第22話 不名誉な噂


「約束したよな?無抵抗で来てくれるんだよな?」


今日はついてくる。


それが解っているからか2人だけだ。


南条財閥からは恐らく逃げられない。


行くしか無いな。


「約束だ!ついて行くよ! ただ色々と揉めているんだ翔子も一緒で良いか?」


「別に構わない」


「そう、それならついて行くよ! 翔子も悪いけどついて来てくれるかな?」


「うん、良いよ」


しかし、翔子は随分と度胸があるんだな。


賭けに乗ったり…危なっかしい気がする。


天下の南条財閥が態々俺を呼び出す理由。


当然塔子の事だよな…


俺を殺そうとした癖に…此処でもまた俺に迷惑を掛けるのかよ。


クソ野郎がっ!


◆◆◆


俺と翔子が連れて行かれた先は南条ビル地上42階の超高層ビルで南条関係の企業で埋め尽くされている。


塔子の父親かはたまた母親かどちらが出て来るのか?


会議室のようなところで待たされ、暫くすると俺だけ会長室に通された。


「君が黒木くんか、あの事故の生き残りの…」


南条孝蔵…まさか、祖父か…


「だから、どうかしたんですか? 権威を見せつける為かなにか知らないけど!大勢で押しかけてきて迷惑だ!」


経済連に名を連ね、現役総理大臣ですら頭が上がらない孝蔵に恐怖も何も感じない。


恐らく、俺がもう人間で無いからだろう。


「儂は孫の塔子の事が気になるだけだ!なにか知らないか?」


「残念だが、俺は船で事故にあった時の記憶はほぼ無いから、解らない、力にはなれないな!」


「そうか…」


後ろから凄い殺気を感じる。


健四郎なんて比べ物にならない感じだ。


俺の中の何かが『危険』を告げる。


ガチッ、金属音が聞こえた。


俺は、その方向に素早く振り返った…


やはり拳銃を持っていたか。


素早く近づき俺は相手の拳銃を奪った。


ブチブチっ


拳銃を手首ごと握りしめ、奪ったから手首ごと引き千切れた。


「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーっ」


「これはなんですか?」


「お主、やっぱり異世界帰りだな」


勘ぐっていたのか?


殺すか…良く考えたら、此奴は俺を殺そうとした塔子の祖父。


殺してしまってもなんとも思わない。


「だったら、なんだ?」


「頼む、塔子の事を何か教えてくれないか?」


「俺は彼奴に恨みを持っている、真実を話すが、口が悪い…それを咎めないなら話しても良い」


「それで良い、教えてもらえないか?」


「良いぜ、塔子は股ゆる女になった」


「股ゆる?それはまさか、ヤリマン、ビッチ…そういう事か?貴様、嘘を…つくでないわ!」


勿論、これは大嘘だ…


俺を殺そうとしたんだ!評判位は落しても良いだろう。


「いや、本当だよ! 俺は彼奴らが嫌いだから悪意をこめて話すが嘘はつかない、大樹が勇者、大河が剣聖 平城が大魔道、そして塔子が聖女になったんだ…此処と向こうじゃ時間の経ち方が違って、向こうじゃかなり長い時間が経っていたんだ…魔王討伐の旅は過酷だからな、慰めで4人でかなり夜を楽しむような行為をしていたらしい…これは噂だが何回か子供を下ろし、最後には妊娠しないように避妊紋という刺青を入れたらしい…」


「それはあくまで噂じゃろうが!」


「どうだろうか! 一緒に何年も否応無しに生活しなくてはいけない相手3人に命を盾に迫られたら、塔子としては「しなくちゃならなかった」んじゃないかな?」


「どう言う事じゃ」


「平城は元々、そういう要素があったのか、直ぐにやりだして男と楽しんで居た。塔子だけはそう言う事はしてなかったらしい。だが、聖女は回復役で戦闘に向いてない…そんな中で『犯らせてくれないなら守らない』そう言われたら、やらざる負えないだろう? 最初は泣きながらでも毎日犯され続ければ、やがてはそういう事が平気で行える女になり、快楽を貪るようになるさ」


「そんな…塔子が…」


「あくまで噂だ、本当の事は解らない。だが、魔王討伐が終わった時には勇者パーティはバラバラになり恩賞を貰った。そして、全員がハーレムを欲しがった。これは誰しもが知っている事だ! 勇者パーティは、一夫多妻、一妻多夫が許されるからね。塔子は20人からの男のハーレムを貰い暮していたんだ…股ゆる女は嘘じゃないだろう?」


「多少腹がたつ言い方だが辻褄はあっている、謝礼をやるからもう帰るがよい」


そう言いながら俺に分厚い封筒を渡してきた。


塔子は俺を殺そうとしたんだ…不名誉な噂位流してもよいだろう。


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