第3話 イカれた儀式 ※ジキタリス帝国目線
----------時は数時間前に遡る----------
オレはジキタリス帝国の魔道士団長イライジャ・フォン・ロドリゲス、23歳で魔道士団長に就任した世界一の魔法使いだ。
我が国ジキタリス帝国はこの大陸の右側半分を占めた軍事大国。2年前、辺境の海崖の洞窟で遺跡を発見しました。その遺跡の中でまさかこんな素晴らしいものが発見されるとは、あの時は想像もつかなかった。
あの遺跡は多分大昔カオル神に憧れた魔法使いたちの研究室だと思う。残された書物の大半はボロボロだったので、詳しくはわからん。
ただ“異界の人を召喚するに関する書物”とこの魔道具“転魂儀”、この2つだけが洞窟奥の石室で厳重に保護されている。これがこいつらの一番の成果だろ。この2つの遺物を見ると昔の研究者たちが狙うことはすぐにわかる…面白い、オレが代わりに完成させてやろう。
その後、すぐに皇帝オリヴァー陛下とアイビー姫からオレを呼び出し、そしてとある極秘な王命を受けました。その内容はまさかその遺跡の魔道士たちがやろうとすること、“異界の人を召喚し姫をその身体を乗っ取る計画”、最高じゃねぇか!
確かに現王妃は病で死んだ。後継は一人っ子のアイビー姫を女帝にする予定でしたが、予想通りバカ貴族共は女には皇帝になれないと反発。アイビー姫は17歳とまだ幼いですが、頭がすごくいい代わりに魔法の才能は弱い。いや正しいのは魔力量が弱い、生活魔法も数回しか撃たない、姫様の魔力の上限と回復速度は極めて低い。もし彼女の魔力量が多いと、その賢さでは魔法もすぐに習得し、あっという間にオレの上にいける…だが、彼女はあの皇帝と同じく性格が悪い。皇帝は剣術と魔法の天才、その姫も天才なんだ、何も学べばすぐに出来る。だからこの二人の目では他の人はただの数字、使える道具、気にならなければ処刑。オレら団長級でもこの二人の目の中にはただの豚と見なされ、実際会議だけでオレも何回も死にかけている。
当然、オレはその計画に乗った。姫様がオレの上に行くのはもう気にしない、カオル教の伝承では異界の人は桁違いの力を持ってる、もしあの姫様がその身体を乗っ取られると、この大陸…いやこの世界の新しい神に言えるだろ。こんな奇跡のような儀式に成功したオレは、即ち人の身で神の領域に達する、考えるだけでもうゾクゾクする。
それで、その2つの遺物を回収し研究を始めた、召喚に関するな書物に記載した魔法陣はほぼ完成したが、オレは現代最新な魔法技術を取り入れ、こうすれば必要魔力を抑え、恐らく触媒は災厄級魔物の魔石を使えば理論上100%成功させる。
問題はこの魔道具の“転魂儀”だ。回収した時のアレは駄目だ、これでは起動すらできない。基礎の部分と魔法回路は半分しか完成していない、残るの半分は当時の魔法技術では無理、魔法回路を現代の魔法技術で改良しないと駄目だ。でも一番驚きなのはその魔道具に付けた魔石だ。こんなに大きな魔石は見たことない、災厄級以上…いや、天災級魔獣の幻の魔石だ!アレは未完成とは言え、魔法の天才なオレに掛かれば1年で完成した。テストを重ねて魔道具がホントの意味で完成した。
この召喚儀式は極秘事項のため、関わる人はかなり絞られた。オレは優秀だからこのくらいの縛りは関係ないんだ、オレを崇拝するかつ魔力量多いな
この王城は元々は龍脈の上に建てられた、では儀式は魔力が一番多く集まった地下室で行われる。
そして今日!このイカれた儀式がはじまる。そして今!このオレの才能は神域に達したことを証明した歴史的な刻だ!
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地下室で召喚の魔法陣の周りでイライジャとその部下たちが呪文を謳えた。帝国の宝物庫に保管された災厄級魔獣キメラの魔石が召喚魔法陣の上に光り輝いている。呪文が終わり一層強烈な光を発し、魔石は粉々になって魔法陣に吸収された。光が段々消え、魔法陣の上に黒髪黒目怪しけな服装を着た男性が地面に座った。
「陛下!召喚成功しました!」
イライジャは真っ先に皇帝に報告した。周りの魔道士や騎士たちが歓声を上げ、ここで帝国皇帝であるオリヴァーから周りに命令を出す。
「異界の人を押さえろ!伝承では異界の人には規格外の力がある、魔道士は防壁魔道具を準備!油断するなよ!」
「「は!!」」
周りの魔法使いはすぐに防壁魔道具の前に準備、近衛騎士四人はすぐにその異界の人を捕まえて地面に抑える。異界の人は予想外に抵抗してこなかった。いずれ我が身になると思う帝国の黄金姫と呼ばれたアイビーは騎士たちに一喝。
「○○○!!」
「貴様ら!その体に何一つ怪我したらその空っぽな頭を切り飛ばすわよ!」
騎士たちの手は少し緩んでた、未だに己の達成感に酔ってる魔道士団長イライジャを見た姫は。
「ぼーっとしないでイライジャ 、ささっと魔力測定しなさい、こいつが使えないと再召喚するわよ。」
「も、申し訳ございません、姫様!」
イライジャは魔力測定用の水晶玉を持って、罪人のように押されたままの異界の人の手に水晶玉を触れた。水晶玉は一瞬強烈な虹色を発したまま半分に割れた。現場にいる全員声も出さないままただただ驚いている。
ただひとり、アイビー姫は口角上がってニヤリのまま、異界の人の前に行き、上からその人の顔、身体を細かく観察する。
「これだわ!わたくしが求めるのはこれですわ!…容姿は合格、見た目では24才かしら。気にったわ…貴様、名は?」
「○…?」
異界の人の顔は困惑し、未だに何があったのかわからない顔のまま、どうやらこの世界…彼にとっては異界の言葉がわからないらしい。
「この世界の言葉わからないようね…それともわからないと偽ってる…かしら。まぁ、わたくしには
「かしこまりました、姫様。」
命令を受けイライジャは魔道具“転魂儀”を異界の人の前に置き、準備を始めました。その力を欲しがった皇帝のオリヴァーは姫にこう言った。
「全属性の適正、それとその魔力量!…アイビーよ、召喚したのは男だから、やはり余が…」
「陛下、皇帝が急に身分が知らない人に変わったと誰に言っても信じられ者もはいませんわ、でもご安心してくださいませ、予定通りわたくしがこの身体を貰い、王の血と異界の血の子を沢山産めますわ!」
対外的に野心家な皇帝オリヴァーの反面、家族だけには甘い、彼にとって”人”は家族のみだから。病で亡くなった王妃を産んだアイビーを甘やかしていることは有名だ。後妻を迎えないのはただ彼の目に合う、高位貴族の女性がいないからだ。
「そ、そうだな、そなたが男になるのは我が勢力にも好都合だ、女のままではあなたの才能は勿体ない、期待してるぞ。」
「ではお父様、娘として最後のご挨拶です、これからは英雄としてよろしくお願いしますわ。 イライジャ、始めるわよ。」
娘として父親にこうして話すのもこれで最後だ、アイビーはここで父親に美しいカーテシーで一礼し“転魂儀”の前の椅子に座った。
イライジャはナイフを持って異界の人の指を血が見えるくらい切り、アイビー姫も同じく指を切った。異界の人は細やかな抵抗がありますが、騎士4人が押さえたまま指切った左手は姫の切った指に繋ぎ、空いた手を“転魂儀”の魔石に押し付けた。
「○○○!○○○!○○○○!」
異界の人が何かを喋ったが、言ってた言葉もわからないし、イライジャは彼を無視し魔道具を起動、魔力を魔道具に送り呪文を謳える。魔道具から紫の光が発し、約10秒程度光は段々消える。アイビー姫と異界の人も共に気力を無くしたように倒れ、“転魂儀”の巨大魔石は灰色に変わり、焼尽な炭のように崩れ消えました。
「な!失敗したか!イライジャ!アイビーは!アイビーは無事か?!」
娘を心配し椅子から立ち上がった皇帝に対し、イライジャは自信満々でこう返事した。
「いいえ、魔石の崩壊は魂交換のあとで発生するのため、問題はないかと…。」
「ホントに問題ないな、アイビーに何かあったら、余はこの手で貴様の首を切り落とす!覚悟しろがいい。」
「事前で囚人を使って“転魂儀”を沢山実験したのため、確実問題はないと…恐らく異界の人の魂が我々の予想以上大きいのため魔石内の魔力を使い切ったのは原因でございます。」
「言い訳はいらん、結果が全てだ!成功したらアイビーはいつ起こるんだ。」
「およそ半日でございます。」
「近衛騎士に命する!アイビー…の体を速やかに彼女の部屋に送れ、彼女の専属メイドに過労を伝えて、医者を呼べ、しばらく部屋で休ませろ。余計な事を話すなよ。この異界の人の体は客室に送れ、中はアイビーかも知れないだから丁寧に、王宮メイド長に連絡し普通の服装に着替えさせろ、その怪しい服は誰にも見られる前に燃やせ。別の医者を隣の部屋で待機、この人は誰と聞いたら余の客と黙らせろ。」
「「は!」」
騎士たちが命令したあと、皇帝はそのまま地下室を離れた。
外に出て見上げると、昼なのに空は夜以上真っ暗、雷がゴロゴロと響いたあと雨が降り始めた。
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