死後の世界。「土」の裏側。

裏へ



直流すぐる「んぁ...?ここは...どこだ...」

???「お目覚めですか?」

直流「うぉっっ!?」


すぐそばには、メイドの格好をした黒髪の女の子が立っていた。


直流「っなんだ君は!?というかそもそもここはどこだ!?」

???「そうですね... まず、私に名はありません。説明係とでもお呼びください。 そして、ここは簡潔に言えば死後の世界です。あなたは交通事故に遭い死亡なされました。」

直流「死後の...世界...?」


メイド、もとい説明係は事務的に対応する。

その段階で直流も亡くなる直前の記憶を思い出し、自分が亡くなったと自覚した。


直流「そうか... 俺は...死んだのか...」

???「はい。残念ながら。」

そこで直流は一つ大事なことを思い出す。


直流「っ!そうだ!翠は!?翠はどうなったんだ!?」

取り乱した様子でメイドに尋ねる。


???「お隣に乗ってらした方でしたら、あなた様と同時に死亡が確認されています。」


直流「っ... そんな...」


直流は青ざめた。確かに分かっていた。自分が死亡している段階で、翠も亡くなっている可能性は高いと。

だがしかし、諦められなかった。藁にもすがる思いでメイドに尋ねたのだ。


説明係「気落ちしているところ申し訳ありませんが、説明しなければならないことがありますので説明をしてもよろしいでしょうか? ここの、死後の世界、そして、この魂の塔について。」

事務的に、そして冷徹に彼女は話を進めようとする。


だがしかし、状況は辛うじて理解できたものの、まだそのショックから立ち直れていない状態で話を進められそうになって直流も苛立ちを覚えた。


直流「そんなこと言われても!いきなり死んで、こんなところに連れてこられて、訳わかんないよ!?」


説明係「説明を聞いてこの世界の前提条件を知ってくだされば翠様と出会えるかもしれませんが。」


その言葉に直流は心を奪われる。

直流「本当か!?」


説明係「ええ。無数の人間がいるので容易ではありませんが。」


簡単ではないという条件付きではあるが、肯定の返事が帰った為、直流も多少なりとも落ち着きを取り戻した。

直流「...分かった。話を聞くよ。」


説明係「ありがとうございます。まず、あなたが生まれ育った世界は、魂の塔と呼ばれる神が作った塔を構成しています。」


たしかにこんな死後の世界なんてものがあれば、多少難解なものやことも出てくるとは思っていたが、唐突に神だの魂の塔など言われても彼にはピンとこない。


直流「...??? 神?魂の塔?それ本当?」


説明係「現状は証明するためのものがございませんので... 申し訳ありませんが、真実であるとしか申し上げることはできません。」


直流(少なくとも、こんな真っ白の空間を用意できる時点で並の技術力ではないだろうし、とりあえずは本当だと信じて話を聞くしかないか...)


説明係「説明を続けても?」

直流「あっ、あぁ。」


説明係「はい。それでは。その神の塔の最下層は魂の塔の魂達がすべて生まれる世界であり、通称して『土』と呼ばれています。

そして、魂の塔では各階層で天寿を全うした後、各階層のルールに従って、『仕事』をしていただき、それを終えた方から上の階層に進んでいただきます。」


ずいぶんとまぁまどろっこしいシステムらしい。

直流「なるほど...とりあえずはわかりました。ただ、そうするとここで何か仕事をする必要があるんだよな?それは何をするんだ?」


???「この各階層の死後の世界は通称『裏』と言われております。そのため、ここは『土』の『裏』なわけですが、ここでは土で犯した罪の重さで仕事の量が変わります。」


直流はキョトンとした。罪といっても彼にはそのようなことをしてきたつもりはなかったからだ。

直流「へ?じゃあ俺たちみたいな普通に暮らしてきた人間はすぐに上の世界へ行けるってことか?」

至極当然の疑問が口を吐いて出た。


しかし、説明係は否定の言葉を口にした。

説明係「いえ、土の裏において仕事として加算される罪は人間として生きている以上避けられない罪、『原罪』についても含まれる為、どのような人間であったとしても、ここでの仕事は避けられません。」


直流「原罪...」

彼にも朧げながら知識としてはあった。キリスト教における教えとしてある罪であり、どうやらこの魂の塔とやらではそれが採用されているらしい。


説明係「そして、その仕事について、様々な仕事がありますので、その難易度などを分かりやすくするために『土』の『裏』では、カルマという単位を用いています。

そのカルマは、仕事をする度に減っていき、この値が0になった段階で、次の世界へと進む権利を得られます。」


直流は少し思案して、説明係に尋ねた。

直流「...ゲームのクエストみたいに受注してこなすイメージで良いのか?」


説明係「はい。それで間違いないかと。」


大体のイメージを掴むことはできた。

直流「仕事はどの程度で終わるんだ?」


説明係「原罪を除く罪を犯していない方は、生前生きていた年数に1000カルマを掛けた分仕事が御座います。50年以上生きていた場合は半分に免除されますが。

そして、普通に仕事をこなしていれば、月に1000カルマ程度は減らすことが可能です。」


直流「となると、俺は24だったから... 24000カルマくらいで、2年4ヶ月仕事をするってことか...」


説明係「はい。そうなります。あなたのカルマは24500カルマです。現段階でこちらから説明できることとしては以上です。なにか質問はございますか?」


聞くべきことが一つだけあった。

直流「...人探しのための方法は?」


説明係「基本的にあらゆるなどが施設がそろっております。そちらでご自身でお探しください。それでは、裏の入り口に転送いたします。幸運を。Good Luck.」


白い光に包まれる...

気がついた時には、目の前に死後の世界だとは信じられないほど、活気のある街が広がっていた。





あとがき

というわけで、本編がはじまりました。

はじめましての方ははじめまして。ここから直流の物語が始まります。

この世界の真相はなんなのか。そして、直流は翠と再会することはできるのか。

ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

自分は学生なので、そこまで高頻度の投稿はできませんが、週一回の投稿を目標に頑張っていきます。

それでは、以後お見知り置きを。

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