第12話 黒の奔流

 機械兵たちは警報を受け、異常発生箇所へと駆り出されていた。


 先ほどまでは異常など無く、中枢に近い重要な場所まで探知できなかったことに理解不能(エラー)を生じながらも異常を排除すべく移動していた。


 そんな機械兵の行く手を塞ぐ黒。


 見渡す限りの黒。


 黒いものが壁のように立ち塞がり機械兵へと殺到していく。纏わりつかれた機械兵たちは叩き落とし、焼き落とすが群がる黒の数が圧倒的に多い。


 機械兵たちは理解不能(エラー)を吐き出し続けた。

 ここは機械都市。塵一つ出さない完璧な管理体制を敷き、外部から持ち込んだ素材も細胞一つ無駄なく使うこの世界で、目の前の存在が湧くことなどあり得ないのだ。


 そんな理解不能(エラー)とともにゴキブリの大群に機械兵は巻き込まれて動かなくなった。


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 黒狼大蛇の能力『嫉妬の大罪(アンリーチブル)』は透明化、透過能力に加えて、ゴキブリの召喚、使役を可能とする能力である。

 『大罪』の能力を持つ物は一人を除き、生物の使役を可能とする能力者の集まりだ。そのほとんどが醜悪な生物の使役をすることから、犯罪者であることも手伝って嫌悪される集団となっている。


 黒狼は攻略をする中で、所々にゴキブリを透明な状態で待機させており、時間稼ぎや妨害に使うべく徐々に数を増やしながら仕込みをしていたのだ。


 一匹放てば何千匹にも増殖する『巨群ゴキブリ』や、牛のように大きなゴキブリ『ブラックデビル』。このゲームに存在するゴキブリ型モンスターを使役する黒狼は嫌悪されると同時に畏れられている。彼の兼属は隙間無き空間にも侵入し、暴威をまき散らす。


 ゴキブリを召喚、使役し、透過能力の連続使用に少なくない体力を消費する黒狼。


 それを補うために彼が唯一携帯している装備、スキットル型の道具(ウェポン)『油過多宙(アブラ・カタブラ)』。空になっても無限に栄養豊富な油が湧き続ける最上級の道具(スーパー・レア・ウェポン)である。今まで盗みを働きながらも手放さなかった愛用品である。


 嫌われ者の盗人、『嫉妬の大罪(アンリーチブル)』黒狼大蛇。壁を駆け天井を這い、触角を揺らし、黒羽を震わせ空を飛ぶ。全力の彼の姿は良く言えば特撮の怪人、悪く言えばB級ホラーの化け物の様な、直視したくも無いが確かな活躍をもって『第一界』を突き進んでいった。

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