第41話 理解されない美の世界

夜、薄暗い子供部屋。

部屋には大きな本棚があり、表紙を隠した軍服の図鑑が並んでいる。部屋の奥のクロゼットには軍服のレプリカを隠している。

少年はベッドの上で軍服の図鑑を読んでいると、窓ガラスをガンガン叩く音がした。

少年が振り向くと軍服を着た片腕のない男が泣いている。

ガチャガチャ。

部屋のドアが開くと、母が立っていた。

「まーた、軍服なんて調べて! 不謹慎よ! 戦争をしたいの!」

少年は反論する。

「戦争したくないよ! かっこよさと美しさが好きなんだ!」

母は溜め息を吐いて、戻る。

少年はクロゼットから曾祖父が着ていた軍服を出して着る。

曾祖父は勇猛な軍人だったようで、敵の高名な軍人の片腕を奪った話を少年に聴かせていた。

少年はベッドの上でくんくん臭いを嗅ぐ。火でなにかが焼ける臭いだ。

少年は起き上がろうとすると、片腕がないことに気がついた。

「ここで死ぬんだなぁ……」

少年は片腕で敬礼しながら誇りを胸に、自分が愛する美の世界と共に焼けて消えた。

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