第4話 集合
広場には様々な人間が集められていた。
魔導士や騎士のように、これぞファンタジーといえる恰好をした者もいれば、軍服を着た者やTシャツやジーパンという場違いとも言える者。酒を飲み赤ら顔な男は一昔前の船乗りのような服を着ている。
そんな雑然とした中で一際目を引くのが、広場の中心にいる男。
両手両足に手錠がかけられ、身体中を鎖でがんじがらめにされ、目隠しに猿轡をされている。いっそそんな趣味なのかと勘違いされそうなほど厳重に拘束されている。
「おい、黒狼のクソ野郎が黄泉帰りしてんじゃねえか。反吐が出るぜ」
「あの人も帰ってきた途端にあんなことされるなんて・・・哀れですね」
「酒だ・・・酒が・・・酒だけが・・・」
「ちゅーもーく!」
混沌とした広場を切り裂く凛とした声が響き渡る。声の主を見ると広場に置かれた台座に乗った女性がいた。傍らには騎士と魔術師の長を率いている。
「本日は私『一点紅』の招集に応じてもらって感謝するわ!」
「急ではあるけれども、今が好機!これより第一界攻略作戦を始動します!」
『一点紅』の宣言に不安の色を隠せない人々がいる中で、特に変化が無い連中、所謂プレイヤーと呼ばれる者たちの反応は薄かった。
「『一点紅』さんよぉ、それは緻密な作戦を考えた上での宣言か?それとも黒狼が戻ってきたからの突飛な考えか?」
一人が代弁するように訊ねる。自分たちが如何に強かろうが、黒狼の力を認めようが、今まで何回も失敗していることを知っている者たちは臆病に近い慎重さを持っていた。
「今までは行き当たりばったり、策も何も無く突入して敗北し続けたわ。ここで最適なメンバーを精鋭として送り出す計画にします」
「ほー・・その最適が黒狼ってわけか」
拘束された男に目を向ける。そこには拘束具が転がるのみで男の姿は無かった。
遠くに男の逃げる姿を確認する。
「ゴルアッ!逃げてんじゃねえ!アンタがこの攻略のカギだって言ってんでしょうが!」
「帰ってきて早々死にに行く馬鹿が何処にいる!?俺は降りさせてもらうぜ!」
「アンタのそのゴキブリ根性が要なのよ!いいから戻ってきなさい!」
追いかけっこを始めた二人を見て騎士がポツリと。
「不安だ・・・・・・」
みんなが思っていることを呟いた。
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