No.73【ショートショート】個性を与えられた機械たち

鉄生 裕

個性を与えられた機械たち

2065年、人々の生活においてアンドロイドの存在は必要不可欠なものとなっていた。

アンドロイドのおかげで人々は今まで以上に快適で豊かな生活を送ることが出来るようになったのだ。


人々は更なる生活水準の向上を図るために、アンドロイドに個性を与えることにした。

人間のために働くことを目的に作られたアンドロイドにとっての個性とは何か?

それは『職種』であった。

料理が得意な『コック』。

歌が得意な『アーティスト』。

モノ作りが得意な『エンジニア』。

ありとあらゆる職種が、アンドロイド達にとっての個性となった。


そんな数多くの個性の中でも、清掃を得意とする『クリーナー』達は人間のために朝から晩まで働いた。

クリーナーはとにかく綺麗好きで、街中をくまなく清掃した。

彼等のおかげで街は見違えるほど綺麗になった。


食べ終えたパンの袋をポイ捨てしている人を見かけたら、彼等はすぐに掃除をした。

噛み終えたガムをポイ捨てしている人を見かけたら、彼等はすぐに掃除をした。

吸い終えた煙草をポイ捨てしている人を見かけたら、彼等はすぐに掃除をした。


気が付くと、その街でポイ捨てをする人間は一人もいなくなっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

No.73【ショートショート】個性を与えられた機械たち 鉄生 裕 @yu_tetuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ