレシア王国方向の関所に到達した。並んで出国する人は相変わらず多い。マリアンヌは段々緊張した。思わずずっと“もしここで捕まったら、でもあの姫様では絶対こう…”と考え、その対応策を考える。ジャックはそれも見て、袋からあるものをマリアンヌの顔に掛ける。
「え、これって…。」
「メガネだ、度はない、いつもは俺のこの悪い目つきを隠すためにかけたが、結局効果はないらしい。マリアンヌ嬢はこれをかけろ、それと検問する時はフードを頭を被さないように何も喋らないままでいい、何を見るかをわからない時は俺を見ろ、全部俺に任せて良い。」
「は、はい、ありがとうございます、でもフードを被らなくでいいの?」
「被る人は逆に検問の人に怪しまれる、普段通りの方が疑いはしない、メガネは念のためもし貴族があればの少しの保険だ。」
「うん、はい、ありがとうございます。」
(ジャックさんで、思った以上優しいですわね。)
遂にマリアンヌたちの番だ。検問はマリアンヌを見て、マリアンヌも一瞬検問の人を見た後すぐに視線を変え、ずっとジャックを見る。検問の人は嫉妬でまさかこんな美人がこんな大男の女とは思いたくないが、わざと細かくマリアンヌのアレやコレを
「身分証をお願いします…マリアンヌさんですね。」
「はい。」
「そこの君、できれば俺の嫁にいやらしい目で見ないでくれると助かるが。」
ジャックはマリアンヌの肩を抱き、自分の方に寄ってきた。同時にジャックのギルドカードを検問の人の前に示した。
「は、はい!あなたさまのお嫁さんとは知らず、申し訳ありませんでした。どうぞ、行ってください!」
検問の人に礼をされた、未だにカウレシア王国に入ってないため、緊張で何を見てはいいのかわからないまま、マリアンヌはシャックを見続けてる。
(ジャックの真面目の顔、はじめで見たわ、たしかに今の顔では普通の女性は怖かってるでしょう。)
「誰が見てるのがわからないから、カウレシア王国に入るまでそのまま我慢しろ。」
(み、みみ、耳元で囁かないでおおおお願い致します。)
ジャックは見てないが、マリアンヌの顔は真っ赤になって言いたいことも言えない事になった…ウブな彼女にはジャックのそのスキンシップの刺激は強すぎ。
彼女は肩を抱いたままカウレシア王国に入国しました。その晩王国の国境の砦で“顔真っ赤な美人嫁が持つ大男”に嫉妬しヤケ酒を飲んだ職員が沢山出た。
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カウレシア王国に入国した3日後、マリアンヌたちは何もなかったまま順調にカウレシア王国の王都に到着しました。結局あれからカウレシアの王都まで魔獣1匹も出なかったので、賭けはマリアンヌの大勝ちとなった。
王都に入って、冒険者ギルドに到着すればいよいよこの旅も終わり、2人はゆっくりギルドに向けて歩いていた。
「何なんだよ、帝国から王国の王都まで魔獣1匹もなかったぜ、言っても誰も信じねえだよ!」
「負け惜しみですわ、ジャックさん。」
「これは明らかに異常だ!帰ったら調べないと…」
「いいえ、異常ではないわ、わたしの友人のおまじないのせいと思う。」
「まじない?神父聖女じゃあるまいし、まじないで旅が魔獣が襲わなくなるような人があれば紹介して欲しいぜ。はははっ!」
「まぁ、わたしの言う事を信じないの?すごく悲しいですわ。」
「あ、いや、違うんだ。仕事でこれを調べる事は必要だ!ごめん!この通り!」
「ふううっ、冗談ですわ。では賭けに負けたので、わたしの仕事探しに手伝ってもらいますよ?」
「そうだな…マリアンヌ嬢、書類作成や整理は得意か?」
「ええ、問題ありませんよ、一応長年メイドを務めましたので。」
「ちょうどいい、いい仕事があるぜ、マリアンヌ嬢にビッタリだ。」
「え?ホント?こんなにすぐに見つかるのは嬉しいですが、ではあとはお部屋ですわね。」
「部屋が見つかる前に俺の家に住めばいい。も、もちろん!お前が気にしないだけの話だ。や、やましいことはしない、絶対に!誓って!」
「え?!…わかりました、ジャックさんのこと信じますよ。ではお言葉を甘えで、部屋を見つかる前に、お邪魔させいただきますね。」
「ほ、ホントにいいの!…よし!」
「部屋を見つかるまでです、では今日の夕食はなにか食べたいものがありませんか?」
「作ってくれるの?!」
「部屋をお貸ししたのお礼です、お礼です。」
「いい、それでいい…お!ここは王都の冒険者ギルドだ。」
冒険者ギルドに入り、受付嬢が大声で扉方向に叫んだ。
「ギルドマスター!ようやく帰ってきたのか!大変な事になったよ、書類も沢山溜まってます、早く事務室で仕事しなさい!……ってギ、ギルマスが美人を誘拐しているよ、誰がギルマス捕まって!」
「違うんだ!マリアンヌ嬢は俺が見つけたギルドの新しい受付嬢兼俺の秘書だ!誘拐ではない!断じて!」
「あたしたち受付嬢以外にギルマスの顔を見で逃げない女性がいるはずがないわ、忙しいだから仕事を増やしないでください。」
「いや、信じてよ。この前受付嬢を増やしたいと言ってわざわざ優秀な人才を帝国から連れてきた。帝国ドラゴンの件ですでに無駄足になったから。こっちも困るんだ。」
「ホントに新しい受付嬢?ホントにホント?」
「ホントだ!ま、マリアンヌ嬢も説明して、誘拐じゃなくって。」
マリアンヌは目が点になったままこのやりとりを見た、そして笑顔のままでジャックに説明を求めた。
「……………ジャックさん。そこで正座しなさい。…あなたはカウレシア王国王都の冒険者ギルドのギルドマスターの事全く聞いたことないですけと、ご説明お願いできますか?」
「え?…あ!そうだ!帝国の受付嬢が勝手に!…」
「ジャックさん…。」
「ひぃ、ご、ごめんなさい、わざとじゃないんだ!信じてくれ!」
その日、カウレシア王国冒険者ギルドに裏ギルマスを雇ったとの噂と、裏ギルマスを絶対怒らせるなと冒険者の間で噂されてる。
(アイリスちゃん、おまじない、ありがとうございます。おかげさまで安全にカウレシアの王都に到着しました、あなたにまた会えること楽しみしております、わたしはここであなたを待ってるわ。)
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