第3話 水の中に潜むもの

夜。

街中にある公園。

少年が噴水のふちに座っていると、物音がした。視力が低いので目を細めて水の中を見ると大きな人の顔があった。

大きな顔が少年に言った。

「私は噴水の妖精です! お喋りしませんか?」

「うん! 今、僕はね。お母さんと喧嘩して家出してきたんだ。晩御飯を食べてないからお腹がぺこぺこだよ」

「私もお腹がすいてて困ってるんです。あはは。あなたは今、一人なの?」

少年はうなずく。

大きな顔がきく。

「もしかして、あなたは目が悪いのですか?」

「うん。眼鏡を家に忘れてきちゃって、困ってるんだ。お顔をよく見たいからもっとこっちに来てくれる?」

 顔がゆっくりと噴水の中を動いて、飛び上がった。口を開けて牙を剥き出しにして。その体は魚のものだった。

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