20.愛の言いたい放談

 場を仕切るのは基本的に最古参最年長のリリ子である。しかし全体的な管理や招集は美咲に任されている。リリ子と高波はあまりにも付き合いが長くなりすぎて、彼女はもはや息子のような感情を持ち始めてしまっているのだ。


 ここ最近は身体を重ねることも少なく、添い寝で十分満足し安らいだ気分で眠りにつくことが増えた。肉体的な欲求は美咲が晴らしてくれる分で事足りる。高波からは心の安堵さえもらえればいいと言うことだ。


「それでB組の五人はどうするの?

 今まで通りに泊まってはくれるでしょうけど、彼女もいっしょよ?

 つまりはもう抱いてもらえないかもしれないってこと。

 別に何も言わなくていいけど、希望があるなら言っておいたほうがいいかもね」


「それじゃ私から、タカちゃんにはこれからも会って欲しい。

 できれば来てくれた時はその…… 抱いて欲しいけど……

 彼女さんのために無理なら我慢する……」


「アタシは萌と違って彼女を一緒に泊めるのは無理です。

 今だってこうしてそこにいるのが許せない……

 さんざん尽くして来たのに…… いきなり……」


「ちよ実の言い分はもっともだけど、私は萌と同じでできれば今のまま。

 でも無理強いはしない、私だって好きな人出来たらその人だけにしたいもん。

 タカシ君はその子のこと本当に好きなんでしょ?

 私たち誰のことも好きにならなかったのに」


「真帆はこう言ってるけど本当は誰も納得なんてしてないよ。

 でもタカシが決めることだからね。

 私は彼女が一緒でも泊まって欲しいし、三人でシてもいい!

 なんならここの全員でシて、私なんてその他大勢の一人って扱いでもいいの。

 とにかく寂しいからタカシがほしいんだもん」


「私は麗子みたいに積極的にはなれない……

 ちよ実ちゃんと同じで彼女さんを一緒に泊めないといけないならムリ……

 これっきりは悲しいけど仕方ないよね」


「梅子ちゃんって結構割り切れる方なんだね。

 アタシはそんな簡単に諦められないよ。

 今までも別にその他大勢でタカシの一人にはなれてないけどさ。

 誰か一人が選ばれたのが美咲さんとかなら納得できたよ」


「まあそうなるわよね、私だって萌と同じような気持ちが無いとは言えないもの。

 でも私が全然平気なのは長いからってだけかもしれないわね。

 かれこれもう五年近くになるから弟か息子かってくらいの感覚よ?」


「桃花先生の見立てではみんな依存し過ぎね。

 それも仕方ないし、そもそもアタシも依存してる自覚があるけどね。

 とりあえず言いたいことは言ってしまったほうがいいわ。

 どうせ結果は変わらないし、最後には決めないといけないものね」


「みくるはタカシが抱いてくれなくてもいいよ?

 決まった日に来てくれておしゃべりして泊まって行ってくれるだけでいい。

 それでもきっと朝はキスくらいしてくれるだろうしね。

 言うなれば王族の第二夫人みたいなものでしょ?

 一夫多妻だと思えばなんてことないかな」


「みくるちゃんスゴイね。

 爽はそんな割り切って考えられないなぁ。

 とりあえず二人揃って泊めるのはOKで今までみたく楽しく過ごせればなって。

 でも出来る限り誘惑はしちゃうよ?」


「私はどうしよっかなぁ。

 タカシは好きだけど私が彼女に貢ぐのはなんか違うよねぇ。

 泊めるのとかご飯食べさせるのはいいっちゃいいけどなぁ。

 まあ適度に付き合って第五夫人くらい目指そうかな。

 みくるが第二ってことはないとおもうけどね」


「もう! 智代ちゃんの意地悪!

 一番じゃないって言いたかっただけだもん。

 みくるは別に四でも六でもいいよ!」


「桜子は―― あらそう? なにもないのね。

 じゃあ今まで通り?」


「うん、お金はあるし使い道もないから。

 その子なんて言ったっけ? ああミチちゃんね。

 アタシちょっと好きな感じよ、ふふ。

 もう美咲ちゃんに気持ちいいことされちゃったんだってね?

 近いうちにアタシともしましょうねぇ」


「じゃあ最後はアタシかぁ。

 グループのまとめ役である美咲さんとしてはですねぇ。

 ま、今までどおりが理想かなと。

 だからさ、まずは二人を快く泊めてあげられる子だけ残ろっか?」


 これには誰もがうなずくしかない。もちろんすでに諦めたと言っていたちよ美と梅子はうなづきはしなかったがかと言ってどうすることもできないだろう。美咲は話を続ける。


「ちゃんと理解してないとダメなのはさ、愛されたいと思っちゃダメなわけ。

 自分がいつの日か愛されるんじゃないかって期待を持ってたら納得できない。

 まあ完全に納得じゃなくてもある程度受け入れて許容しておこぼれに期待かな。

 肉体関係だけを望んでたなら仕方ないけどね。

 ちよ実と梅子はさ、きっとうちらよりもまともなんだよ。

 アタシたちはもう頭おかしいとこまでイっちゃってるんだわ。

 ここで立ち去れるのはある意味正常だし、まともに戻るチャンスだと思うよ?」


「美咲ちゃん…… なんかわかるけど納得できない。

 アタシはタカシの子供が欲しかったもん。

 お金で解決できるならキャバだって風俗だってやるよ!」


「もう無理だよ、ちよちゃん……

 私たちはここまでなんだってあきらめよ?

 今までいい夢見たって思えばいいじゃないの」


 美咲はこう言う風に離脱する子が出るたびにストーカー化やヤンデレ化しそうで怖かった。過去には刃物を持ち出した子もいたのだが、幸いにも未遂に終わり大事には至らず済んでいる。どうやら今回は無事に済みそうだと、ホッと胸をなでおろしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る