詩「夏、洗面台にて」
有原野分
夏、洗面台にて
洗面台で顔を洗う
水が渦を巻いて流れていく
小さく震える旅がようやく終わる
排水溝の影に髪の毛が一本または二本
薄い黒色に白い陶器はよく映える
渦を描くように
時間は短縮されていく
流れはいつまでも苦々しく
どうしてもやりきれない
顔をいくら洗っても
なにもきれいになんてなっていない気がする
ずっとする
生まれたときから
思えば
これからも
ずっと
手のひらに受けた音が
跳ねて
広がって
飛び散って
逃げるかのように
重力は自由だ
最後の運命を誰が予想などできる?
大人しく流されていく水のほうがよほど利口
に見えるのはそれほどぼくが大人になっ
てしまったという証拠かもしれない
。
詩「夏、洗面台にて」 有原野分 @yujiarihara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます