ランダムで引いた単語で何か書く。

呼京

10月07日 「着信音」「綱渡り」

切り裂くような冷たい風。責め立てるように唸って身体を凍らせていく。時折の休符がやってくれば、ちゃぷりと足元から聞こえるゆりかごの音。

カン、カン。

頼りない支柱に支えられた足元が変拍子の楽譜を生み出す。


視界に広がるのは遠く遠く、向こう岸の無骨な煌めき。異世界の様な鉄の柱と組み合わさった細い管。夜を映した真っ暗な水面に反射してさざめきが陽炎のように揺らめいていた。


カン。

切先に立った時、強い風が吹き付けた。

そのざわめきを切り裂く甲高い着信音。

無機質な板のディスプレイを見て、悲しくなって、押す気もなかった緑のボタンに触れる。


「急にごめん。音(こえ)が聞きたくなった。」


奏でられた電子音は、私をこの世界に縛り付ける一番好きな音。

ああまた、これからも終わらない綱渡り。






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