二羽の鳥 製作三日目 その1
本日、定休日。
そういう訳で、朝はのんびりモード。
今日は、ごはん、納豆と味海苔。後はわかめの味噌汁。
で、朝食食べた後は、昨日のパテの乾き具合を確認。
ふむふむ。いい感じじゃないか。
というわけで、少しヤスリで削っておく。
最初は粗目から始まり段々と細目になっていくのはこういう作業共通。
その後は、ざっとサーフェイサーを吹きかける。
サーフェイサーは、塗装における下塗り材の一つで、表面の小さいキズや凸凹を埋めたり、色ムラなく仕上げる際に重宝する下塗り剤。
これで問題なければ、塗装に進むんだけど、一発でいけることはまずないかなぁ。
どうしても見落としやパテの凹みとかあるからなぁ。
で、今回はどうかと言うと……。
うーん……。まだ目立つのが少しあるなぁ……。
仕方ないので解きパテで見つけた隙間や穴を埋めていく。
解きパテとはパテをシンナーで薄めたもので、パテで埋めるのはどうかなという程度の小さな傷とか穴を埋める際に使用する。
なお、解きパテなのでパテよりも乾燥時間は早いし、ドライヤーを使ってさらに時間短縮。
そしてヤスリ掛けして、再度サーフェイサー。
うんうん。今度は良さそうだ。で時間を見るともう11時を回っていた。
いかん、いかん。そろそろ準備しないと。
昨日の夜作っておいた買い物リストとやらなきゃいけない事を書いた紙を財布に入れる。
大きめのエコバックも用意。
なんせ、一週間分の食糧だし、下手して船が出せないと、それより長くなる可能性もあるからなぁ。
一階に降りるとドアを開けて港に出る。
もちろん、きちんと戸締りはする。
なんせ、セコムとかが来れないからなぁ。自分の身は自分で守ろうという訳だ。
愛犬のベーとクーが駆け寄ってくる。
よしよし。
番犬代わりに駆っている犬で、雑種のメスだ。
今日も元気に尻尾振っている。
まぁ、小さい島だし、ちょっとした砂浜もあるので放し飼い。
そう言えば、こいつらのご飯もそろそろ買っておくかな。
そんな事を思いつつ、船に乗り込む。
小型の船外機付きの子船だ。
それでも、4~5人は乗れるし、そこそこ荷物も載せれる。
なお、島を受け取る際に、小型船舶の資格はもちろんとっている。
で、エンジンをかけて島から出発。
愛犬たちが嬉しそうに吠えている。
買い出しの時は返ってくると彼女らにもカリカリのドックフード以外にもご馳走が出るからだ。
ご馳走と言っても、手作りの犬ご飯なんだけどね。
どうもそれがわかっているっぽい。
ふふふ。かわいいやつめ。
見送りを受けつつ船を進める。
今日は、波が穏やかで揺れが少ない。
でも、それでも船酔いする人はするらしい。
もっとも、社会人になる前は、祖父の所に結構遊びに行ったりして船に乗る機会も多かったから、船酔いは強い方だと思う。
それに運転している奴が酔うというのは余りにも危ないしなぁ。
そんな事を思いつつ、海の青さと空の蒼さ、それに潮風を楽しみつつK市のもっとも最寄りの港に向かう。
そこに到着して決められた場所に船を止めていると声をかけられた。
「坊ちゃん、いらっしゃいましたね」
そう言って笑っているのは、黒く焼けた瘦せている感じの六十代の男性だ。
摩周両儀さん。
祖父の代からこっち側の港側の家を管理してくれている管理人さんで、家だけでなく、車の管理やネットで頼んだ通販の荷物を預かっていたりしてくれる。
「ああ、両儀さん。どうも」
船を固定し、ぺこりと頭を下げる。
給金は祖父が毎月決まった金額ずつ振り込まれるようにしているおかげで、自分からは何も出していないのでなんか申し訳ない気持ちになってしまう。
それに、そんな状況なら、仕事の手を抜いたりとかしそうだが、この人は実にまじめにやってくれている。
なんでも、祖父に恩があり、その恩返しをしているのだと言って笑った顔が印象的だった。
「では、これから買い出しですね」
「ええ。買い出しと昼食を済ませてきます」
そう。偶には外食したくなるのである。
だから、買い出しの日の昼は外食と決めているのだ。
今日は、牛丼でも食べかなぁ。
そんな事を思っていると、管理している車の鍵を渡しつつ摩周さんが言う。
「じゃあ、荷物はどうします?」
荷物とは、ネットで購入した荷物の事で、結構な段ボールの数だ。
中身のチェックもしたいし、向こうで出るゴミも減らしたいので、こっちでまとめる事にする。
勿論、少ない時は、そのまま船に積むけどね。
「ええ。いつも通りに車庫に出しておいてください。まとめるので」
「わかりました。それとゴミは?」
ゴミとは、向こうの生活で出たゴミだ。
生ゴミなら、まだ海に投棄して魚の餌とか言う手もあるし、海岸に埋めるということも出来るが、それ以外は、こうやってこっちに持ってきて対応するしかない。
特に、ペットボトルや缶あたりはどうしても増えてしまう傾向にある。
「いつも通り選別してまとめて船に載せてます」
「わかりました。こっちでやっておきますね」
「すみません」
以前、自分で陸揚げして運ぼうとしたら、自分の仕事を取らないでくれと笑って言われて止められたのだ。
それ以降は、選別だけしてお任せしている。
時間は、気が付くと12時過ぎだ。
「では行ってきます」
僕は愛車の軽自動車に乗ると声をかける。
「ああ、いってらっしゃい。事故に気負付けて」
そう声をかけると、軽トラックに乗って船の方に摩周さんは向かう。
さて、こっちも買い出し行くか。
でもその前に昼飯だ。昼飯。
腹減ったなぁ……。
ゆっくりとアクセルを踏むと、予定していた牛丼屋にまずは向かうためにハンドルを切るのであった。
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