第二章 夜の世界へ

第38話 翔子の妥協点


「翔子お帰り…」


「ただいま…」


余り顔を見られたくない…


今の私の顔は最悪…


散々、泣いていたから目も腫れているしお化粧も落ちてボロボロだ。


理人の顔もなんだか悲しそうに見える。


散々、肌をあわせたから、一緒に生活していたから…解る。


きっと理人も私を愛している。


それは、バンパイアとしてじゃない…


多分、人間の気持ちとしてもそうだ。


だって…理人は私の『アイドル時代』の事を沢山知っている。


話しを聞くだけで、他の人が引くんじゃないか?


そう思える程の『しょこのふ』だ。


※しょこのふ=翔子の(アイドル時代の)熱狂的ファン


「あの…翔子、それでね…」


理人も困っているよね。


理人にとってSEXや吸血は『愛情』だけでなく生きる為の食料でもあるんだもん。


他の女としないでという事は、ライオンや白熊に肉を与えないのと同じだ。


なら、どうすれば良い…


最低の妥協点は…


他の女を抱いても良いの。


だけど『私だけを愛して欲しい』


だったら、風俗に行かせるとか商売女を抱くのを認める…


不味いかも…理人の正体がバレる可能性も高い。


女しか愛さないで女を抱く…そんな都合の良い方法…ある?


「ちょっとゴメン、今、色々考えているの…私は理人が好き、大好き…だけどね他の女を理人が抱くのは嫌…」


「そうだよね…ゴメン、それじゃ…」


「ちょっと待って、別れるのは絶対に嫌なの」


「…そう」


理人もどうして良いか悩んでいるわね。


『女を愛さないで女を抱く』そんな都合の良い話…あったじゃない。


自分だって、少しその世界に手を出した。


そうだ、あれよ…あれ。


「ねぇ、理人、私思ったんだけど? 女を抱ければ解決なのよね? そこに愛は必要ないわよね?」


「そうだけど…」


「ねぇ、沢山の女を抱いても良いけど、私1人だけを愛してくれる?私だけって誓える」


「誓えるよ」


「そう、信じているからね…だったら理人、貴方ホストになれば良いのよ!」


愛じゃ無くて仕事、それなら私もギリギリ納得できるわ。


◆◆◆


「ホスト? 俺未成年なんだけど?」


「だけど、ホストになれば商売で女を口説けるわ! 一見、恋愛に見えてもそれは商売、それなら『愛』はないから私…仕方ないから納得する! それに『食事』という意味ならエサは幾らでも手に入るし、一石二鳥、いえお金も手に入るから一石三鳥じゃない?」


確かにそうかも知れない。


だけど、翔子は本当にそれで良いのか…


「だけど、翔子…それで良いの?」


「あはっ…本当は良くないよ…だけど、理人が生きる為に必要なら私が我慢するしか無いじゃない?本当はギリギリ…だけどこれなら、なんとか私…納得できるよ」


「だけど、俺未成年なんだけど?」


「そこは、お金はあるんだし、入店は難しいから、自分でお店を経営するなり、南条財閥に相談しても良いんじゃない?」


「そうだね、やってみようかな?」


『ホスト』 よく考えたら、バンパイアやでインキュバスの俺にはもってこいの仕事じゃ無いか?


翔子がそれで許してくれて傍に居てくれるなら…


俺的には何も問題ない。









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