第2話 清水、意外と嬉しそうじゃん。
翌日になり、小さめのイヤーカフを清水に渡す事になった。
「清水、これ昨日落としただろ。ごめんな、勝手に手引いちゃって。その時、多分落ちたんだと思う」
「……」
清水は
でも表情とは裏腹に、清水は俺に向かって両手を差し出してる。
「そっ、そんな顔するなよ。ごめんって、悪い事しちゃったな。はい、これ」
イヤーカフを渡した途端に、また表情が変わり、今度は極端に嬉しそうだ。
「なぁんだ、清水もそんな顔するのか。意外と嬉しそうじゃん」
俺が清水にニコリと笑いかけると、彼女はやっと口を開いてくれた。
「ありがとう……関くん」
「いやぁ良いんだよ。そのぐらい。落とし物届けるぐらいで魅力が上がれば良いんだけどなぁ〜」
清水は何か言いたげだ。
「そっ、そうじゃなくて……昨日は、助けてくれて、ありがとう。ホントはめちゃくちゃ、怖かったの!!」
彼女は半泣きしながら、俺に抱きついて来た……。
ちょっ、えぇ? 何これ、何この展開?! あれぇ、何か清水が急にこんな行動するなんて、えぇ?
俺が慌てふためいていると、クラスの野次馬が集まって来た。
「えっ、関。おまえ、清水さん泣かせた?」「おい、関ぃ〜。塩レナに塩対応されるからって、泣かせるのは違うぞー」
「勘太郎……その様子、塩レナと何かあったのか?」
高木を含め、男子どもが、誤解を招くようなことを言っている。
「違う、ちがーーーーう! 誤解だよ、誤解!」
「清水、ちょっといいか?」
「ふぇっ?」
俺は清水の手を引いて、教室のドアを開いた。廊下を高速で駆けて、階段を降りて中庭へと来た。
その時、千歳さんにこの姿を見られている事など、知る
「今のは、関くんと清水さん?」
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「はぁ、はぁ。これ以上、あの場に居たら、余計な誤解を招くからな。悪い、急に連れて来ちゃって」
「……」
さて、皆んなには何て言い訳をしようか。特に高木には、後で色々と詰められるんだろうなぁ……。清水が急にあんな行動取るなんて、こっちもびっくりだ。
「ねえ……勘太郎」
「どうしたー? って、顔真っ赤!」
「——こっ、これは。手ぇ握られたから……じゃなくて、急に走ったから、心拍数上がった」
「いいや。こっちこそ、ごめん——急に走らせて」
コイツが急に顔真っ赤になってるから、俺の方も心拍数上がって来てるんですけど!
「こちらこそ、教室ではごめん。私、声デカかったかな」
デカかったなぁ……。昔から空気が読めないところとかあったけど。でも、ここで注意とかしたら、気分を悪くさせちゃうかもな。
「いいや、全然大丈夫だ。モゴモゴ口動かすだけで、何言ってるか分かんない奴より、全然マシだろ。それに清水は物事ハッキリ言えるから、そういう所は尊敬してるし、好きだ」
「すっ、好きぃ!?」
「あぁ。俺なんて、友達とかに意見合わせるために、本心とは真逆のこと言ったりするんだ。だから、お前みたいな物事ハッキリ言える奴は、好きだな」
あれ……。
俺なんか変な事言ったか? 清水の顔がさっきよりも数段
「清水ちょっと、おデコ貸してみ」
「えっ?」
俺は清水のデコに手を当てて、熱を測った。うーーん、熱は無さそうだな。耳まで赤いぞ——リンゴみたいだな。
「かん、勘太郎! だめ、これ以上は……」
「清水が熱あるかなーって思って。顔、リンゴみたいになってんぞ。案外、可愛いところあるじゃん」
「……そっ、その。なん、何なんだったら、『RINE』交換。したいんだけど。勘太郎の連絡先、知りたいし」
「そんな事か。いいよーって……携帯、教室に忘れちゃったっぽい。昼休みでもいいか? そろそろ授業始まるし」
清水は首を2、3回縦に降って来た。オッケーと言うサインだろう。ともかく、清水に先に教室に向かってむらい、一旦トイレに向かった。
「ちょっと待て……清水は何で俺の『RINE』を聞いて来たんだ? 家の電話番号に登録があるから、連絡は出来るよな?」
まぁ……そんな細かいことは気にしないようにするか。
教室へ戻ると、男子の視線が痛かった。
「うっ、高木……これはどう言う状況だ」
「ふふふっ。どう言う状況……ではないぞ。関 勘太郎。塩対応の清水さんと一体全体、何があったのか、洗いざらい話してもらおうか。俺らを説得できる理由を、簡潔にな」
目がギラギラしている……男子ども、怖ぇぇぇ。
俺は事の経緯を全て話した。
「カラオケ前でそんな事があったのか。でも珍しいな、塩レナがあんな風に取り乱すなんて」
「いやいや、子供の頃は、泣き虫だったり、怒ったり、笑ったり、喜怒哀楽は凄かったぞ」
「ん? 子供の頃ってどう言う事?」
「俺、清水と幼馴染みだから。一応」
——その瞬間、高木があからさまに嫉妬の表情で俺を見て来た。
「羨ましすぎるだろ! なんで、あんな美少女がお前と幼馴染なんだよっ! あのスタイル、あの顔、なんて言ってもあの清らかな」
高木は自分の胸を持ち上げて、気味の悪い笑顔を見せて来た。
「お前なぁー。大体、幼馴染みってだけで、お互いに恋愛感情とか全くないぞ」
「くーーー。それでも、それでもぉ。羨ましいいいい。俺の彼女と来たら——パイがこう、キュッとしまってて、それはそれは平面的な形を取ってるからな」
こう見えて、俺の親友はクラスの一軍女子である、真白
「……高木。後ろ」
「はぁ?」
「リョー君? 何か言った———ふふふっ」
「みっ、みゆたん? 違うんだ、これは、その——ブハッ」
高木は案の定、半殺しにして干された。かく言う俺も、さっきの清水との出来事が頭の片隅にあり、授業に集中出来なかった。
何はともあれ、昼休みになり——清水の視線を感じる。
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