第38話 運命を変える言葉を

 西暦二〇二五年 一二月二日 火曜日


「ちょと用事があって遅くなるけど必ず迎えに行くから校門でまってて 送信」

 わたしはスマートフォンで空手ちゃんにメールした。

 刀剣くんにもメールしとこ、きっと規律護きりつまもる先生ブチ切れて、帰りが、もっと遅くなる。

「刀剣くん、どんなに遅くなっても待ってるからいっぱい疑われててね! 送信」

(わたしヒドイ!)


 *


南川野みなみかわのさん、また明日」

「今日も迷路まよいみちさんは川乃北高校かわのきたこうこうの幼馴染のところ?」

 南川野優子みなみかわのゆうこちゃんはとっても優しいクラスメイトだ、わたしが友達いなくっても寂しくないようにいつもいつも声をかけて来てくれた。

 わたしは少しだけ彼女と話せるようになってくいた。

「ううん今日は違うー、ちょっと城下町マートに用があってー、そのあと合流するの」

「城下町マート? 駅越えてちゃってるけど……」

 南川野さんはたくさんわたしを助けてくれようとしたのに、わたしは南川野さんの事を見てなかった。

「いいの、今日はトラックの運転手さんの助けないとダメな日だからー」

「運転手さん? 助ける?」

 わたしは真新しい教室の後ろの扉をガラガラと開けて教室をあとにする。

「あっ、ねえ南川野さん、わたし明日から一緒に帰っていい?」

「私と?」

 南川野さんは下り先わたしは上り線だけど空手ちゃんと刀剣くんとの時間がどうしても合わない時は対面のホームで南川野さんをよく見かけた。

「うん、わたし南川野さんと帰りたい!」

 南川野さんは少し驚いた顔をしてる。

「うん、いいよ、迷路さん」

 南川野さんは笑ってそう言ってくれた。


 *


 わたしは走った、川沿いを走りいつも渡る川乃北高校高校への橋を無視して、全力で走る。

 今日は刀剣くんが規則護先生につかまって遅くなる。

(空手ちゃんも大変だ)

「あっ信号」

 信号ではちゃんと、とまる

「黒猫ちゃーーん? 美味しい、美味しい、猫缶でちゅよーー」

 わたしは猫缶で黒猫ちゃんを餌付けする。

「はい、だっこ」

 わたしは黒猫ちゃんを抱えたまま商店街を抜けて、バスターミナルへ向う。

「あっ盾騎士くん、じゃあね!」

「はあっ! なんでオマエに挨拶されなきゃなんねーんだ⁉」

 盾騎士くんが川乃北高校の制服、ソデに臙脂えんじのラインの学ランで怒ってる。

 ごめんね盾騎士くん、盾騎士が川乃北高校受かってたのに……。

「真っ白なブレザーもピンクのリボンも最高にいい!」

(わたしはそう思えば良かった)

 わたしはいつも使う城下町駅を越えて走る。


 *


 ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。

「あのトラックだ、運転席の後ろにお父さんカエル、お母さんカエル、お兄ちゃんカエル、妹カエル!」

 間に合った…………。

「おじさん、安全運転が一番だよ、疲れたら休んでからお仕事して、ちゃんとおウチに帰ってね」

 わたしは紙コップのコーヒーを買いコンビニから出て来た運転手のおじさんに声をかけた。

 きっと運転手のおじさんはそんな事を突然言った、わたしの事を黒猫なんて抱えたおかしなだと思っただろう。

 疲れた顔をした運転手のおじさんは、わたしの言葉だけで休んでくれるだろうか?

 わたしはそんな事で何が変わるのかって思われたってよかった、でも、もしそんな事で運命が変わるのなら、それはその人も運命を変えたいと最初から思ってたに違いないんだ。

「あとは裏道を通ってゆっくり川乃北高校に行く……」

 黒猫ちゃんは後でリリース。


 *


 西暦二〇二五年 一二月三日 水曜日


「おじいちゃん、今日の新聞どこー?」

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