第11話

 小銭を消費しながら銃を撃つ廣谷。小銭はたまに拾いながら二人は一階、また一階と降りていく。

 空中のモンスターに楽に対処が出来るようになり、廣谷はご機嫌な気分になる。


「これ便利だな。カードから自動的に小銭消費されてるみたいだから、いちいち小銭にしなくてすむ」


 しかしどういう構造なんだこれ……と廣谷は銃を見る。一見支給品の銃にそっくりだが所々に緑色が装飾がある。それ以外特に変わった様子はない。

 廣谷はこれを量産させて支給品として置いておけば、配信者がそれを取って先に進んでいるのを見て、部屋にいる時の暇つぶしになるのでは? と思い立った。


「『宣言。銃を100個量産』一先ずこれぐらい……あとは袋」


 袋を作り廣谷は元来た道に戻るように指示する。

 一階、二階、と上に登っていく。そして部屋直通の壁を通り、一階まで移動する。

 廣谷はシロを部屋に置いてから、壁に向かう。そして壁から出てくるのを見られないように気を付け入口まで戻る。

 ダンジョン入口は扉で閉ざされている。廣谷は扉を開け外に出る。

 そして100個の銃が入った袋を支給場まで持っていく。道中周囲の人が廣谷の行動に疑問を思いつつも、声をかけなかった。


「すみません、ダンジョンでの支給品を渡しに来ました」

「――ダンジョンでの支給品?」


 支給場まで来て受付の人に袋を台の上に乗せる。

 ダンジョンから支給品なんて出ないはず……と受付の人は疑問に思いながら出てくる銃を触った。


「――――!! これ、は……どこで……?」

「地下13階ゴーレムのドロップ品。足りなければこちらに連絡してください。では」


 情報を読み取った受付は驚いたように椅子から身を乗り出す。それに周囲の人がなんだなんだと近づいてくる。

 廣谷は嫌な感じを察知し、すぐに離れようとするが受付がそれを引き留めた。


「あ、貴方の名前は!?」

「ひろ。では」


 そう廣谷は言ってから駆け出す。そしてダンジョン内に入り、部屋まで一直線に駆けていく。

 そうしてシロの元に戻ってきた廣谷はうーんと考え込む。


「能力晒さなくて済むようになったから、配信してみるのも手……だな?」

「くぅん……?」

「ん、シロ、付き合ってくれるか? 大丈夫。僕とシロ、二人だけの探索は終わらないから安心しろ」


 廣谷は一人の時間が取れたのと、銃を手に入れた事で能力を明かさずに済む事で、暇になった廣谷は配信に手を出してみようと考え始めた。

 恐らく自分が一番先に進んでいる。だから配信を見ても廣谷が探索した階しか見えない。

 それはつまらなかった。どうやってその能力で戦うのか、次の階はどんなモンスターが出てくるのか、あの時のわくわくした気持ちは廣谷はもう無くし、自分でやった方が早いという結論を出していた。

 

「なら、まず配信道具を作ろう」


 便利な配信道具の方がいいよな。と廣谷は試行錯誤をしながら宣言内容を考え、そして出来たのは、球体に猫耳が生えた宙に浮く配信道具だった。


「か、かわいい……! そ、そうだ、追加機能を……シロ、話してみろ」

「わん?」

『廣谷? 何? 探索行く?』


 シロが鳴くと同時に猫球体から音声が流れだす。それを聞いた廣谷は静かにガッツポーズをした。


「翻訳機……機能してる!!」

「わふ?」

『廣谷? 大丈夫?』

「すっー……大丈夫、ご飯食べてからこの……名前……まる猫くんの試作といこうか」

「わん!」

『うん!』


 シロと意思疎通が出来るようになったのに嬉しさを感じながら、廣谷は食事の準備を始める。その後ろをまる猫が着いてくる。自動追尾を入れていたからだった。


「僕の能力何でも出来る……でも今回は内容考えたな……大変だった」


 そう呟きながら廣谷はリビングに向かって行った。


  

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