第44話
「これで、終わりっ!!」
モンスターを一通り倒してから廣谷はため息を吐く。辺りには至る所に小銭が大量に落ちており、最低でも五体は倒しているのが分かった。
シロも倒し終えたようで背後から廣谷の元に近づいた。
「わんっ」
『終わったよー』
「ああ……こっちも今終わった」
汗を拭き取り廣谷は深呼吸をしてから小銭を拾う。そして小銭でパンパンになりかけているポケットを見て、そろそろ能力を使うべきか。と考え込んだ。
一先ず持ってきていた鞄にポケットの小銭を鞄の中に入れる。ずっしりとした重さが廣谷の背中に負荷がかかった。
「おっ……も。さっきまでと同じ戦い方が出来なくなりそうだ……」
そう呟いてから先に進む。現在廣谷がいるのは42階。影のモンスターは廣谷の予想通り先に進めば進む程、一度に対処する数が多くなってきていた。
ヘッドフォンをつけているおかげでモンスターの攻撃を受けずにすんでいるが、二回目に奇襲攻撃を仕掛けてくる為、気が休まる事はなかった。
そして先に進んで探索を進めている内に廣谷はこの暗闇エリアが他のエリアとは違う事に気づいた。それは暗闇エリアのモンスターの種類が一つしかなかった事だった。
他の階は別の姿のモンスターが複数いたのに対し、この階のモンスターは人型の影一体のみ。
更に暗闇エリアのモンスターは精神攻撃をしてくる事。他の階は体力を削ってくるのに対し、このエリアは精神も削ってきた。それに廣谷は明らかに難易度が上がった。と思いつつ先に進む。
ランタンが周囲を照らしてくれる為、どの階とも同じようにモンスターの発見のしやすさは変わらない事に廣谷は安心感を覚える。
「これがなかったら死んでたかもな……」
ランタンをちらりと見てから廣谷は呟く。出てくるモンスターが全て影に隠れるタイプな為、もしランタンを買ってなかったら今頃……。そう考えると廣谷は少しの恐怖を覚える。そしてその恐怖を打ち消すかのように廣谷は首を横に振り、その場に立ち止まって深呼吸をした。
そしてふと、このエリアのボス部屋はどうなるんだ? と気になった。
影のボスが現れるのか? それとも別の姿のボスなのか……。と廣谷は考えながら先に進む。
道中出てくるモンスターを倒しながら合間合間でボス部屋のモンスターを考える。考えれば考える程廣谷は戦うのが楽しみになって少し笑みが漏れる。
それと同時に能力制限をしているから今まで以上に苦戦するんじゃ……? と思い至った。
「――まぁ、どうにかなるか」
だがすぐに頭の片隅に置いて探索を続けた。
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