第58話 【過去】戦いのおわり


街で街娘に化けた四天王の一人『ダークアイのモーガン』と出会った。


この時に、平城が片目の視力を失った。


これも、理人が居なかったせいだ。


盗賊というジョブを持つ者がいれば、魔族が近づいて来た事も感知でき『失明』のスキルを使われる前に対処が出来た。


そして、場合によっては『失明』のジョブすら奪う事が出来た。


これも、全部理人を殺してしまったからだ。


その後、塔子が、残酷な戦い方を提案してきたが……それを実行する事は出来なかった。


途方に暮れた俺達は、街の教会に相談し、王族と教皇様に話を繋いで貰った。


その結果、この世界の戦いはルールがあるから局地戦で済んでいる。


そういう事実を知った。


勿論、守られているかどうかは解らない。


だが、そういう小さなルールが守られているから、最低限の礼儀として戦闘要員以外は極力殺さない。


など、暗黙のうちに平和が守られているそうだ。



そう言えばカルトキングは名乗りを上げていたし、ダークアイのモーガンは不意打ちを仕掛けてきたが、それでも『私の名はモーガン』そう言ってからスキルを使ってきた。


これは数百年前から、行われている儀礼のような物らしい。


これを破ると……


『魔族領に接している村や街は皆殺しにされる』可能性があり、人間側の方が不利になるらしい。


これではもう、俺達にはどうにも出来ない。


だが、それでも旅を続けるしかなかった。


途中、俺達五人じゃ無理だと思ったのか、他の同級生と合流し、総勢30名以上で魔王軍に戦いを挑んだ。


騎士団や他の人間が手を貸さなかったのには、また暗黙のルールがあり、こちらがこれ以上の人数を繰り出せば、魔族側も幹部が率いる大隊が出てくる可能性があるからだそうだ。


同級生が1人、また1人死んで、残りの人数が10名を切った所でようやく魔王城にたどり着いた。


そして、絶望の中魔王に戦いを挑み……勝利を収める事ができた。


その代償が……


俺こと勇者大樹は、左目を失い、炎で焼かれ右腕が無い。


剣聖大河は右腕を失い更に顔には大きな火傷を負っていた。


聖女の塔子は、治療できない、顔に大きな傷を負い、誰もが彼女が美少女と言われていたとは思わないだろう。


賢者の聖人は割と無事な方だが、それでも右足は義足だ。


そして、大魔道の平城は両目を失い完全に盲目になっていた。



魔王を倒した事で王都へ凱旋という形で帰れる事になったが……


これの何処が凱旋なのか解らない。


馬車の外には『勇者様バンザーイ』『聖女様バンザーイ』の声が聞こえるが……


正直いって笑えない。


異世界なんて……これを言うのは今更だよな。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る