異世界転生

身ノ程知ラズ

異世界転生

「どうかされましたか」


「あ、いえ、まぁ…迷子になってしまったようで…」


「それはお気の毒に」


「ここはどこなんです?何か違和感を感じるのですが…」


「違和感は感じるものではなく覚えるものですよ」


問いに素直に答えてくれず、彼は若干の腹立たしさを「覚えた」が 口には出さずその奇妙な男に問い直した


「とにかくここはどこなんですか?」


その男は優しく微笑みながら


「それが私にも分からなくてですね…」


「はぁ?」


「気がついたらここにいまして、あなたも同じですか?」


「えぇ、まぁ、さっきまで何をしていたか思い出せません」


「最近流行りの異世界転生というやつでしょうか」


「そんなことないとは思いますがね」


2人は辺りを散策し始めたが、特別変わったものは何もない、どこまで行ってもだだっ広く殺伐とした真っ白な空間が続いているだけだったと思った矢先、2人は妙なものを見つける


「何か文字のようなものが浮かんでいますね」


「本当だ、なんて書いてあるのか読めますか?」


「う〜ん、反転しているので読みにくいですね、え〜  『どうかされましたか』『あぁ、いえ、まぁ、迷子になってしまったようで…』と書いてありますね」


「これって今までの僕たちとのやりとりですかね…」


「そのようですね、ほら今も私の発言が文字に起こされいますよ」


彼はそう言って文字が書いてある方を指差す


「なるほど、私の行動も文字になるのですか」


「早くここから出してくれ〜!」


「誰に言ってるんですか?」


「文字起こししてるやつなら、何かわかるかもしれないでしょ?」


「面白い、ただここから出る方法は一つしかないようです」


「何ですか?」


「何もしないことですよ、我々が何か発言したり動いたりするたびにあの文字が書かれますので要はこの物語を終わらせれば我々は解放されるでしょう」


「なるほど、では何もしないでいましょうか」


「おっと、読者の皆さん、面白くないオチかもしれませんが生憎我々もここから出たいので終わらざるを得ないのですよご了承ください」


そう言って2人は何もしないまま立ち尽くした

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