邂逅のお時間です

あみゅー

全ての始まり

自室のドアを開け、鏡の前に立つ。

別に顔を見ているわけじゃない。

見ているのは、普段着ることもないオレンジ色のワンピース。

今日は母の付き添いで、どこだか知らないところのパーティーに行ってきた。

そのせいで今は瞼が半分落ちてしまっている。

暫くの間鏡とにらめっこしていたけれど、もう限界みたいで、このままだと眠気に負けて倒れてしまう未来が見えたものだから、ベッドに入った。

余程疲れていたのか、ベッドに入ってから1分も後の記憶がない。


それで、ぐっすり眠った。

問題はその後。

朝私のことを起こしたのは、目覚まし時計じゃなくて、知らない女性の声。

その声は、抑揚がないくせに、やけに響いて聞こえるの。

目を開けて声のする方を見ると、やはり一人の女性がこちらを見つめていた。


「はじめまして、定海千春さだうみちはる。」


彼女は私の名を呼んだ。その時のわたしは、とにかく頭が混乱していたから、なんでこの人が私の名前を知っているかなんて考えもしなかった。

その後、私は彼女と見たこともない部屋を出て、見たこともない廊下を一緒に進み、数個先のドアの前で立ち止まった。

中に入るよう指示されたので、ドアを開けた。別に全てこの人の言いなりになることを望んでいたわけではないけど、少なくとも言いなりになる以外にとるべき行動が見つからなかっただけ。

部屋の中に入ると、見知らぬ人が5人いた。私と一緒に入ってきたさっきの女性を含めれば、6人。

本当に理解が追い付かなくて、数秒硬直していたら、また彼女は話し出した。今度は全員に向かって言っているようだった。


「皆さん、改めまして、おはようございます。邂逅のお時間です。」


そういうと彼女はニコッと笑った。

邂逅という言葉を知らなかった私は、彼女に笑い返すことができなかった。

周りの人も笑ってなかったから、同じように知らなかったか、それどころじゃなかった。もしくはそもそもその言葉が笑えるようなものじゃなかったか。


「自己紹介をしあって下さい。あなたたちはこれから共に遊ぶ仲間です。

 私の名はグレイア。ゲームマスター、正式にはゲームマスター代理です。よろしくお願いします。」


もう何も理解できなかった。これは皆同じようだった。

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