第38話

 ピコンピコンとスマホから音が鳴り続き、廣谷は目を覚ます。


「なに……うるさ……」


 寝起きの状態でスマホを見ると、大量のメールが届いていた。

 廣谷は面倒な気配を察知し、今返事すると何かしら面倒な事になると思い頭を覚醒させるため顔を洗いに行った。

 完全に目が覚めた廣谷はスマホのメールを確認する。


『ひろくん! なんとかして! URL~~~~』

『ひろくんー! これ見て!! URL~~~~』

『ひろくん、やばいよ!! URL~~~~』


「はあ?」


 廣谷は色んな人から送られる一つのURLを見て詐欺か? と疑ったがある一つのメールに簡単な内容が書いてあった。

 

『ひろくんスレでアンチが来て、それでキレたガチ勢がアンチに所に行くって言いだして……詳細はURLを見てください。何とかしてください……助けて』


「なんだそれ……勝手にしてろって話なんだが」


 廣谷は困りながらもURL先を見に行く。そこは廣谷のスレであった。一個一個見ていき、何があったのかを確認した廣谷はため息を吐いた。


「……どうするか」


 廣谷は眉間に皺を寄せ悩む。助けてもいいけど見返りがある訳でもない。でも助けなかったら今後支障になるかもしれないし。と廣谷は困った。

 

「見返りー……まあ、金……か? 小銭はいくらあっても足りないし」


 廣谷はスレに書いてある住所をスマホのナビアプリに登録して、マントを着てフードを被りシロを呼んで外に出た。


「まっぶし……」


 久々の外に眩しくなった廣谷は少し怯むが、すぐにシロに場所を教えながら目的の場所に向かった。


「え、なにあれ」

「シロくん!?」

「ちょっ、写真とろ写真!!」

「あの浮いてるの何!?」

「え、スライム!?」


 道中二人を見て写真を撮ったり騒ぐ通行人の声を聞き、廣谷はフード被ってもシロがいるから意味ない……! とはあとため息を吐いた。

 そして目的の場所に近づいていると騒音が聞こえ始める。怒号が聞こえ、廣谷はああ、あそこか。と視線をスマホから声の方向に向けた。


「出て来いよ!!」

「おい!! カスがよお!!」


 家の周りで騒ぐ人だかりを見て廣谷はどうしようか悩む。

 外で能力の使用は基本禁じられている。人を傷つける可能性があるからだった。

 廣谷は人を傷つけないからという理由で能力を使っていたが、今回能力を使えば傷つける事になり、捕まってしまうかもしれない。そう思い廣谷は悩んでいるとシロが鳴いた。


「わん」

『あれ、止める?』

「止めれるか?」

「わんっ」

『いけるよ!』

「なら頼む」


 廣谷の言葉にシロは頷き、集団に近づく。

 そして大きく、吠えた。


「わおーーーーーん!!!!!!!!」

「うわっ……な、なんだ!?」

「あれ!!」


 シロの声に集団が二人を見る。あれってシロくん? え、じゃああの上に乗ってるのって……と動揺をし始める。

 廣谷はふーっと一呼吸してから圧をかけながら声を出した。


「貴様ら、今すぐここから去れ」

「え、ひ、ひろくん? これはひろくんの為なんだよ……?」

「去れ!!!」

「ガルルルル……!!!」


 二人の圧に集団はえ、あ、と言葉が出なくなる。そこにシロがゆっくりと唸りながら近づき、集団は後ずさる。

 そしてシロはまた大きく吠えた。


「わおーーーーーん!!!!」

「ひっ……!!」


 その声に集団は怯え、皆その場から走り去った。

 シロは全員の姿が見えなくなるまで唸り、廣谷は消えていくのを待った。


「わんっ」

『消えたね!』

「だな……はあ、全く面倒な事をしてくれる……帰ろう」

「わん!」

『うん!』


 シロが帰ろうと踵を返した時、廣谷は家に向かって叫んだ。


「もう大丈夫だ! 驚かせてすまなかった!!」


 窓に人の姿を見えたから廣谷は言い、警察が来る前に帰ろうとシロに指示し、その場から離れた。






『ひろくんシロくん迷惑リスナー撃退!』

『街中に白ウルフ出現! 謎の人物の正体は今話題のひろくん!?』


 二人が外に出た事は瞬く間に拡散され、記事にされていた事に、廣谷は気づかなかった。

 そして見返りの事を忘れていた事をダンジョンに戻ってから廣谷は気づいて項垂れた。人助けしただけだ……と。

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