08.達人

「じゃ、じゃあさ、伝書鳩で居場所知らせて迎えに来て貰えば?」

「伝書鳩などいるはずがないだろう。嘘だ」

「なんっで嘘ついたよ!!?」

「ッフ」

「ふじゃねぇぇぇええ!!」


 不敵な笑みかましてんじゃねーぞコラ!! ちょっと信じちゃったじゃねーか!

 ガルルルル、と噛み付こうとする俺に、母さんが声を掛けてくる。


「ヨシトシくん、おうちの住所は?」

「引っ越したばかりで覚えてません」

「あらぁ……じゃあ、電話番号……」

「覚えてません」

「困ったわねぇ。とりあえず、学校の先生に連絡を取ってみるわ。中に入って待っててくれる?」


 えーコイツ家に入れんのやだー。

 でも母さんは怒らせると宇宙一怖いから、仕方なくリビングダイニングに通す。

 母さんが電話をかけている間、ヨシトシは母さんの買ってきた買い物袋の中を覗いている。


「ふむ」

「いや、何がフムだよ」

「見えた!!」

「だから何が!?」


 ヨシトシはキラーンと光ったかと思うと、我が家の包丁を勝手に取り出した!

 そして勝手に冷蔵庫を開け、買い物袋の中の野菜を取り出すと!


「は!! ははははははあーーたぁああああっ!!」


 とんとんとんとんっ

 しゅしゅしゅしゅしゅ

 ぐつぐつぐつぐつ


 どどーーーーーーーーん!!


「ふう、完成だ」


 料理の達人か、てめえっ!!!!

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