第57話 【過去】今は思いつかない
今は近くの街の宿屋に戻ってきている。
カルトキングとの戦いで俺は気がついてしまった。
この戦い、どう頑張っても勝ち目は無い。
魔王はおろか、四天王でもない、幹部1人を倒すのに、失ったのは大河の右腕と俺の左目だ。
聖人の腕は、持ち帰りどうにかくっつけて貰ったが……全員が全員心を砕かれてしまった。
ムードメーカーの大河が握腕を失い。
いつものように陽気に話さないからまるでお通夜のようだ。
正直に言えば逃げ出したい。
だが、もしそれをすれば、理人を殺した事で裁かれる。
『罪もない者』を殺したんだ。
恐らく、相当重い罪を着せられる。
だから、この魔王討伐という運命から逃げられない。
「平城……てめーが理人を殺させなければ、俺は腕を、大樹は目を失わなかった。それだけじゃねーー! あの恐ろしいスキルは俺達が今後使えたんだぞ……チクショウ!」
「確かにその通りだ。恐らく理人が居たら『どちらかは助かって』あのスキルを奪えた。だが今それを責めても仕方ないだろう」
「そうだな……チィ」
今更平城さんを責めても仕方が無い。
何も現状は変わらない。
だが、このまま戦い続けても無駄死にするだけだ。
なにか考えないといけない。
「あの、宜しいですか?」
「塔子!? なにかあるのか?」
「もう、正面から戦っても勝てないのは確定でしょう? それなら卑怯に徹した方が良いんじゃない?」
「卑怯?」
「そうよ……正々堂々戦って勝てないなら、正々堂々を捨てて戦うしかないわ! たとえば、魔族が住む森を焼き尽くしたり、飲み水に毒を入れたりそういう戦い方をすればいいんじゃないかな? あとは数の暴力で押すとかしかないんじゃない?」
「前半は可能かも知れないけど、数は多分無理だと思うな……俺達に国が兵士や騎士を貸してくれると思うか?」
「絶対に無理だろうな!」
「無理だと思うよ」
「……そう思います」
「そうね……数の暴力は無理でも、卑怯な方は大丈夫じゃない? 討伐方法は別に指定されてないからね。それに数の暴力という事なら、国に頼まなくても良いんじゃない?」
「「「「国に頼まない?」」」」
「そうよ! 魔族を怒らせて、街に逃げ込むなり、誘導すれば、その街の人間全員で対処しなくちゃならないわ。街の人を守るために衛兵や騎士と共闘する事になるじゃない? どうかな?」
確かにそれなら可能だ。
仮にも勇者ともあろう者がそんな事して良いのだろうか?
だが、そうでもしないと勝てないのも事実だ。
どうした物か……
結局、良い案が浮かばず、とりあえず旅を続ける事になった。
どうにか、決まった事は魔族の幹部たちからは逃げ続け魔王城を目指す。
そして魔王城についたら……体裁をととのえず『何でもあり』で戦う。
それしか今は思いつかなかった。
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