第17話 部族の儀式

豪華客船は難破した。

砂浜にびしょびしょに濡れた豪華な服を着た女とその息子の九歳の少年、十代後半の男女のカップルと、三十代後半の男、そして八十代の男が倒れている。

夜、八十代の男──美濃部勝義が目を覚ますと、周囲を松明を持った背の高い男たちに囲まれていた。彼らは何か喋っている。勝義は叫ぶ。

「お主ら何者じゃ! ──そうか! 大変じゃ! 寝てないで目を覚ませ!」

他の面々も起き上がる。

背の高い男たちは、素早く九歳の少年を羽交い締めにした。

少年の母が悲鳴をあげる。悲鳴が背の高い男たちを刺激し、彼らは興奮状態になった。



真っ暗な森の中に無数の十字架がある。九歳の少年とその母、十代後半のカップル、三十代後半の男は、それぞれ一人ずつ十字架に磔にされている。その回りを背の高い男たちが囲んでいて、その中に勝義もいる。勝義は背の高い男たちに言った。

「これからになにをするのじゃ?」

ひときわ背の高い男が言った。

「神へのお供えの儀式をするんだよ」

 勝義は学者で様々な先住民族を調査しており、旅行が好きで語学が堪能だ。会話が出来たので、仲良くなった。

「やめて! 大切な息子なんです!」

男たちの一人が少年の首にナイフを刺しているのを見て、少年の母が叫ぶ。ナイフをぐりぐり動かしている。

「俺の彼女に手を出すな!」

カップルの男の方が怒鳴る。

三十代後半の男はニヤニヤ笑っている。

勝義はそれを見て呟く。

「頭がおかしいのか、壊れているのか」

勝義の目の前で美しい青年が片膝をついて両手を合わせて、神に祈りを捧げる。

「神秘的で美しくて……愛おしい。神を大切にして、愛して、崇める姿と精神が美しい……!」

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