第12話

 まる猫を宙に浮かしながら廣谷はシロの上に乗り草の階に入る。

 少し部屋から離れた所で配信機能をオンにする。


「……どうも。地下10階を最初に見つけたひろだ。ゆっくり探索する」


 そう言ってから少しした後まる猫から音声が流れだす。


:こんにちはー!

:タイツクからひろくんが配信してると聞いて

:ひろくん! ひろくんじゃないか!! 能力教えてくれよー!


「そう簡単に教える馬鹿がいるか。……タイツクに配信告知ちゃんとできてたか、よかった」


 廣谷は表情を変えず淡々と話す。まる猫は現在何名と視聴者数を、透明な液晶に映した。


:え、ひろくん何に乗ってんの?


「……ああ、この子はシロ」

「わん!」

『シロだよ!』


 音声からリスナーのコメントの声とは違うシロの声が流れる。シロとコメントを区別できる機能がちゃんとしている事に廣谷は安堵する。

 そして廣谷は銃を持ちシロに先に進むように促す。

 シロはこくりと頭を下げてから進みだす。

 そして出てきたモンスターを次々と撃っていく。その様子にリスナーの驚くコメントがまる猫から流れてきた。


:その銃なに!?

:うわ! 地面からモンスター!? 擬態!?

:すっごい自然の階だあ


「この銃は13階のボスからドロップしたやつ。支給場で100個程渡してきたから手に入れるなら早くした方がいい」


:まじで? 買ってくる

:これは急がねば


 コメントを聞きながら先に進む二人。廣谷はコメントに対して、作業BGMになりそう。と思った。

 そうして先に進み13階のボス部屋に到着する。まだ一日モンスターリセットが機能しておらず、ボス部屋は静かだった。

 シロはその時すんすんと鼻を鳴らす。


「シロ、どうした?」

「わふ……?」

『何か、匂う……?』


 シロは匂いのする方向に向かって行く。そしてある壁の所で立ち止まる。

 廣谷は何かあるのかと思い、シロから降り壁を触る。ペタペタと触っているとがこんと触れた場所が凹んだ。

 

 ――ゴゴゴゴ。


「……隠し通路」


:わ、わ……

:隠し通路キター!!!!

:絶対なにかありますわこれ


 廣谷はシロに乗り先に進むように指示する。シロは動き出し先に進む。

 暫く先を進んでいると水の音が廣谷の耳に入って来た。更に先に進むと綺麗な湖が現れた。


「綺麗だ……」


:幻想的

:綺麗!!


 シロから降り水に近づき手を入れてみる。冷たい水の感触と共に脳裏に湖の情報が流れてきた。


『回復の湖。触れた箇所の傷が治る』


「……回復の湖だと。休憩スポット的なやつか?」

「わん!」

『水ー!! 綺麗! 入る!』


 シロが尻尾を振りながら湖の中に入る。そしてバシャバシャと水浴びを始める。

 深さはさほどなく、膝が浸かるぐらいの高さだった。


「シロがああだから休憩する」


:はーい

:シロくんかわええ……

:これ拡散してきます


 廣谷はシロの遊んでいる姿を見て、ああしてれば普通の犬に見えるんだが、モンスターなんだよな……と思った。


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