5日目午後(食料調達戦extra)
さて、現状を整理しよう。まず相手は前衛にカエル型の魔物クラッシュフロッグと猪型の魔物ルプボアが1体ずつ。そして、その2体に隠れるようにテイクバードが構えている。現状、クラッシュフロッグとルプボアの攻撃は物理的のみ確認していて、テイクバードは未知数。ただし、明らかに違う種族を従えていることと、抜き出たレベルから最も警戒するべき相手であることはあきらか。
対する護とフィリアは傷ついたガーディアンドックを庇うように立ちふさがっている。間違えてはいけないのが、守ろうとしているガーディアンドックは決して仲間ではないことだ。今護たちは一方的にガーディアンドックの見方をしているだけで、ガーディアンドックにとっては攻撃対象でない、ただの第三戦力である。積極的な戦闘への干渉は期待できない。
こちらの勝利条件は、相手の殲滅。
敗北条件は守るべきものを失うこと。
「クエエエェーーー!!」
テイクバード叫びが開戦を知らせる。そこに込められた怒りに従うようにルプボアとクラッシュフロッグが行動を開始。対する護は【ガーデナー】を発動。周囲の植物を支配下に置いていく。
「フィリア、守りは任せられる?」
「任せてください。」
「頼んだ。」
護はそれだけ確認すると素早く前に出る。狙いは最も近くにいたクラッシュフロッグ。対する、クラッシュフロッグは飛び上がろうと後方の足に力を入れる。
「させるかよ!」
準備を終えていた【ガーデナー】を起動。周辺の植物を操作し、クラッシュフロッグの左側の足を巻き取る。巻きつけた植物は飛び上がった際に切れるが、想定外の抵抗によりクラッシュフロッグの跳躍は中途半端なものに。そんな無防備なクラッシュフロッグの腹部に護の回し蹴りが決まる。
横転するクラッシュフロック。その横を我関せずとルプボアが走り抜ける。その先にいるのは護。
「クワッ!クワッ!」
その時、これまでとは違うテイクバード鳴き声が響いた。そしてなぜかルプボアが加速する。
(まずい!)
護は余りにも想定外の動きに内心慌てる。受けるも守るもぎりぎりであった状況からのこれだ。いくらレベルが高くても一撃を受けることは確定だろう。そう思われた時、護の前に水球が浮かぶ。それは、突撃するルプボアの速度を僅かに削り取る。しかし、それでもまだ回避に時間が足りない。
パリーン
音を立てて護を守っていた護りが砕ける。しかし、2つの護りで得た時間は護に最低限の受け身を時間となる。
「マモル様!大丈夫ですか!?」
「フィリアのお陰でね。次もお願い。」
「感謝はうれしいですが次の機会はお断りですよ!毎回成功するとは限らないんですかね!?」
そうやって軽口をたたく間に、体制を整えたルプボアが再度突進を開始する。
「猪相手なら、これでどうだ?」
護は【ガーデナー】を再度使用し、周囲の植物を束ね、結ぶ。走るものの足を取って転倒させるための子供でも作れるブービートラップ。しかし、不自然な加速をするルプボアに対しては効果的であった。
「ぶも!?」
ルプボアは足を取られて転倒する。面白いことに転倒しながらも加速は止まらない。その加速がガーディアンドックへの攻撃と判断されて正面に光の壁が作られる。既に自身でもコントロールできない突進は止まらず不安定な体制で光の壁とルプボアが激突する。その隙に護の拳が追撃する。
「クワー!クワー!」
また、テイクバード聞きなれない鳴き声が響く。しかし、構わず護は拳を振り切る。
(硬い!だけど!)
明らかに、これまでのルプボアと比べて硬い表面。まあ、テイクバードが何かしたのは明らかである。しかし、再三の迎撃で限界を超えたルプボアには焼け石に水だったのか、あっけなく光へと変わる。
「クワ!?キーキー!」
慌てたテイクバードの目の前に現れたのは黒い球体。その中を確認するようにテイクバードは顔を突っ込む。きっと戦闘に必要な行動なのだろうが、その隙は余りにも大きい。
「戦闘中によそ見とは余裕だな?」
護がその隙をついて一気に接近しようとする。しかし、クラッシュフロッグが舌を伸ばし護のその行動を妨害する。
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護
LV 5
HP 60/82
MP 49/81
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僅かながらHP が減少したことを確認したところで、自身の腕に残った不快な感触に気が付く。
「っ!」
腕を焼くような痛み。見れば、舌をはじいた箇所に付着した粘液が護の肌を溶かしている。護は慌てて振り払おうとするも粘つき、糸引く粘液はなかなか離れない。その隙に口の中に引き戻された舌が再度、護を狙う。
(これは優先度変更。先にカエルを潰す)
自身だけなら問題ないが、後方に向かった時のことを考えて、護はクラッシュフロッグへの対応を優先するのであった。
護とクラッシュフロッグが攻防を繰り返して少し。テイクバードが隠れていたその顔を外に出す。その嘴の端には魚の尻尾。それを丸呑みしたテイクバードは大きく嘴を開き、フィリアたちへと向けられる。
「フィリア!」
「大丈夫です!」
咄嗟にテイクバードへ対応しようとする護へフィリアが叫ぶ。
「…わかった。いや、任せた!」」
テイクバードの口から空気の塊がフィリアたちへと放たれる。フィリアは魔法を準備しながら、インベントリから幾何学模様の書かれた一枚の紙を取り出す。それは、フィリアが自身の【魔方陣】のスキルで作成した切り札。
魔法陣には大きく分けて2種類存在する。一つは魔力を通しやすいもので描かれた、設定された魔法が発動するタイプ。そしてもう一つが魔力を込めた液体で描かれた、魔法を強化するタイプ。フィリアが取り出したのは後者。魔方陣へと流し込まれた魔法が記載されたルールに従い増幅される。
「行きます!全力全開です!」
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フィリア
LV 3
HP 10/35
MP 0/44
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軽い口調とは対極的に、残ったMPを使った全力の魔法が放たれる。直径1mはあろう激流は、フィリアの意思に従い、空中を舞う。
水流と空気の塊が衝突する。
さて、これまで水魔法は簡単に突破されていたが、これは水中内で加速する方法があったからである。本来、液体の持つ衝撃吸収能力はかなり大きい。つまりは
「クワ!?クワークワクワ!」
激流の先頭が形を変え空気の塊を閉じ込める
迫る魔法にテイクバードは慌てて己を守るように指示し、クラッシュフロッグはただそれに指示に従う。
「クワー!クワー!」
割り込んだクラッシュフロッグとフィリアの激流が衝突する。十分に加速したフィリアの魔法はクラッシュフロッグもろとも、テイクバードを飲み込んだ。そして閉じ込められていた空気が破裂する。
周囲に轟音と衝撃波が広がる。発生源を見れば、みるも無惨に潰されたクラッシュフロッグが光となって消え始めている。何とか生き残ったテイクバードもその翼を大きく損傷していた。
「クワーー!!」
己を奮い立たせるようにテイクバードが鳴き叫ぶもと、っとも近くにいた護に向かってか駆け出す。そうして、後1歩程度の距離となったところで、その長い尻尾振り回し、周囲を薙ぎ払う。
「まさしく指揮官タイプ。前線は苦手だな?」
しかし、その攻撃は飛び上がった護には届かない。いな、接近戦で相手から視線をそらした時点で、その攻撃が届くはずがないのだ。護は、空中で器用に体制を変えると自ら死地へと飛び込んだテイクバードの後頭部目掛けて踵落としを決める。それは消して高くないテイクバード耐久を削り、光へと変えるのだった。
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リザルト
ルプボアLv3× 1
クラッシュフロッグLv5× 1
テイクバードLv8× 1
ドロップ
ルプボアの肉× 1
ルプボアの巻き角× 1
クラッシュフロッグの後ろ足×1
消化液×1
テイクバードの羽×5
テイクバードの嘴×1
魔石(ルプボア)Lv3×1
魔石(クラッシュフロッグ)Lv5×1
魔石(テイクバード)Lv8×1
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