ワールドシミュレーター・マジカルアース
山岡咲美
第一章 マジカルアースの精霊召喚師
第1話 プロローグ 迷子のトキコちゃん
西暦二〇二五年 一二月一日 月曜日
「ココが時の迷宮、チクタクダンジョンか……」
言葉が反響する深いダンジョンの中で鬼族で刀使い男の子、トウケンくんの声が聞こえる。
トウケンくんは
「なんか『カチカチ』言ってるね」
人間族の格闘神官の女の子、カラテちゃんの声がわたしに近づいて来る。
カラテちゃんは真っ青な
「この音の石組の壁の向こうからか?」
トウケンくんがカラテちゃんに訪ねてる。
「たぶんね、きっと壁の向こうは機械仕掛けの何かがあるのよ」
「罠か?」
二人共鋭い‼
「じゃ、トキコちゃんは……」
「罠にハマったか、それとも……」
「カラテちゃん! トウケンくん! わたし壁の中だよ‼ 壁の中‼」
「何やってんだよトキコ‼ なんで壁の向こうにいるんだ⁉」
ドン‼
トウケンくんが壁をたたく!
(結構厚い壁のはずなのにスゴイ音)
「トキコちゃんどうして壁の中なんかに居るの⁉」
カラテちゃんは壁にピタリとくっつくように話してるみたい。
「わたし目が時計になってるトカゲ追いかけてたら突然壁がスッポ抜けて壁ん中入っちゃった‼」
わたしは間の抜けた声で話す。
「トキコちゃん変な生き物追っかけないで!」
カラテちゃんがわたしの行動にがっかりする。
「変じゃないよ、かわいいし、もしかしたら精霊さんかもしれないじゃん!」
わたしは壁の中に透けて入っていったトカゲさんが精霊だと主張した。
「ここの精霊は素早さを上げるウサギのライトラビットと素早さを下げるカメのヘビータートルタートルでしょ‼」
「また迷子か……」
カラテちゃんが怒り、トウケンくんがうなだれた声を出す。
(すみません……グスン)
「とりあえず無事なんだな」
トウケンくんが少しホッとした声を出す。
「わかんない! 怖い‼」
わたしは一人が嫌い。
「トキコちゃん、そこどんな場所? ダメージは? ウインドウ開いてステータス確認して」
カラテちゃんはあえて静かな落ち着いた口調でわたしに声をかけてくれる。
(カラテちゃん優しい、トキコの事心配してくれてる)
わたしはマジックウインドウを開く。
わたしの目の前に魔法でわたしのステータス画面があらわれた。
名前 トキコ
種族 人間族
職業 精霊召喚師
レベル 二一
ダメージ 〇パーセント
体力 五〇ポイント
精神力 一六〇ポイント
筋力 二〇
魔力 五〇
速さ 十八
状態異常 無し
装備 星の魔女帽子
甘ロリマント
甘ロリワンピース
桃の木の杖
「えっとね字は白くてダメージは『〇パーセント』ってなってる、装備は桃の木の杖もピンクのフリルマントもワンピースもてっぺんお星さまの魔女帽子もそのまま画面に出てる」
わたしは精霊さんを召喚して支援魔法を使う精霊召喚師だった。
わたしはカラテちゃんとトウケンくんが居ると怖くない。
「トキコちゃん状態異常もダメージもないみたい」
「死ぬ系トラップじゃないみたいだな」
壁の向こうのカラテちゃんとトウケンくんの声が安心したって感じに変わる。
「トキコちゃん動ける? コッチに帰れそう?」
「来た場所わかるかトキコ、そっちに戻ってまた壁を抜けてみろ、隠し通路かもしれん」
カラテちゃんとトウケンくんがわたしに指示をくれる。
「カラテちゃん! トウケンくん! コッチ真っ暗闇ーー‼」
「「…………ハッ⁉」」
なんか二人共驚いてる?
「真っ暗ってそっちは灯りが無いのトキコちゃん⁉」
「説明してくれトキコ」
「うん、真っ暗、手も足も杖も見えない!」
このチクタクダンジョンには周囲の魔力を吸収してあかりをともすの無限ローソクがついてて親切設計だった。
他にも光る系のキノコとか生えてて明るいダンジョンは結構ある。
でも今のわたしは自分の手足も見えないほどの暗闇に居る。
(怖い……)
「トウケン、何でトキコちゃんの所に灯りが無いの?」
「知らないよカラテ、とりあえずトキコ、なんでもいいから灯りをつけろ、真っ暗闇じゃ何もわからん‼」
(とりあえず精霊さんよんでみよう)
「光の精霊よ、浮き水晶よ、契約に従い我の元へ来たれ! 我が名はトキコ、そなたはシラタマ!」
光の精霊、白い光の玉みたいな浮き水晶のシラタマちゃんがあらわれ、わたしの背丈のより少しある、枝や葉っぱのついた桃の木の杖のまわりをうっすらと光りながらまわり回る。
「シラタマちゃん、灯りをつけて」
するとシラタマちゃんはピコンってお辞儀をしてパって強く光ってくれた。
わたしに白い光が反射して自分の姿が見えるようになった。
(あれ? まわりは真っ暗闇のままだ、それになんで動けなくなっちゃたんだろ? 自分の手足は見えるし動くのに移動してる感じがしない……)
「トキコちゃん!」
「おい、トキコ返事をしろ‼」
(あっ、返事しなきゃ‼)
「カラテちゃんトウケンくん聞こえるーー、シラタマちゃん呼んだら体は見えるようになったけど、進んだりは無理みたいーーーー!」
わたしはバタバタと歩いてみる。
「――――――――あっ」
「どうしたのトウケン?」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ‼」
「何っ何っ何っ何っ? トウケンどうしたの?」
「こっのっ! バカトキコっ‼ それバクだ‼ お前またバク拾ったな‼」
「えっ⁉ ……トキコちゃんまたなの?」
(バク?)
バクってなんだっけ……。
「トウケンくんバグってなんだっけーー?」
(トウケンくんめっちゃ怒ってる……)
「ソコ入れる場所じゃないんだ‼ お前《《また》変な事したろ、この前なんて、滝の裏に道があるって入って行って、滝のある山突き抜けて、検問通らなきゃ行けない次の街に一人抜けて行ったよな! あの時、お前がレベル低くてそのままその街から動けなくなって、コッチはレベル上げて迎えに行かなきゃならなくなったんだぞ‼」
トウケンくんがスゴイけんまくで怒ってる、まるで鬼のようだ。
(鬼だけど……)
「トキコちゃんゲームでも迷子になるのね……」
カラテちゃんのなんか可愛そうな子に言葉をかけるような声がわたしを悲しくさせる。
わたしはよく道に迷う。
(なんか悲しくなって来た……)
「……どうしょう」
「……トキコ、よく聞け、とりあえずウインドウは開くんだよな」
トウケンくんが優しくゆっくり声をかけてくれる。
「うん、開く……」
わたしはなんか泣きそうになるけど、トウケンくんが助けてくれるから、頑張ってトウケンくんの声を聞く。
「じゃぁ、セーブ/ロード画面を開いて、一個前のセーブデータを開けてみ? ここまでのデータは消えるけど、戻れるはずだから……」
わたしはトウケンくんの指示を聞きながらマウスでウインドウを開いて、トウケンくんの言う通りにセーブ/ロード画面を開いた。
(ここまでダンジョンもぐったのに、なんか悲しいなっ)
「トウケンくん、ロードするよ!」
「トキコ、戻ったらゲーム内メール、ゲームメールか、だめだったらスマホで直接メールよこせ」
トウケンくん優しい、やっぱり鬼じゃない。
(鬼だけど……)
「トキコちゃん、今日の事は気にしないでね」
カラテちゃんも優しい。
「カラテちゃん好きです、付き合って下さい‼」
わたしは思った事を直ぐ口にしてしまうタイプの人間だ。
「はぁっ⁉ 何いってんだトキコ⁉」
トウケンくんが驚く。
「トキコちゃん、付き合うのは嫌だけど私もよ好きよ」
わたしはトウケンくんの困惑とカラテちゃんの心のこもって無い声を聞きながらロードボタンを押した。
わたし、しつれんしました。
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