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カオさん

第1章:少女は涙を流さない

第1話:序

【誰の言葉だったか.......

"仲間の死は、己に力と誇りを与え、死んでいった仲間の死を悲しむのではなく、称えるべきだ"と........】



人の教えが必ず正しいとは限らない。

だからこの言葉が、今の俺に力と誇りを与えるのか......正直怪しいところだ。


仲間の死は今回が初めてじゃあない。

過去に戻っても、結局仲間が死ぬ事は変わらない。


あの頃俺が出来たことは、あの二人が.......

悲しみに潰されてしまわないようにすることだったんだろう........



【やるべき事を.....きちんとやるべきだった....】


───────────


《2029年|東京都夏南区かなみく南町みなみちょう某所》



バグォォォオオン!!!

と突然の爆発音が響き渡る。


それは私が一度店から出て電話してる瞬間の事だった。

鳴霾のいる店が爆発音と共にどデカい硝煙しょうえんが空へ登る。


私はそんな惨状を見て持っていたスマホが手から滑り落ちた。

私達が何故そんな目にあってるのか....まずは私と鳴霾という少女それぞれの生い立ちから説明しなきゃいけないね。


─────────


まずは私、九条くじょう 英里奈えりな


出身は東京都東区ひがしく山谷やまたにのスラムで生まれた。

母は居なく、犯罪で生計を立てる父とボロい家で二人暮らしだった。


犯罪は良くないけどそうしてでも私にご飯を食べさせてくれる父が大好きだった。

今でも私は父が好きだし、死んでしまったことが未だに悔やまれる。


そう....私の父は殺された。私の目の前で。


どこの誰かも分からない連中に私達は拉致され、父は拷問の末殺され....私は当時13歳ながらにして独り身となった。


私の気が晴れる時は無く、ただただ父を殺したヤツらへの復讐に燃えた。

自分から危ない世界へと足を踏み入れ、経験を積み銃の技術や戦いの経験を積んだ。


そうして裏社会で生きている中である日、夜の浅草を歩いてると...頭にこびりついて離れないあの顔を見つけた。

私の父を殺したあの男の顔.....忘れもしない私を殺した男...!


夜の浅草、雷門前にいたその男は私の方を見ると逃げようとする素振りを見せる。


私は男を逃すまいと、餌に飛かかるハイエナの様に男へ飛び乗り感情のままに顔を殴り続ける。

男は抵抗するけど両手を足で押さえつけて殴り続ける。


しかし怒りで前が見えてなかったのか、男の姿は無く私は無駄に地面を殴り続けていただけだった。

そのせいで拳の骨が折れて全治2ヶ月の怪我を負ってしまった。


まぁ....結局人違いだったけどね。


しかしいいウォーミングアップになったし、私は更に男への恨みが強くなった。

そして私は思った、この殺しの技術を活かせるところに行って金を稼げないか?と。


やはり子と親は似るもんなんだ。

犯罪と身近に育ってると、その方が良いのかもしれないって思っちゃうもんなのかも。


そうして東京でも屈指の殺人組織に入って、今も尚依頼を受けてはターゲットを殺して金を稼いでる。


───────


続いては鳴霾なきめ


出身地とか、生い立ちとかは本人から聞いてない。

でも名前を聞いて、日本っぽい名前とは考えにくい。恐らく別の国に生まれて幼くして日本へやってきたんだと思う。


でも唯一本人から聞いた事は、東京都の山原村で育ってすぐ新宿に引っ越したらしい。

それ以外は本人しか知らない。


これで多少なり私達の事は分かったと思う。


でもなんで私のいた店が鳴霾諸共爆発したのか、まだそこが分からないよね。

そんな目に合ってるのにはこういう理由があるんだ───


────────


《2時間前|東京都某所|ビル27階組織本部》



ボス「エリー、新人を迎えに行ってこい。」



エリーとは私、英里奈の略称。

愛着があるかどうかはボスにしか分からないけど、そう呼ぶのはボスだけ。



『......役に立ちますよね?これで何人目ですか?』


「15人目だ。それに新人が弱いかどうかはコンビネーション次第だ。

夏南のファミレスを待ち合わせ先にしておいた。エリーも早く向かってやれ。」



期待を1ミリもせずに、私は夏南へ最寄りの駅から向かった。

もう分かったかもだけど、鳴霾とは今日初めて知ったし初めて顔を合わせた。


顔合わせするまでまさか鳴霾があんなんだとは思わなかったけどね。


1時間弱で南駅に着いて、そっから何分か歩いたとこでファミレスに着いた。

そしてボスから言われた番号の席に行くと、そこには"子供"が居た。


私は予想外な展開に思わず言葉を失った。

そのまま何も言わず私は椅子に座る。



『......まさか君が、とかないよね...?連れ子とかだよね???名前は?』


〚.....鳴霾。貴女は誰?〛



信じられない.....今回の新人は類を見ない事例だ。

まさか子供がホントにこの世界にやってくるだなんて......多様性がここまで来たの...?



『っ.....OK分かった。取り敢えず何か食べる?

ここに来るまで何も食べてないからね...お腹減っちゃったよ。』


〚そうだね。""は何食べるの?〛


『えっと───っ...?ちょっと待って......今さ....言ったよね...?私の名前......』



メニュー表をペラペラと捲る手が止まり、鳴霾の顔を見る。

鳴霾は私を見てニヤニヤした表情を向ける。

奇妙だ.......まさかこんなちっぽけな少女が......

私と同じ...?



『鳴霾...って言ったよね?貴女の事を知りたい。

少し互いの話をしよう?』


〚〜♪〛


────────


《2時間後》



『───っあ、ごめん電話出てくる。』


〚うん、全然待ってる。〛



数時間話して、互いの事もほどほどに分かり合えた。

話が盛り上がってきた時、ボスから掛かってきた電話に出る為一度店を出て少し離れてから電話に出た。



『もしもし、ボスの言う新人とは合流出来ました。』


「そうか。では早々にこちらへ戻ってこい。

そこに居続けるのは良い気がしない。」


『.....それは何故です?』


「実に嫌な予感がする.......っ!!エリー!!

鳴霾を連れてすぐにそこから離れろ───!!!」



ここでようやく戻ってきたね。


ボスがそう言いかけたその瞬間、突然の爆発音と共に爆風で少し後方へと吹っ飛ばされた。

そして爆破されたファミレスから上がる狼煙を見て、私の脳裏へ真っ先によぎったのは鳴霾の事だった。



「エリー!!?エリー!?大丈夫か!?」


『鳴霾が.....鳴霾のいるファミレスが..........

鳴霾───!!!』



スマホを地面に落として、燃え上がるファミレスの中へ飛び込む。



「エリー!!落ち着け!!応答をしろ───!!!」


『鳴霾!?どこ!?鳴霾ーーー!!』



私はパニックになりながら、燃え盛るファミレスの残骸に落ちる瓦礫を退かしながら鳴霾を探す。

きっと瓦礫の下敷きになってるに違いない....そう思う一心で瓦礫を手でどかし続ける。



〚英里奈...!英里奈...!〛


『声がする...!どこ!?何処にいるの!?』



瓦礫に火が燃え移り、辺りはもう火の海。

口を押えながら燃え盛る海の中で鳴霾を探す。



『何処に...!?何処にいるの!?

(あぁ、また新人が死んでしまう......)』


〚英里奈...!こっち...!こっち...!!〛



そんな事を思いながらも、鳴霾の声が聞こえることに希望を感じ何とか気持ちを持ち堪える。


その時、鳴霾の声がより大きく聞こえる。



〚英里奈ぁ!!ここだって!!!〛



そう聞こえ後ろの方から声がして慌てて後ろを振り返ると───



『えっ.....鳴霾...?!なんで店の外に...?

爆発に巻き込まれたんじゃなかったの...?!』



急いで店から出て、鳴霾の安否に安堵した。

でもそれと一緒に疑問の声が漏れ出た。



『えなんで無事なの??』


〚なんでって...貴女気づかなかったの?

貴女が電話すると言って店を出た後、私すぐにその後に着いてったよ?〛


『嘘....電話してて気づかなかった......』


〚それに、爆発元は私達が座っていたテーブルの裏。

カチカチと秒針の動く音が聞こえてた、話に盛り上がってたみたいで聞こえてなかったようだけど........それに気付いた時にちょうど貴女が外へ出たから、それに続いてって感じで...ね。〛



不思議だ。

私は全く気が付かなかった。時限爆弾の音も全く気づかなかった。


完全に油断してた.....話に気を取られていたせいで.......

幸い、私も鳴霾もかすり傷一つなかったから良かったものの.....いつこんな事が起こるか分かんないのに....私ってば........


とはいえ結果オーライだった。

この新入りの鳴霾、かなり興味深い存在だ。


これから2人でする仕事が楽しみだ。



『鳴霾...貴女、ホントに7歳?』


〚うん、貴女よりずっと若いよ〛

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