ソシャゲーのチュートリアルボスに転生したけど、原作知識でリアルイベント限定配布の最強URキャラをゲットして原作主人公を倒して原作シナリオから逸脱します!
第3話 最強キャラにくだらない命令を出したいだけの人生だった
第3話 最強キャラにくだらない命令を出したいだけの人生だった
朝食をとっている時だった。
「あたし、今日の任務が完了すれば、晴れて試用期間が終わって本物の正社員になれるの」
「へぇ。それは良かったね。じゃあ帰ったらお祝いだね」
「ありがとう!」
この世界において大カンパニーの正社員であることは一種の貴族みたいなもんだ。あれ?現実と変わんない気がするぞ。まあそれはいい。
「じゃあお金置いておくからね。ちゃんと食べるのよ」
「はーい。いってらっしゃい」
「行ってきまーす」
OLらしい服装で出勤するアマラウを見送って、俺も金を握りしめて外出する。最寄りの駅に向かい、借りているロッカーを開ける。中には報酬でもらった太刀とPDW系の銃、それと戦闘服とボディアーマーが入っている。俺はお昼代をギャンブルで無駄に使っていたわけではない。冒険用にちゃんと装備品を購入していたのだ。アマラウに見つかると泣かれるからここに隠しておいた。トイレで装備に着替えて電車に乗って郊外に向かう。昨日ニュースで見た例の遺跡に向かうためだ。郊外についてすぐに俺はレンタルの自転車を借りて、魔力で限界まで強化して草原をぶっ飛ばす。
「ひゃっはー!俺の前を走るんじゃねぇ!ひょおおおおおおおお!!!」
正直に言って病み上がりでテンションが高いのは認める。でも健康な体でこうやって速度出してぶっ飛ばすとすごく楽しい。死んでしまったのは悲しいが、異世界に来てこうやって生きている実感を積み重ねるのは幸福だと思える。そして郊外の遺跡の近くに辿り着いた。俺は近くの丘に伏せて双眼鏡で遺跡の方を観測する。遺跡の入り口らしき洞窟は天喰カンパニーの警備兵が固めている。周りには天喰カンパニーの研究チームのテントが並んでいる。
「さてどう侵入してもんかね。…ありゃ?あれれ?アマラウ?」
洞窟の前に六人ほどのミーレスらしきグループがいた。その中にアマラウがいた。それともう一人気になったのがいた。
「あら。原作キャラじゃーん」
白髪にところどころ赤毛のメッシュが入った派手な髪の毛の男がいた。名前は知っている。天喰カンパニー所属のミーレス、ケンドール・アッシュ。階級はフォックストロット。Fの意味だけど、雑魚のFではない。フォネティックコード持ちはミーレスの中でも精鋭中の精鋭の証である。原作では天喰カンパニーと敵対したときに出てくる敵キャラクターの一人だ。大小二刀流の剣術の使い手。
「参ったなぁ。ネームドキャラとかち合う可能性あるのか。しかもアマラウ付きで。隠密に徹するしかねぇな」
さてここで問題になるのはダンジョンへどうやって入るかだ。入り口は警備兵が見張っている。ゲームなら入り口はあそこだけだから強行突破一択だろう。だけど今や俺はゲームの制約に縛られる身ではない。いちいちボタンを押さなくても攻撃できるしターンを待って行動する必要もない。入り口がなければ作ればいい。俺は持ってきた簡易の音響探知機で地面の空洞を探す。ピーピーと音が鳴って空洞を見つけた。ようはダンジョンである地下都市と繋がっている空洞なわけだ。俺は持ってきた爆薬を地面にセットして爆発させる。すると地面に深い穴が開いた。中を覗き込むと、廃墟のビル群が見える。ダンジョンへの入り口を確保することに成功した。
「じゃあ行きますか!」
俺はその穴からダンジョンの中へと飛び降りる。
「うは!すげぇ!絶景絶景!」
飛び降りた先はドーム状になっている。俺の真下にはビルの群れが見える。そして魔法で重力を操作して、減速して道路の上に着地した。すぐにそのままビルの壁にくっつきPDWを構えて周囲を警戒する。
「全方位クリア。敵影なし」
ガードロボットとやらと戦ってみたい気持ちはあるのだが、そうするとアッシュたちミーレスの部隊に潜入がバレかねない。俺は出来る限り気配を消して廃墟の都市の中を進んでいく。アッシュ隊は隊長であるケンドール・アッシュの性格上真っすぐに堂々と敵を屠りながら進むだろう。だからおそらくは攻略には時間がかかるはず。逆に俺にはこのダンジョンの地形と目的地がはっきりと原作知識に残っている。アーキバスの居場所に先に辿り着くのはこの俺だ。ガードロボットの監視を躱しつつ目的地の『博物館』あとへと向かう。
今日の任務はあたしにとっては大抜擢だった。フォネティックコード持ちの指揮する小隊のメンバーに抜擢されて未解明領域の探索に参加できた。あたしのキャリアは明るい。そう確信した。だが。
「おい。くそあま。ダラダラ走るな。遅すぎる」
アッシュ隊長は私に高水準の動きを要求してくる。ついていくので精一杯。だけどあたしは意地でもついていく。大企業のミーレスになるのはあたしの小さいころからの夢だ。怪物を屠り人々を救い、戦争で活躍して人々に称賛され、まるで御伽噺の勇者のようで憧れた。
「くそあま。なんでお前は女なのにミーレスになった?」
戦闘後の休憩時間にアッシュ隊長が話しかけてきた。
「ミーレスはあたしの憧れだからです」
「はっ。憧れねぇ。どうせチヤホヤされたいなんていうくだらんことでも考えてるんだろう?違うか?」
チヤホヤされたい気持ちが全然ないとは言わないけど、一番はやっぱり勇者への憧れだった。ミーレスは現代の勇者。人類をかつて魔王から救ったという偉大なる存在。あたしはそれに憧れているだけ。
「違います。あたしは勇者みたいになりたい。ただそれだけです」
「あっ?てめぇ女風情が勇者様みたいになりたいだと?不遜なんだよ!!」
アッシュ隊長はあたしの腹を蹴ってきた。全力ではないだろう。だけど鈍い痛みが全身に響く。
「ぐぅう…」
あたしは必死に耐える。こういうしごきは軍事部門では日常茶飯事だ。一般兵からキャリアを積んでここまで来た。
「なよなよした体のくせに、女は事務でもやってればいいんだよ!上層部も何考えて女なんかをミーレスに入れるのかわかったもんじゃねぇな!ふん!」
アッシュ隊長は不機嫌だ。女が軍事部門にくるのを男たちは嫌がる。まあ逆に看護や医療系部門は女だらけで男が入って行き辛いそうだ。みんな言っている男女は違う生き物だからお互いの得意分野で分業して企業を盛り上げようと。その意見に反対はしない。でもあたしはたまたまミーレスに憧れてしまったのだ。たとえ厳しい道でも諦める気はない。人々を助ける尊い姿にあたしは憧れたんだから。
「ところでうわさで聞いたが、お前寮の部屋にフリーターの男を連れ込んでいるらしいな?なんでそんなことをする?」
ジョンのことだ。アッシュ隊長は純粋に不思議そうな顔をしていた。
「え。いや。その。放っておけなくて…。それになんでしょうか。可愛いんです」
「はぁ?意味がわからん。可愛いと言われるなんてその男は哀れだな。そもそもなんで一緒に住む?獣人どもの真似事か?」
聞いた話だが獣人たちは男女で一緒に生活して子供を作るそうだ。なぜそんなことをするのかよくわからないけど、そういうものらしい。
「いえべつにそういうつもりじゃないんですが、ただ一緒にいて楽しいし落ち着くし、それだけじゃなくて胸がドキドキして気持ちがいいんです」
アッシュ隊長やほかのメンバーたちはみんな首を傾げている。説明しているあたしだってなんでそうなるのかよくわからない。
「ふん。よう変人の戯れか。聞いて損した。つまらん。やっぱり女は駄目だな」
内心では性別を理由に蔑まれるのは当然いやだ。だけどそれへの反論はぐっと押しとどめる。とても寂しい。早くジョンに会いたい。彼はあたしに優しくしてくれる。
「さて。情報部によればそろそろ目的地のはずだ。古代に作られた超兵器を必ず回収する。行くぞ。休憩は終わりだ」
俺は目的地の博物館にやっとたどり着けた。まだアッシュ隊の姿は見えない。だけど近くで戦闘音が響いている。もうすぐ近くにいるのは間違いない。
「あいつら博物館に向かっているな。やっぱり狙いはアーキバスか。早く確保しないとまずいな」
だけど天喰カンパニーがアーキバスの確保に動いているのが少し解せない。ここは隠しダンジョンだし原作シナリオには直接関係しない場所のはずなのだ。ただ悪徳企業として原作では描かれていた天喰だからそういう情報を持っていても別に不思議ではないような気もする。まあ考えても仕方がない。とにかく俺が生き延びるためにもアーキバスは必ず確保する他ないのだ。俺は博物館に突入する。内部はドローンたちのお陰か埃一つない程に清潔な空間だった。俺はPDWを構えながら先を進む。時たまガードロボットと遭遇するが先に魔力強化した鉛玉をぶち込んで沈黙させていった。
「くそ。ここは広すぎるな」
この博物館すごく広いのだ。原作をプレイしたときもリアルイベント限定配布ダンジョンのくせに無駄に凝ったグラフィックと馬鹿みたいに広いダンジョンが多くのプレイヤーを阿鼻叫喚の地獄へと放り込んだ。出てくる敵も強いしボスキャラもシャレにならないほどヤバい。
「だけどボスキャラは回避できる。救済措置があったはずだ」
ぬるいゆとりキッズどものために運営のネモレンシス社はダンジョンボスを回避してアーキバスを手に入れる方法を用意してくれていた。それはダンジョン内で『アーキバス』ゆかりのアイテムを集めることだった。展示されている品物の中にそれはある。
「まずは傘」
赤い和風の傘を俺は回収した。
「次に黒色火薬」
展示物の中に黒色火薬の入った瓶があったのでそれを回収する。
「そして
展示物の中に銃の進化の変遷を示す展示物があった。その中から俺は火縄銃を手に取って回収した。アーキバス。それは火縄銃を意味するドイツ語である。俺は回収した三つのアイテムを持って奥の部屋に向かう。途中ボスのいる大広間を発見したが怖いのでスルーする。そして小さな部屋に辿り着く。そこにはあからさまに回収した奴をはめ込むようなプレートが安置してあった。俺は傘と黒色火薬の瓶と火縄銃をプレートの溝にはめ込む。すると部屋がグラグラと揺れだして、プレートが床に飲み込まれて。それと同時に階段が現れる。
「原作知識さいこー」
俺は階段を下りる。そして小さな部屋に辿り着いた。そこにはガンラックがあり6つの銃が置かれていた。そしてガンラックの目の前にプレートがあり、こう書かれていた。
『アーキバス。それはかつて世界を征した暴威の化身のもっとも古き姿なり』
要はガンラックから火縄銃を選びなさいってこと。プレイ動画で見たが、火縄銃以外を選ぶと博物館の外へ強制退出させられて最初からやり直しである。俺は迷わず火縄銃を選ぶ。すでに火皿には火薬が入っていた。あとは縄に火をつけるだけでいい。俺はライターで縄に火をつける。そして目の前のガンラックめがけて引き金を引いた。ぱぁあんと大きな音を響かせてガンラックは木っ端微塵になった。
『ジブンを
その声と共に俺の持つ火縄銃が光輝き始める。その光は俺の目の前で人の形になって眩しく輝く。そして目の前に一人の少女が現れる。ピンク色の髪の毛に紫色の瞳。まだあどけない顔は人形のように可愛らしくそしてとても美しい。頭には黒い制帽。身に纏うのは大礼服と呼ばれる黒い詰襟とタイトな黒のミニスカート。腰には金の糸で煌びやかな文様が縫われた腰布を巻いている。正面から見るとミニスカートがわかるが後ろからだとロングスカートに見えるだろう。実にソシャゲ映えしそうなデザインの服装だ。
「そう俺が君を
「ジョン・ドゥ様ですね。センサー起動。走査します。完了。確かにあなた様はホモ・サピエンスであり、ジブンとの間に量子情報リンクが張られていることを確認されました。なるほどジブンの封印を解いてくださったのはあなた様なのですね」
アーキバスは最敬礼を俺に向かってする。
「第一世代戦略級ガイノイドソルジャー・コードネーム『アーキバス』!あなた様をコマンダーとお慕い申し上げます!何なりとご命令を!」
びしっと敬礼をする姿はお世辞にも歴戦の戦士って感じではない。身長の低さと相まってなんか背伸びしている子供に見えなくもない。だけどおっぱいはすごくデカい。敬礼したときぷるるんって揺れた。
「あの…じっと見つめられると…恥ずかしいです…」
敬礼をしながらアーキバスは頬を赤く染める。
「そろそろご命令をいただけないでしょうか?」
「うん?そうだねぇ…その場でジャンプしてよ」
アーキバスは俺のめいれいを忠実に実行した。ジャンプして着地するまでの間、おっぱいがぷるるるるるるーんって揺れてた。俺はその場で感無量となりうんうんと頷く。
「他に命令はございませんか!?」
俺から命令されたのが嬉しいのかアーキバスがお目目をキラキラさせている。可愛い。おっぱい触らせてって頼んだら触らせてくれそう。いやそんな命令はしないけどね。
「今のところはない。とりあえず外に出る」
「わかりました!護衛ですねコマンダー!お任せください!Ja!!」
別に命令ではないのだけど、というかこいつ俺の言葉をいちいち命令と解釈しようとする癖がある。原作通りだ。こうして命令待ちわんこ系女子アーキバスが仲間になったのだった。
****作者のひとり言****
だんだんとこの世界の歪さが見えてきたと思います。
ちなみにアーキバスさんは身長149cmです。でもHカップ位あります。
あとちなみにですが、この世界のヒューマンの公用語は日本語です。
だって異世界語の設定考えるのめんどくない?
個人的にはファンタジーパンクな世界観に日本語の看板とかが混ざってるとエモく感じて好きです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます