第24話 サイバーパンクで攻撃準備
「ブレスホークの本拠地を潰すって……何人いると思ってんだ? 二百はいるんだぞ」
「まあ、全員殺す必要はないよね。ボスと偉いやつを何人か。あと半分ぐらいでいいんじゃないかな。そうすれば流石にこっちへ復讐しようとは思わないよね?」
「できるわけねえだろ!」
イクシーは涼しい顔をしている。バイセンは、彼が本気でブレスホークの本拠地を潰せると考えていることに混乱した。鉄格子を簡単に切断していたのは見た。シャロとオーフが強力な魔法を使えるのもわかった。しかしあの程度では、到底可能そうには思えなかった。
「なあ、腹へった」
ガレが呑気な声で言う。
「わかったよ。子供たちも食べるよね。あーでもラボトレーラーまで行かなきゃいけないのか。それにプリンターで作らないと。人数多いし、どうしようか?」
「は? メシだと?」
突然変わった話題にバイセンはついていけない。
「あ。バイセンも食べるよね」
「食うかよっ。牢から出れたんだ、俺はもう行くぜ」
バイセンが家から出ると、上空から降下してきたドローンが前を遮った。
「なんだっ」
さらにドローンが二機接近してくると、左右を挟むようにして滞空する。
「悪いけど、あんたには一緒に来てもらうよ。俺たちがちゃんとブレスホークを倒したってことを証明してもらわないと」
「テメエっ!」
バイセンがイクシーに向かって足を踏み出した瞬間、ドローンがパルスレーザーで足元を射撃した。一瞬で地面が黒く焦げ、細い煙が立ち上る。バイセンの動きが止まった。
「ドローンの攻撃って簡単に殺せるみたいなんだ。できれば大人しくしてほしいんだけど」
「また牢に入れってか? 無理だな!」
「ちゃんと家にいていいよ。ただ村から出ていかないでほしい。ブレスホークを倒すまでだから」
バイセンは今にも殺しそうな目で睨む。イクシーはその視線を受けながら、困ったなといった顔で頭をかいて視線を横へ向けた。ガレとオーフは何も言わず彼をを見上げ、シャロは鉄壁の無表情だった。
数日後、イクシーたちの姿は村から離れた場所にあった。馬でも一日以上かかる距離だったが、ラボトレーラーの速度なら三時間ほどで到着できる。
「到着~」
時刻は深夜。空にある二つの月を見ても、イクシーはもう驚かない。人間は慣れるものだ。
イクシーはレイドアーマーの胸の中で、拡大されたブレスホークの本拠地を見る。明度調整された建物がくっきりと見えた。
それは古びているが頑丈そうな石造りの城だった。大きな門が正面にあり、木に鉄板を打ち付けた落とし扉で閉じられている。城は山の斜面に建てられていて、四角く高い城壁で囲まれていた。さらに城壁の上を警備の者が巡回していて、忍び込める場所は無さそうだ。
「さて、やるか」
イクシーはレイドアーマーの武器を収めたコンテナを開いた。
ラボトレーラーの中で、ガレとオーフ、そしてバイセンはホログラムの映像を見ていた。シャロはイクシーと一緒に外にいる。ホログラムは二つあり、レイドアーマーと上空から見るブレスホークの城が表示されていた。
「本当にできるのか?」
結局バイセンは、イクシーたちと共に行動していた。その理由は、彼が振る舞った食事と酒である。
最初にイクシーが大勢の子供たちに食べさせたのは、大きなピザだった。一枚で複数人へ配れるので、プリンターで出力する回数が少ないのが理由だった。これにも驚いたが、バイセンが言葉を失ったのはビールやワイン、ウィスキーなどの酒を飲んだときだった。これまで飲んだどんな酒よりも美味い。貴族ワインといえば超高級酒の代名詞だが、何度か飲んだそれよりも上だと感じた。
バイセンが酒の在庫を問い質すと、イクシーはまだ大量にあると答えた。これを手に入れることができれば、巨万の富を得ることができるだろう。そのためには、友好的に接したほうがいい。
そう決めたバイセンだが、やはりまだ不安だった。イクシーに説明されたが、彼には理解できたとは言いがたい。
『ターゲットをマークしました』
ディスプレイに緑色のマークが表示される。そこが攻撃目標だ。
「ターゲットロック」
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